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ねこに呼ばれて


お散歩をしていた。

毎日だいたい同じコース、同じような時間に歩いている。
もう少しで家かな?という川沿いを歩いていた時、ふいに呼び止められた。


「ねこが鳴いてる」
くるくると見渡すと、車通りを通り越した反対側にねこがいた。

「にゃーん」
明らかに呼んでいる。

迷子かもしれないし、ケガかもしれないし、興味心から行く予定のない反対車線に行ってみた。

「にゃーん」
寄ってくるねこ。

だが、一定ラインから近づかないねこ。
散歩途中にねこのご飯など持ち歩いているわけもなく、何も持っていないことをお伝えする。

「にゃーん」
ごろんとお腹を見せて、歩道に転がるねこ。
横をびゅんびゅん走り抜ける車たち。

あまりの奇妙な光景にその場にしゃがみ込んだ。
「あまりに無防備すぎないですか?」
答えるはずのないねこに呼びかける。

起きる気もなく、にゃーんと鳴きながら、ごろごろと転がる。

しばらくして、ねこはピンと後ろ足を天に向けた。

毛繕いである。
道の真ん中で毛繕い。

よくはわからないが、これが彼の日常なのだろう。
たまたま私がその時にいなかっただけで。

振り返ると、ねこはまだ足をあげて毛繕いをしていた。

夏の夕暮れの奇妙な時間だった。



聞けるなら聞いてみたい。

で、君はなぜ私に反対車線から声をかけたのかね?

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