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甘い結婚忍法・モラハラ幻術
物語の魅力は、キャラに裏の顔があればこそ。普段は新聞社社員の “スーパーマン” 始め、双子の姉妹に入れ替わって結婚する設定は数限りなく、洋の東西を問いません。
裏の顔の隠れ蓑がお菓子屋さんだったのが、服部半蔵。戦国時代から江戸時代にかけて活躍した忍者の中の有名人です。その末裔は、今も徳川家光の時代から続く和菓子店を営んでいらっしゃいます。
ニューヨークでもアルコールが禁止だった時代、バーには隠れ蓑が。その名残りのSpeakeasyは、今もそこここで楽しめます。(店舗の奥に秘密の入り口があったり、合言葉があったり↓)
忍者は敵の本拠地に侵入し、情報を集め、あるいは破壊します。また忍者は、変装して正体を隠し、嘘の情報を流して敵を混乱させたりもします。
忍者といえば、手裏剣?木の葉隠れ?分身の術? 「忍法」という特殊能力は、フィクションでは魔法に近い超能力的な描写で描かれます。
アメリカでは、Ninjaは硬派なオーブンやジューサーなどのキッチン用品メーカー。家事の魔法だからでしょうか。老舗ドラマ「奥様は魔女」を連想しますね。
日本にはこんなテレビドラマも。敵対する流派=伊賀と甲賀の末裔が、相手の正体を知らないまま結婚してしまったとは……。まるでロミオとジュリエットのようです。
相手の正体って、結婚前にかなり付き合っていてさえ、わからないもの。「見抜けなかったの?」と言われても……見抜けてたら結婚なんかしません、て!
幼馴染でも、結婚直後に豹変するこんなケースもあるそう。↓
かくいう私も、夫と知り合ってから5年ほど友だちづきあいをしていましたが、モラハラ気質とは夢にも思いませんでした。
こればかりは、万一に備えてアメリカのように結婚前に契約書を交わしておくぐらいしか、予防手段はなさそう。ですが、私を含め「まさか(こんなことが……!)」という人が多いわけだから、それも難しいかもしれません。
問題は、DVや酷いモラハラなら即離婚だけど、そこまでなのか迷う場合。子どもがいたり共有財産があれば、判断は更に困難。愛し合った恋人同士だったなら、別れたくない気持ちが大きいでしょう。
私の場合はもう、夫の隠れ蓑が剥がれたし、こちらも忍者で通しちゃえば?という作戦。忍者の本当の役割は、戦闘を軽減し、戦争を未然に防ぐことだと言われています。
専門家によれば、「モラハラをし返す(威厳を示す)」は逆効果で、「悪化させるリスク」があるそうです↓。なので、サムライではなく忍者。
私も「悪化のリスク」には思い当たります。「威厳で対抗」で失敗したので……。
威厳を培ったニューヨークで気づいたのは、日本人って男女の仲に限らず、自分の意見をスラっと言う訓練で育ってなくて、慣れてないこと。
通っていた語学学校のクラスにはヨーロッパ系の生徒が多く、競って意見を言うのでうるさいぐらい。私は英語以前に「自分の意見が何なのか」がわからなくて……。みんなの達者な英語に呆然とするばかりでした。
それでも、先生が「日本ではどうなの?」と振ってくると、さっきまでの私はどこへやら。もし「自殺について」がトピックだったら、鉄道自殺が多くてしょっちゅう電車が止まる話とかで、みんなを驚かせるのが定番でした。
そうです、自分の意見でなければ、しゃべれてしまうのです。そんな環境では、友人と出かけると「今日はどこに行って何がしたい?」と聞かれます。日本人同士のお出かけだと、まずは相手の空気を探りながら、お互いの意向をすり合わせていく感じではないでしょうか。
なので、急に聞かれたって、答えられないんですよ。考えがないから。
ところが2年ぐらいしたら、あらかじめ考えておくので即答できるようになりました。考えてなかった場合も、パッと浮かんだやりたいことを、そのまま口に出すように……。
そうなって一時帰国すると、夫に「こうしたい」とか「それは違う」とか、ストレートに言うように変わりました。
娘は既に就職して不在なことが多かったので、娘の前では控えていた言い争いは、火蓋が切られた状態。以前は怒鳴られるのがイヤで、雲行きが怪しくなると黙っていました。それがアメリカ仕込みの威厳で動じなくなったため、派手な怒鳴り合いもしばしば。
こうなると夫も譲らず、エスカレートするばかりでした。専門家さんのおっしゃる通り。
それで忍者のように、「敵の本拠地に侵入し、情報を集め、あるいは破壊」の作戦に変更しました。相手の行動様式や状況を読んで、出てくるであろう言動を封じる先手を打つのです。忍術で言えば暗殺系の「術封じ」?
以前は、こういう作戦は夫の人格を軽んじるものと感じて、避けていました。けれど、モラハラは相手の人格を軽んじることですから、そんな夫の態度に倣うのが得策。
怒鳴り返すほうがよほど夫にダメージがあるでしょう。感情のままに、傷つけるようなことも言ってしまったかもしれないし。
この作戦の利点は、相手の行動様式の否定をやめること。先回りの対峙法を編み出すには、相手目線になりきることが必要ですからね。
忍者は、普段は農民や町人など、普通の人として暮らしながら、来るべきときに備えて、忍術の修行をしていたそう。このあたりは、なんだか最近のSNS投稿の傾向に当てはまります。
離婚に向けてダイエットやスキルアップに励む妻とか、離婚を機におしゃれ部屋を目指したり、フリーランスの道を探す元夫とか。
思うに結婚の本質は、忍者の定義(上記太字 敵の本拠地に侵入〜)にかなり近いもの。「素の自分は墓場まで持っていけ」の「綺麗売り」の場合は、「変装して正体を隠し、嘘の情報を流して」ですし。
いや、綺麗売りでない私ですら、今ではやっているかな。
ところで、忍者がなぜ消えていったか、ご存知でしょうか? それは時代が安定した、こういう経緯だそうです。
4代将軍徳川家綱(いえつな)の時代に入ると、幕藩体制も安定期に入り、文治的風潮が強まるとともに、幕初のように隠密(おんみつ)を各地に潜行させて外様(とざま)諸藩の動向を監視する必要もほとんどなくなり……(中略)
このため廃絶の危機に直面した忍者集団の内部から、かつて忍びの上手たちが用いた秘密の忍技や忍器などを集録するとともに、先行諸武術と同じような体系化と理論づけを行い、近世的武芸としての忍術の地位を明らかにしようとする機運が強まった。
近ごろ結婚についてのSNS発信が活発なのは、上記の末期忍者の「集録で地位の明確化」の機運に通じます。
もしかして、結婚も「廃絶」の運命なのかも……!
そんな中、当面は結婚の形を残している私の忍者修行は、服部半蔵のように甘味処な隠れ蓑の陰で。ターゲットの夫と甘すぎないカクテルの試作案を出し合ったり、買ってきたスイーツを分け合ったりしながら。(夫も隠れ蓑をかぶり直しているかもしれませんが……)
ちなみにこちらの和三盆の服部製糖所さん↓も、冒頭の和菓子屋さんと取引をされている上に、古文書から係累関係も確認。服部半蔵の末裔だそうです。
やはり結婚という敵の本拠地侵入の物語には、裏の顔と甘い幻術がなくては!?
(服部半蔵の分身の術・タネ明かし↓)