見出し画像

営業とカスタマーサクセス

 カスタマーサクセスとは顧客が製品やサービスを最大限活用できるようにサポートし「顧客の成功を重視するマーケティング概念」を指します。カスタマーサクセスの働きによりリテンション(継続利用率)を高めLTV(顧客生涯価値)を向上させることを目指します。1980年代にドン・ペパーズとマーサ・ロジャースが提唱したワントゥワンマーケティングの実践そのものと感じます。
 カスタマーサクセスの主な業務内容は製品やサービスの導入支援・利用状況の把握・ニーズに応じたサポート提供・課題解決の支援・アップセルやクロスセルの提案などです。これらの業務を通じて顧客との良好な関係性を構築し顧客満足度や継続利用率を向上させることが求められます。
 カスタマーサクセスのKPI(重要業績評価指標)にはLTV(顧客生涯価値)・リテンション(継続利用率)・チャーンレート(解約率)・アップセル・クロスセル率などが挙げられます。これらのKPIを達成することで顧客の成功体験を最大化し企業の収益向上に寄与することが期待されます。
 カスタマーサクセスが注目される背景にはサブスクリプション型ビジネスの普及や顧客満足度とリテンションの重要性、インサイドセールスとの関係があります。サブスクリプション型ビジネスは顧客が継続的にサービスを利用することで長期的な関係を築くことが重要となっておりカスタマーサクセスの役割がますます注目されています。
 顧客満足度やリテンション率の向上は企業の継続的な成長や収益の安定化に役立ちます。カスタマーサクセスは顧客が自社製品やサービスを十分に活用し満足度を向上させることを目指すためその重要性が高まっています。インサイドセールスは主に電話やオンラインでの商談を行う営業スタイルでカスタマーサクセスとの連携が重要となっています。
 気になるのは営業との役割分担です。営業は新規顧客の開拓や既存顧客とのリレーションシップ維持に注力し契約締結を目指します。見込み顧客のニーズを把握し自社製品やサービスがそのニーズを満たす方法を提案することが重要です。カスタマーサクセスは主に既存顧客のサポートを担当し製品やサービスの導入から継続利用、アップセルやクロスセルの支援まで幅広く対応します。KPIを見ても営業の担当領域を重なるところが多いです。組織を別に分けるのは本当に良いのでしょうか。
 カスタマーサクセスが既存顧客への対応、営業は新規顧客獲得と役割分担は分けたほうが良いと思います。連携しあうところが大きい既存顧客への対応は売上も含めて両者が目指さなければならないところでもあります。カスタマーサクセスと営業は連携するところが多いので同じ組織内で、したがってマネジメントは同一人物が行うのが良いと感じます。
 香川県の小型製麺機械メーカーは麺学校を開いています。数千種類のレシピがあり、数値化したレシピのため再現性が高いのが特徴です。ここに外国人が殺到しています。母国で麺料理を提供するために様々な国から学びに来ます。単に麵料理のレシピを学ぶだけではなく経営術も学べます。出店場所の決め方・価格設定の仕方などを学びます。ひとり45万円という授業料なので学ぶほうは真剣です。この会社は売上高の約5割は海外向けで占めており70か国に小型製麺機械を売っています。
 この会社の行っている麺学校はカスタマーサクセスの事例です。しかし、アフターサービスではなく、新規顧客発掘につながるものです。本来、営業が担当する領域ですが、営業はここには関与していません。受注後、手薄になりがちなアフターサービスや既存顧客フォローの仕組みを構築し、既存顧客からの収益を拡大させることは新規顧客獲得以上に重要になってきています。日本企業は持続的な収益を伸ばす仕組みを会社全体で考えなおす時にあります。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?