「フランバーズ屋敷の人びと」全巻読了
前回の投稿から、あらすじその他を再掲
20世紀初頭のイギリス。主人公は両親を失った少女・クリスチナ。
21歳になると父の財産を相続することが約束されていて、財産目当ての、暴力的な叔父が住むフランバーズ屋敷に使用人として住み込むところから物語が始まる。
屋敷には、狩猟が大好きな粗暴イケメンな長男マークと、頭脳派・飛行機オタクな次男ウィル、馬の扱いがプロい心優しき使用人ディック。
この3人との恋模様を描くお話。
1巻途中でかなり面白くなってきて、パラパラと最後までザッピングして思うのは、大人向けな宮崎映画みたいだなぁと。
で、レビュー見たら、駿監督がやはり影響受けているらしい。
で、以下はネタバレ有りなので、見たくない人は回れ右を。
・1巻→長男マークと意識し合うが、使用人ディックとも仲良くなる、でもディックとは離れ離れに。同時期に親しくなった次男ウィルと駆け落ち
・2巻→ウィルとの生活、やがて戦争へ。飛行機の描写が詳しい。宮崎監督が影響受けたのは2巻とのことで、納得。
・3巻→ウィルが戦死、ディックと再会し、愛を誓い合う
・4巻→使用人から家主へと立場が変わったことで苦悩するディック、そこへ戦地からマークが帰って来て主人公を振り回し、結婚生活がピンチ!
・5巻→努力の甲斐なく、互いに歩み寄れない主人公とディック、マークも別の女性と結婚しているが、それぞれ別れへと繋がる二つのカップル。結局ラストは、、
…みたいな各巻でした。
4〜5巻が辛い展開なので、5巻はなんかもう、要所要所でいいやと、珍しく、ちゃんと読まずに読み終えたことにしましたw
3巻までが今の日本の漫画やアニメで味わえるエンタメ感があるので、そういうのを求める人は4〜5巻は読まなくても良いかと!
とはいえ、1巻から長男と意識し合って無視できなくて、っていう部分の展開が、当然ながら3巻では収束してないわけなので、そこが気になるなら最後まで読めばいいね、という感じでした。
個人的に、長男が最初から主人公のことが好きだと言い続けながらも、主人公的にはソリが合わないために拒否し、ウィルやディックと結婚する度に、父親のように付き添い人になって「お幸せに」と身を引くのがまあ面白ポイントかな、とは思いました。
ウィルが戦死、という展開なので彼に関してはそこで物語が止まるので特に感想はないけど、ディックと折角再会できても、彼が上流階級の生活に馴染めないだとか、主人公も倹しい妻になりきれず、地味な生活では飽き足らずにその時々の衝動や刺激ある生活を追い求めてしまうすれ違いが悲しい。。
ので、回り回って結局長男と、というラストはまあある意味納得というか、最初からそのような展望で書かれた物語でもあったw
現代的なエンタメ視点で、身分や階級差を超えてディックとハピエンになって欲しいなと私も思ったけれど、主人公クリスチナの育ての親であるおばさんが「貴女は刺激のある生活が好きなのでディックとの地味な生活に満足できるのか心配」と忠告する伏線が印象的。
そしてディックも、仕事一筋が当たり前に生きて来たから、いざ家主として、やれ社交の場だのパーティに参加しろだのクリスチナに言われても、苦痛に感じてしまう。
仕事一筋って凄く真っ当だし、彼の性格の良さ、まともさ自体は家主になっても根本は変わることがないのに、それで上手く行かない上流階級という環境がまともじゃない、でもそのまともじゃない側にいて、その生活が馴染んでしまっているクリスチナが主人公なのだから、そうなってしまう、という、、エンタメとは逆の、自らの意思では超えられなかったリアル、の物語でした。
レビューで「クリスチナが魅力的じゃない。彼女は結局誰のことも愛していなかったのでは」とあったのだけど、そうとも言えるかもだし、環境の過酷さが悪い!とも思う。例えば、屋敷を捨てて別の場所へ行けばこの二人は上手く行ったのかも?とも思える、でもクリスチナは屋敷の女主人として上流階級人の振る舞いを優先し、それ前提で筋を通そうとしたらこうなった。屋敷でしか生きて行けないマークと引き合うのは、ディックとどこかへ行く、という選択肢が彼女の中に無かったから、だとも。でもそれにしてもディックがその為の踏み台にならんでもwと、、
まあこれもネタバレになるけどディックも別の人と幸せになる、というラストではあるのだけど。
とりま、ハリウッド的エンタメではない作品を久々に読んだ(今まで、あまり読んではいない)。
メジャー作品になってないのは、それが原因でもあるのかな。
イギリスの階級差意識は、やはりシビアなんだろうなぁ、とも思いました。
これがアメリカの作者の手で書かれたなら、長男と主人公がくっつく、のが同じだったとしても間にディックが挟まらないのかも?とか、長男は身分が低い人物という設定だったのかも、とも思えるw