家庭内の囚人・看守と、人工子宮
「主婦になるとは、自信をなくしていく過程」と書いてらしたのは、確か「家庭内離婚」という現象を’80年代に紹介して注目された著者さんでしたか。
私も自信を失くしてきました。結婚当初はごく普通だったのに。娘を1歳半まで育ててから再就職した頃には、今より遥かに自信に溢れ、自己肯定感高めの跳ねっ返りでした。それが最近では「自己肯定感が低い」との暗〜い投稿も……↓。
短い専業主婦時代には、夫のモラハラ行動で離婚を考えるも、「私に収入がないせい」と自責していました。事実、再就職後しばらくは、夫は家事も結構やってくれたし、モラハラは影を潜めたかのようでした。
それが、なんでこんなことになっちゃったの?
考えたら、結局は夫婦の力関係。夫は海外出張が多く、私はワンオペ育児と職責の二重プレッシャーで発狂寸前。で、大好きなエンタメの仕事を一時退職。以後は一貫して、夫のキャリアを優先するワークスタイルになったからです。
今になってよくよく分析してみたら、私が大きな音楽プロジェクトを企画するようになるのに反比例して、夫は家事をやらなくなりました。俗に言われるモラハラ夫語録、「家事に支障がない範囲内でなら働いてもいい」の類でしょう。
「うちの夫に限って」ですか? 私だってそう思ったからこそ、今まで何十年も気づかなかったのです。でもこれは、夫が悪いというより、男性というものの性だと思っています。子を産めない男性は、「女性より優っていなくては」と無意識に思うものなんだろうと……。
ま、そんな男女の優劣は、幻想なんですけどね。あと5年くらいで「Artificial Womb(人工子宮)」なるものが実用化されそうって情報を、こちら↓で聞きましたし……。
話を戻すとつまり、家庭のために自分の存在意義を貶めてしまいました。それが、甘やかされた末っ子である夫のオレ様気質を助長したのです。
アメリカで物議をかもした”囚人と看守の心理実験”、そのものですね。看守の役割を振られれば、誰しも高圧的・暴力的になるという、あれです。
そこで自分を通せば、子育ては今ほど上手くいってなかったでしょう(親子の履歴↓)。
囚人的な立場に甘んじ、激務の仕事をペースダウンした時期のおかげで、娘にいくらかを提供できました。譲った私が偉い母なのではありません。私には育児を成功させたい欲があり、それに従っただけでは?と振り返るのです。
なぜなら、私は望んで子を持ったのではなく、周りの期待に抗えずに妥協したから。望んだ子であれば、育てること自体に無条件の喜びを見いだせるでしょう。私とて、心底可愛く思いながら育てたのは事実。ですが、「仕事を犠牲にしてまで産んだからには、結果を出さないと」と、心のどこかで思っていたかもしれません。
自分が親から諸々強制されて嫌だったので、娘には何も望まず、自分のことはぜんぶ自分で決めてもらいました。なのに娘が言うには「無言の圧力があった」と……。
そうと知り、娘には申し訳ない気持ちでいっぱいです。しかも、自分が最優先したかったはずの音楽にも、忠誠を尽くすことができませんでした。
これをお読みのあなたが今、どういうライフステージかはわかりません。けど、迷った末に子どもを持つ選択には、こんなリスクもあり得ることを知っていただけたら……。
そして願わくば、キャリアのスローダウンはやむなしとしても、ご自身の尊厳まで削り、心を殺すことがないよう……。
経験がある方はご存知のように、「自信が持てない」とは実にアホらしいことです。美味しそうに湯気をたてるご馳走を作ったのに、食べることができないような?
娘の子育て中に比べたら、欲しかったものをいくつか手に入れることはできました。なのに、喜びも満足も味わうことはできず……。
自分の感覚を長年無視していたのだから、麻痺するのは当然かもしれません。
味も匂いも感じられない精神疾患がありますよね(コロナではなく) 。私の友人Mちゃんも、かかったことがあります。Mちゃんは料理好きなので、目分量で味付けした後に「塩加減がわからないから、味見してくれない?」と言いました。ちょうどそれみたいなものなんでしょう。
子を持つ選択について考えるあなたや、子育てに夢中なあなたへ。夫婦・恋人関係にも合わせて注意を向ければ、思わぬ牢獄に迷い込むのを防げるかもしれません!