2021年 10大ピアノ・アルバム NY流
一年の最後ぐらいは、作曲ピアニストっぽいことを書いてみようか、と……。
私はアメリカ・ベースで活動しているので、日本のクラシック事情とは少々異なる、グローバル寄りなチョイスになっているかも。
ジュリアードやイギリスRoyal Academy of Musicなどの超名門出身者たちが、普通にポスト/ネオ・クラシカルに邁進。純クラシックは押されぎみなマーケットです。
深い精神世界を表現したオリジナル作品が大半で、ブルー寄りにはなりますが……。相変わらずのミニマル主流ゆえ、瞑想やリラックスにもピッタリ。
では、 “勝手にランキング”行ってみましょう。
ストリーミングはプレイ・ボタンまたは曲目タップで、1曲30秒づつ試聴可。3位以上は動画もあり。
10位: Rosey Chan “Sonic Apothecary”
いい意味で「テキトーに作ってテキトーに弾いてる感」が心地よい、ピアノソロ・アルバム。これでれっきとしたRoyal Academy of Music 卒業生です(失礼!)。
とくにトラック2は、夏前にピアノ系プレイリストを席巻していたモテ曲。耳馴染みある方もあるかもしれませんね。
9位: Vetle Naero “Introspection”
弱冠21歳のオスロ生まれ、Vetleくん。なんとポスト・クラシカルの先駆者ニルス・フラームさまを聴いて育ったそう。
私がまごまごしているうちに、既に第2世代が台頭……!
トラック3のストリング・アレンジを聴いて、「私もちゃんとやらなきゃ!」とTina Guoさま↓のチェロvst(音源)を買いました。
8位: ヤン・ティルセン ”Kerber”
フランス映画「アメリ」のサウンド・トラックでお馴染みの作曲ピアニスト。
現在はイタリアの孤島に住み、人里離れた環境から生まれる音を大切にしているそうです。なるほど、非現実のパルスが味わえる音づくり。
7位: Milana Zilnik “Anno”
懐かしいオルゴールを聴いているような”無重力タッチ”のピアノは、今年そこここで耳にした方も多いはず。新進・大興隆のピアノ・レーベル Silent Beat Recordsから。
「キレイなメロディづくり中毒」と言うアーティストだけあり、陰陽どの曲にも抗えない媚薬が。
トラック2や3の日本チックなお琴ふうアプローチにぶっ飛び、音楽辞めたくなりました……。
6位: ヴィキングル・オラフソン”Mozart & Contemporaries”
純クラシック・ファンにも評価が高い彼は、アイスランド出身、ニューヨークのジュリアード卒。
なんでも弾けて、なんでも自分流にしてしまう魔術師です。骨董品のモーツァルトをも、「あ、ミニマルだったのね」と納得の最旬サウンドに変換。
最近、最愛のスタッフ女性とご結婚されたとかで、また一人、夢の男性が消えました。
5位: ルネ・フレミング/ヤニック・ネゼ・セガン “Voice of Nature: Anthropocene “
子どもの頃、父が連日聴いていたオペラに辟易し、声楽アレルギーに……。そんな私すら虜にしたソプラノ・アルバム。
ピアノを担当するのは、フィラデルフィア・フィルの常任指揮者で、10月のカーネギー・ホール再開コンサートでもタクトを任されたヤニックさま(冒頭写真)。
リスト、フォーレ 、レナルド・アーン(ベネズエラ生まれフランスで活躍の現代作曲家)……。不思議な選曲コーデで、アンビエントな時空へと誘われます。
4位: Poppy Ackroyd “Pause”
エンヤを擁するエスニック・レーベル Little Independent のアーティスト。
退廃的かつフェミニンな煌めきのピアノが、究極のミニマル美を支えます。
トラック8を聴いて、アルバム・タイトル通り、衝撃のあまり思考がPause(停止)しました! 8以外にも何曲もが著名プレイリスト入りしていた話題のアルバム。
3位: ハニヤ・ラニ “Inner Symphonies”
とにかく絵になる、ポーランド出身アーティスト。実験的な音作りは天衣無縫です。タイトル(内面のシンフォニー)もオシャレ。
↑はソロピアノ・セッション。(英語のトークもあり)
コラボも幅広くされてるようで、今年リリース↓は同郷のチェロ奏者Dobrawaさんとのデュオ・アルバム。
トラック3は、チェロが奏でる近未来が出色。私も人間のチェロ奏者とコラボしたいです。(Guoさま音源もいいけど……)
2位: Lucas Forch “Beginnings”
独自の世界観にどハマりしたアルバム。トレンディな仕掛けはありながらも、ごくシンプルなソロピアノ集です。
……と見せておいて、5拍子の曲があったり。安心の中にもドキドキが。
私もNaoko (トラック1)になりたい……。
1位: Clemens Christian Poetzsch “The Soul of Things”
露出頻度からして、文句なく今年のトップ・アルバムでは? 人気曲トラック9↓などは別バージョンも続けて出ていたようです(柳の下?)。
どの曲も、あり得ないメロディ展開や転調の連続で、しかもさりげない……。
バッハもモーツァルトも、あの世で驚いていることでしょう。
番外編: ティグラン・ハマシアン “For Gyumri”
今年紹介されていて知ったのですが、2018年の作品なので番外編に。
トレンド推移の激しい中、数年後も色褪せないどころか、まるで時代を予見していたかのような存在感。
アルメニア出身で、セロニアス・モンクのジャズ・コンペティション1位の若手ピアニストです。異次元のメロディが、繊細なアレンジと抜け感ある演奏で生かされています。
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まとめ: 2020年代本番へ、音楽の帆が全開!
以上、10に絞るのも困難な豊作年の振り返り、いかがでしたでしょう。2010年代クラシックとは明らかに違う、新たな胎動が感じられるのでは?
え?あんなに推してたブルース・リウくんが入ってない? まぁあれは、コンクールのライブ・アルバムなので、今回は除外ということで……。
普段着の笑顔が覗く日本でのひとコマ↓
いやもう、画期的なアルバムに出会ってばかりで……「えっ?ウソっ!ヤバいっ!どうしようっ?!」と焦りまくりの一年でした。
お楽しみいただけてたら嬉しいです。どうぞよいお年を!