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恋と声とタマゴサンド【短編小説】扉⑩
キーワードでつないでいく連載短編小説。
小説と小説をつなぐのは何かのキーワードと人物です。
10話目のキーワードは、相談、好きな人、タマゴサンドです。
基本1記事読み切りで、次の主人公にバトンを渡していきます。
お楽しみください。
となりの扉⑩
「気持ち打ち砕いちゃったんじゃないの?」
この子は、なぜ私に恋愛相談を持ちかけてるんだろう?
そう思いながらも、真面目に返事を返す。
私が真面目にお皿を洗い、仕事をこなしている間に、
今、目の前にいる一回り以上年下の同僚 浩介くんは、
仕事場の喫茶店で、たまに見かける可愛いお客さんの女の子 楓ちゃんをナンパしてきた報告をしている。
いや、ナンパし損ねた報告かな?
「彼女が僕の目を見ながら、話してくるなと思ったんですよ。それが、めちゃくちゃ可愛くて。でも、もしかして彼氏いるのかな?って思って冷静な反応しちゃったら、
目を伏せられて…嫌われちゃったかもしれません!!!」
と、報告してくれた。
事細かく詳細に語ってくれたのだが…
本音は、それがなんだ!!!
そもそも、40歳という大台も回ろうかとしている私に聞くことかな?
心の中でため息をついた。
卑屈になっているわけではない。
だが、現実40歳も過ぎてくると、
自分も周りも、浮いた話は少なくなってくる。
ないとは言わないし、
自分も気持ち的には枯れてはいけないとは思っているけど、
最近では、どのポジションをとったらいいのか、悩んでる。
誰にも興味ない方が正しいのか、そんなのは人にモテない女のすることなのか。
接客業をしているだけあって、出会いの数は多い。それが仕事中にアリなのかは、わからないけど。
話が合う人も、気があう人もいないではない。
でも、人として求められてるのかな?と考えたら、たまに会う楽しい人いたい自分もいる。
微妙なお年頃なんだけどな、けど純粋に真剣に相談してくる浩介をほってもおけない。
で、最初のセリフである。
「気持ち打ち砕いちゃったんじゃないの?」
ちょっと呆れ気味に、浩介の目を見ながら、そう告げた。
「打ち砕かれたのは、僕なんですけど」
純粋過ぎて、ちょっと嫌になる。
お互いに気を使って、お互いに引き気味になってるだけのことで…
そっか、自分のことは好きになってくれないのか、なんて可愛い思考で。
「可愛い子が必ずモテるわけでもなく、可愛い子が必ずしも恋愛経験豊富なわけでもないと思うよ。
モテはね、同性からは嫌われるから」
浩介の目をみて、はっきりと思いを伝えた。
「相手の気持ちを知りたいなら、相手に聞いてみるしかないんじゃないの?
一歩ひいてないで、仲良くなれそうなら一歩前に、どちからが動かなきゃ、永遠に前には進まないと思うけど?」
本当そうだ。
自分に向けて、戒める。
最近は、そんなことが多い。
なんとなく一歩前に行けない。
目の前にいる浩介の相談も、なぜこれほどまでに真面目に答えてしまったのか、
いつもの私らしくない。
いや、
私らしいもわからなくなっている。
結婚して、子供ができて、
そして、離婚した。シングルマザー。
そんな子供も大学生になった。
娘の純香は、舞台に立ってみたいのと楽しそうに話している。
子供の頃は応援できた夢も、
大学生になると心配の種だ。
いまだ本人が思うほどには成功していない。最近はその話もしなくなってしまった。
わかっている。
めんどくさいのだ。
子供にたいしても、
恋愛にたいしても、
どんなことでも少し引き気味なっていると
自分で感じている。
ありもしない普通になりたがってる。
人生に波風がたって欲しくないから、とにかく普通でいたいのだ。
いつも窓際に座る常連さんがやってきた。
客席数もそこまで多くなく、奥行きもない店舗はよくも悪くもアットホームな場所だ。
店長が憩いの場を作りたくて作ったというだけあって、
近所の人をはじめ、通りがかりの学生までも吸い込んでいく。
「ちょっとお久しぶりじゃないですか?」
自分とそう変わらない年頃あろう男性に、声をかける。
あまり深くは話し込まないので、
よくは知らないが
こざっぱりとした身なりと、
落ち着いた声が好感を与える。
「タマゴサンド食べたくなっちゃって」
笑いながら、そう話す男性に明るく返す。
「あと、ホットで?」
「お願いします」
声が好みだと好きになるなんていうけど、そんな単純なものでもない。
いい声ではあるけど。
🔚
sub title 早苗のふつうの日常
前作↓
なんだか長くなってしまいました。
あと、サイドストーリー同士をくっつけてるので、キーワードが散らばってきましたね。
ちょっと無理くりになってきましたが、先を含めてつながってます、一応。
↓楓ちゃんのお話
この書いたり、考えてる時間が頭の体操になるし、主人公がいろんな視点を私の代わりに語ってくれるので面白いなと思います。
たまに、自分でストーリー物を書いてみるといいよ、とオススメすることがあるのですが、まぁまぁ否定されますね。
自分のために書くのを、まず目標にしちゃうと、楽しいのになと思います。
何よりお金がかかりません。
趣味としては、すごく優秀。
広く皆様にオススメです。
続き↓