0792.クレバーな頭脳と、クールな視点と、熱いハートに勝るものなし
『農的な生活がおもしろい 年収200万円で豊かにくらす!』という本を読んでいる。古書店で見つけたので、刊行年をみたら2014年だった。もうだいぶ昔の本だね。
わたしは定期的に「少ないモノで暮らす」とか「200万円で暮らす」とかの本を読んでいて、なんかそれって「自分の生活や人生はずいぶん流動的なので、先のことはわからない。だからいろんな暮らしのケースを知っておこう」と考えている気がする。
ちゃんとした学歴を持っている学生が都市部の企業に就職し、都内に家を持って4人家族で暮らす、みたいなモデルの場合って「子どもたち私立に通わせたりするし、旅行もしたいし貯金もしたいし」とか言い始めると、年収一千万超えててもカツカツ、みたいなことは普通に起きる。
そんで、べつにそれで楽しくってハッピーで、特に困らず整合性が取れているなら問題ないんだけど、ムリしてて誰もがしんどいということになったら、その一般化されたロールモデルに従う必要なんてぜんぜんなくって、あっさり方向転換しちゃえばいいんだと思ってる。
会社が倒産したとか、仕事をクビになったとかで自殺する人がいる、という話を台湾人のおじさんにしたところ「なんでそれで死ぬんだ? 会社がダメになったら明日から屋台を引けばいいじゃないか」と言われたというエピソードをどこかで読んだことがあって(ばななさんのエッセイだったかな)、へえ!と感銘を受けた。
いまの日本で屋台を引くのはまったく現実的じゃないけれど、要は「じゃあ別の生き方のモデルを試してみたら?」ということだと思う。
わたしの今の生き方は、親の代からの価値観を引き継いだ「都市型大量消費生活」ベースのロールモデルに過ぎないので、当然他のモデルはいくらでもあって、どれでも好きに選べばいいんじゃないだろうか。都市型大量消費生活ベースって、そんなにコスパがいいわけでもないし。
ただ、わたしは東京生まれで東京育ちで、ここが故郷であって、とにかく落ち着くというその一点のみで、ここにいる。ただそれだけだしね。
この本は、著者の牧田さんが関わった、田舎へ移住しながら、都市と農山村の交流を進めながら、市場社会できちんと生活を成り立たせていくというプロジェクトの実践が書かれているのだけど、プロジェクトに参加した若者たちがみんな年収200万でそのプロジェクトの2年半を過ごしていたにも関わらず、2年半後のPJ終了後はほぼ全員が300万円貯金できていた、という話も興味深かった。
過剰な消費をしない生活だから、GDPには貢献しないのだろうけれど、それでも十分に「豊かさ」を体験している感じがよくわかる。
という、内容のおもしろさもさることながら、著者の牧田さんのスタンスの自然さ、主観とデータのバランスの良さ、ふとした物言いの気持ちの良さ、みたいなものが全体的に良かったです。
面白かった箇所は、このあたりかな。
ってなんかいいよね。カッケー。
東京大学大学院教育学研究科の教授のクレバーな頭脳と、クールな視点と、熱いハートに勝るものなしって感じ。
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