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どうかゆるしてください


お腹が痛いときは誰だって、トイレでかみさまにお祈りをすると思う。



ーーーああ、かみさま。もう酒はやめます。だからゆるしてください。


それから、調子がよくなってくると、
かみさまのことなんてすっかり忘れて、
また酒も飲むし、タバコも吸う、二郎系ラーメンも懲りずにまた食べる。

だけど、トイレが礼拝堂になっているあいだは、だれしもが神学者だ。




「ゆるしてください」




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「そんなこと、世間がゆるさない」と言われたのは、もう半年前。

卒業式、のような場所で再開したあの子は、怒っていた。

わたしは、怒られるときはいつも、ぎょっとするばかりで黙っているので、
かえって相手を逆撫するらしく、怒られる時はめちゃめちゃに怒らせてしまう。

きっとあのとき、あの子は世間として怒っていた。






ゆるしたり、ゆるされたりすることは、むずかしい。






あいちトリエンナーレで、展示が中止になった。

慰安婦問題、というのは、諸説あって、
あったかどうかよくわからない、という事実がある、というのが真実なのだろう。



ほんとうのところはよくわからない、というのを引き受けた上で。

そのことが、いまだに問題になること自体が、
70年前のうらみの大きさを物語っているよな、と思う。




ひとが、何かをゆるしたり、ゆるさなかったり。

ひとが、ゆるされたり、ゆるされなかったり。

そんなこと、できるのだろうか。



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「わたしはスワンではなかったです。すみません。」

「身体が一瞬軽くなっただけでした。」


オウム真理教のひとたちは、死刑になった。

だからといって何かが、ゆるされたり、ゆるされなかったりするわけじゃ、ないだろう。


ただ、13人が首を吊るされて、家族が泣いただけだ。





ほんとうにひどいことをされたとして、
ひどいことをしたヤツを許さないといけないとしても、
許せないときがあるのが、人間じゃないかしら。

だから、ひとがゆるすとか、ゆるさないとか、
それは、息をするとかしないとか、そういうことに似ている。




ーーーいき、止めます。

(24分3秒)

ーーーーけぁ、ん、は、ん、は、んは、






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息をとめることの世界記録は、24分3秒らしい。
許すことのできる世界記録は、何年だろう。



わたしたちは、
ゆるされているわけではないのだし、
ゆるされていないというわけでも、ない。

それは、きっと世界の外側にある。





だけど、
ゆるそうとし続けたり、
ゆるされようとし続けようとすることくらいは、
もしかしたら、できるのかもしれない。


わたしたちが決めるものでは、
決して、ないのだけれども。








今日も、二郎系ラーメンをたべてしまいました。

ゆるしてください。



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みなと
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