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今あえて『リロアンドスティッチ』の感想
私は昔から"スティッチ"のグッズが好きだ。家にぬいぐるみがあるし文房具も使ってる。だけど気付いた。そう言えば映画観たことない。
■あらすじ
ハワイで暮らす5歳のリロと19歳の姉ナニ。両親を亡くした二人は、ぎりぎりの家庭崩壊した生活をおくっていた。リロは”相当”変わった性格で周りと馴染めず、姉ナニはアルバイトもままならない。福祉局からリロを引き取る話が来ていたのにナニが抵抗していたそのころ、二人は犬を飼おうと考える。
犬として紹介されたのは宇宙人スティッチ。暴れん坊のスティッチを家族としたことでよりめちゃくちゃになっていく生活と、福祉局からの催促、さらにスティッチをめぐる宇宙からの介入も始まる。
■感想
いやいやいや!! これ児相案件の話じゃないか!!
今まで自分が「かわいい」で終わらせていたキャラクターの正体にあぜんとした。
家庭崩壊というかそもそも機能不全を起こしている姉妹。姉ナニはまったく悪くないのだが、彼女はまだ19歳で、妹を養える状態にない。かつ彼女自身もまだ子どもの領域にいる状態で、状況が悪くなるとそれを暴力に訴えるしかない(序盤の一連のシーン)。しかし落ち着くとリロを抱きしめ、妹への愛を語る。
リロは周囲のこどもとの不和を起こしていて、感情の制御が出来ない。
夢見がちを超えた、幼児としても制御が難しく問題児。親を事故死で亡くしたことをドライに、しかし受け入れきっていない様子がよくわかる。
……落ち込んだ。福祉局の人、頑張れと思いながらずっと映画観てた。
ナニ、リロの姉妹視点では福祉局の人は姉妹を引き裂き、ナニの語る説得(これから仕事探して頑張る。妹は自分が面倒みる)も聞いてくれないように見えている。でもわかる。福祉局の人、めちゃめちゃいい人じゃん…。
この話は、スティッチという宇宙犬が姉妹の家にやってきてドタバタでめちゃくちゃを巻き起こす…というように描かれつつ、実際のところスティッチなどいなくてもこの家はもうドタバタでめちゃくちゃ(悪い意味で)。この問題にスティッチというマスコットを加えてマイルドにしてるだけだな…と思った。
最後、姉妹は宇宙人が保護人になるという形で姉妹2人+スティッチで生活することを許可される。
これ、逆を言えば「スティッチ、宇宙人」という超常的な外野がいなければ姉妹の問題は解決出来ない、福祉の力がないと立ち行かないということだ。
これらを全部まるっと隠して今のグッズ展開してたのかと思うと驚き、そして感心した。こどもはスティッチのコミカルな動きや往年のミッキー映画のような派手な破壊シーンで笑い、大人はこのストーリーの背景を考えて胸が詰まる思いがする。
なかなかに意欲作だと思う。そして見たあとはずーんと落ち込んだ。2000年頃のディズニーすごいもん作ってたんだな…。