星と月の散歩道~月光百貨店に至る夏の宵
星の噂に聞いたのだ。
七月の終わりにASHIYAにて
星の欠片や月の光を蒸留して
作られた幻想マテリアルを
手品のごとくならべて
夜店のごとく商う催しが
密かに行われるらしいと。
しかもそれは稲垣足穂のオマージュ展、
『一千一秒奇譚』と銘打たれている。
秘密の会場『月光百貨店』は、線路沿いにある小さな石の階段を六つ上がると現れる。
星の収集に余念の無い店主は、まだ年若いにも関わらず、精度の高い純正の星ばかりをどこからどうやってか、集めてくるのだ。
スライドフィルムには土星が周り、スノードームには星が降り。
水晶やガラスもまた、すっかり星になる魔法をかけられているよう。
これだけのコレクションは、なかなか見られるものでは無い。
うーむ、これは一体・・・
感心しながらふと、私は机の上の小冊子に気がついた。
『コメット坂奇譚』
タイトルのついたその本は、店主・星野時環氏の手になるものであった。
ここ『月光百貨店』からほど近い、並木通りのコメット坂には、どうやら星が出没するらしい。
ASHIYAが星の産地だったとは、知らなかった。しかも生きのいい、純度の高いものばかりだ。
時には坂を滑り降りてくる流星タクシーに、
まん丸のお月様が乗っていたりするのだとか。
『コメット坂奇譚』には、そんな夜の不思議な現象がいくつも綴られていた。
そうして、やはり星の扱いには腕に覚えのある職人たちの、星の消息を書き留めた記録や絵画、オブジェなどが百貨店内に集められていたのだった。
表に出るとまだ夜には早い夕暮れ。
コメット坂を探して並木通りを歩く。
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『一千一秒奇譚』稲垣足穂オマージュ展2024
7.21(日)~8.4(日) 7/29.8/1休廊
Open 14:00~20:00 最終日18時迄
<出展作家>
erico 川島朗 戸田勝久 中川ユウヰチ
中野奈々恵 福本タダシ 星野時環
百瀬靖子 山本佳世 よこやまぺん よりそう
於・芦屋 月光百貨店
兵庫県芦屋市茶屋之町12-2