「何者かになりたい」と言った人たちは、何になったのか
「やりたいことがわからない」は、いつの時代にも人々の悩み。子どもを育て上げつつミーハーなお仕事をしてきた私でも、未だにそうです。
コロナ前の2017-8年ごろまで、「何者かになりたい」はよく聞く言葉でした。
「何者かになるには行動や努力が大事」かと思いきや、そうでもないのがコロナ後。だって、働かずにコンビニ製の深夜飯を食べたり、家でインスタントラーメンのアレンジばかりしてる人たちがブレイクしています。(私も大好き!)
リアルでも事情は同じ。10年前、ニューヨークに移ったころに通っていた語学学校で、ある30代の女子が言いました。
「何者にもなれなくて」。
学校にはグランドピアノがあり、ある時期に毎夕、めちゃくちゃ上手い誰かが弾きだしました。「何者?」と見にいったら新入のその女子、日本人のY子さんでした。
彼女は早稲田大学を出て、大企業にお勤めしながらやりたいことを探したそう。でも見つからずに、ニューヨークに来たとのことです。
NYで獣医の資格を取ることなどを検討していましたが、なかなか難しいよう。Y子さんのように頭が良く努力家で、海外に出る行動力もある人ですら、何者かになるのが容易でないとは……。
このあたりを総合して、「何者かになりたかった人たちは、今ではSNSで人気アカウントなんかをやっているのでは……」と推測する次第です。
「インターネット時代は人々を幸せにしたのか」とはよく問われてきましたが……。
こうも経済的・知名度的に成功する人々が出てきたからには、分断は歴然。もはや「誰でも発信できる」は恩恵どころか、ネット・カーストに加担しているだけにも見えます。
私のような「その他大勢」のネット平民にとっては、劣等感を上塗りされるばかりになりかねません。
だけど、ちょっと待って!
同じ才能で同じ努力をしても、難関校に行く人と行かない人があります。例えば、私の中高クラスメイトの港区女子たちは、とびきり賢いし、勉強家。
ほとんどはエスカレーター推薦で、偏差値は並みの系列大学に行きました。けれどみんな良縁やお仕事に恵まれて、幸せそう。
ネット・ブレイクも、同じじゃないかと思うんですよね。たまたま時代を読む目や動画編集能力のある人
たちが、有意義なお仕事を続けてきた人たちよりも注目されたりします。
努力の方向とかタイミングもあるでしょうが……。結局は、目に見える結果を測る指標(偏差値とか収入とかフォロワー数とか)はどれも、多くの中のたったひとつの指標。
学歴も、ネット・ブレイクも、「ひとつの指標に過ぎない」という意味では同じではないでしょうか。
そんな中、ネット・ブレイクの人たちに感心するのは、「自分の強みを生かして楽しんでいる」ということ。「プロレベルに達しているかどうか」なんて、これまたひとつの指標に過ぎません。
ブルーオーシャンの頃には、未婚のアラサーOLさんが顔出しなしの本音発言で人気に。競争過多の今は、「美人シンママ」+「有名企業に転職」+「子どもを難関中学に入れた」とか、「独身イケメン」+「元プロスポーツ選手」+「料理上手」など、3つぐらいの売りがあった方がいいみたいです。
逆に、みんなが悩みがちな「モテない」「片づけられない」「モラハラ夫持ち」などをナチュラルに開示して、共感を集める方たちもいたり。
欠点も悩みもなさそうな未婚OLさんにしろ、高齢未婚をさりげなく売りにしています。先見の明があって、マーケット開拓をした点で、ハイスタンダードな後続よりもある意味「只者ではない」でしょう。
今後の人気の動向が、ワクワク気になります。
SNS全盛の前には、ブログ発信が人気を集めて「ウェブ有名人」みたいになった方がチラホラ出ていましたね。アメリカ経験組では、はてなブログのちきりんさんとか、アメーバブログのエリカさんとか。
比べてSNS時代の今は、ジャンルは何でもあり。ブレイクの敷居がぐっと低くなった感はあります。文章構成が上手いか、ビジュアル編集が上手いかの、適性次第?
アメリカで一般的なのは、文章+ビジュアルのダブル作戦。フォロワー数が多いホストのトークショーでは、毎週そんな旬の方たちのインタビューが展開↓。
気どらないヴィーガン料理動画でTikTok・インスタフォロワー各々400万人越えのタビサ・ブラウンさんは、エッセイの著書も多数ベストセラー。子ども向けYouTube番組でエミー賞も受賞。SNS出身のスターと言えそうです。
タビサさんの新刊↓は、「30日間、毎日違うことにチャレンジしたら自由な人生に変わった」。ヴィーガン・チャレンジももちろん入っています。読んでみたら、言葉使いがいかにも「ブラックのお姉さん」だった!
何ごとも、偉い先生の講義より身近な人による実演が役立つことは多いもの。人気アカウントの美味しそうな料理動画を見れば、「どんな味?」とモチベーションをかきたてられますよね。
作ってみるとリピしたいほどのレシピは稀だけど、「なんちゃって料理」「ズボラ時短料理」ならSNSに軍配。コレほんとにマックの味になります!
レシピ本を出版するには、2万3万のフォロワー数が要るそう。好みのアカウントをフォローして応援するのも、ネット平民ならではの楽しみです。
月並みだけど、何者かになるかならないかよりも、自分らしく楽しんで輝くほうが大切なのでは……。
だいたい、誰が言い出したのか「何者かになりたい」とは、コンセプトが絶妙。だって、「何者か」で良いんだから、もうなってるじゃないですか? 自分自身に!
ここまでお読みくださった慧眼なあなたって、何者?!