発達障害の大きなカテゴリー分けと特徴について③(ADHD)
前回の記事では、
知的障害の特徴や将来の見通し、また、社会生活を送る上での適応策(困り感を減らす方法)
といった内容を解説した。
今回も前回や前々回と同様に、発達障害の大きなカテゴリーの1つ、ADHD(注意欠陥多動性障害)とは何か?
また、それに対する適応策(困り感を減らす方法)を書いていこうと思う。
ADHD(注意欠陥多動性障害)とは
・不注意(集中力がない)
・多動性(じっとしていられない)
・衝動性(思いついたらすぐに行動してしまう)
といった3つの特性を持つ障害のことを指す。
知的能力に問題はない為、集団生活を送る上で
①話を聞いていない
②落ち着きがない
③突然、喋り出したり動き出したりする
などの症状で、低い評価を受けることが多い。
それ故に、同級生や担任の先生などから、嫌われていることが多い。
(知的障害を併発している場合もある)
体感としては、知的障害の児童とADHDの児童の割合は同程度であり、どちらも、社会性や協調性、コミュニケーションの問題を抱えていることが多いように思う。
その特性上、集団行動が苦手であるためにその集団から浮きがちであるように感じられる。
また、低い評価を受けることで自信を失っている場合が多い。
では、前述したADHDの3つの特性について少し例を交えて深掘りしていく。
注意について
注意とは、一般的に集中力、と言われる機能のことを指す。
注意には段階があり、以下①→④にいくにつれて難しくなる。
①注意の維持(1つのことに集中し続ける 例:TVゲームに集中し続ける)
②注意の選択(集中する対象を選ぶことができる 例:たくさんの人がいる中で、注意を向けた対象者の声だけを拾おうとする)
③注意の切り替え(集中する対象を切り替える 例:TVゲームに集中していても、後ろから話しかけられると、その話し声に注意を向けることができる)
④注意の分配(複数のことに集中し続ける 例:同時に複数の品の料理をする)
(例)授業中に集中が切れてしまい、話を聞いていなかった、という場面があったなら
恐らく注意の維持や選択の部分に苦手さがある、と推測できる。
①から④につれより高度になるため、維持や選択が難しいのであれば切り替えや分配は、より難しい行為になる。
多動性について
多動性とは、落ち着きなくじっとしていられないような特徴を指す。
また、喋り始めると止まらない(=多弁)といった特徴もある。
(例)じっとしている事が苦痛で常に身体を揺らして動かす、など。
体幹の筋力の不足から体を動かしている方が楽、という場合もある。
体幹を例として挙げると、腹筋と背筋を同じ出力で動かし続けることで静止する。動いている方が腹筋と背筋を交互に使えば良いので簡単な動作になる。
また、感覚の感じ方の問題がある場合もある。
筋肉を動かしたい、高い所から飛び降りたい、などの理由があって落ち着きがない場合など。
これらもいくつかのタイプに分かれるが、それについては今後、感覚統合という記事で詳細を書く予定だ。
衝動性について
衝動性とは、気になったことや思いついたら、結果を気にせずすぐに行動してしまうような特徴を指す。
(例)目の前に蝶が飛んでいたら後先考えずに追いかけてしまい、気付かずに車道に飛び出してしまう、など。
ただ、衝動性に関しては年齢を重ねるごとに、症状が軽減していく傾向にある。(恐らく、衝動性で困った経験値を重ねて社会経験を得ている為かと思われる)
加えて上記の3つの特性の強さによって、3タイプに分けられる。
・多動性衝動性優位型(多動と衝動性の症状が強いタイプ)
・不注意優位型(不注意の症状が強いタイプ)
・混合型(多動と衝動性、不注意の症状が混ざり合ったタイプ)
この中でも、大人になると困り感が軽減するのは、多動性衝動性優位型。
多動性は、年齢を重ねるごとに症状が軽減する傾向にある為だ。
大人になっても困り感が続く傾向にあるのは、不注意優位型と混合型。
特に、不注意の症状に悩まされている事が多い。
また、注意の機能は元々の脳の特性であるため、改善を図るのは難しく、自身で「注意機能が弱い」ということを意識し続けて生活することが重要である。
(例)他者の話を聞く時に、「聞き取る事が難しい(注意の選択の難しさ)。」と思うのであれば、情報を筆記で伝えてもらうなど、自身の特性を理解した上で対策を講じる。
自身で「注意機能が弱い」ということを意識し続けて生活することが重要であると述べたが、私自身の例を挙げると、ADHDの人の社会参加の際の問題点となり得るのは、不注意による周囲からの低評価や、失敗を繰り返すことでの自信を失うこと(=積極性に欠けてしまう)が挙げられる。
そのため、二次障害に移行しやすい。
そんなADHD特性を持つ人の社会適応のための対応策とは、特性の理解が挙げられる。
特性の理解を深めることで、対策を講じることができるからだ。
診断名をつけてもらうのも、対策の1つ。(診断名がつくことに否定的な方が多いが、診断名はあくまでツールの1つに過ぎない)
例えば、不注意で困っているとするなら
・注意の段階が、どのあたりかを把握する
・注意が続く時間を把握しておき、休憩を挟む
・注意を向ける対象を少なくなるように、整理整頓や周囲の環境を調整する
などの対策ができる。
多動性や衝動性で困っているのであれば、それらの解消法を試して見つければ良い。
筋肉を使いたいのであれば、万歩計を50回思い切り振る、など。
高いところから飛び降りたいのであれば、思い切り走る、階段を駆け降りる、など。
私自身は混合型であり、多動性は年齢を重ねたことで落ち着いたが、衝動性や不注意は未だに残っている。
やはり、日常的には衝動性よりも不注意に困ることが多い。大人になってからも、話を聞き逃すこと、聞き間違えること、聞き取れないことが多々あるため、大事なことはノートにまとめて記録する、スマホのスケジュールで管理することで対策をしている。併せて、継続的にADHD薬を服薬することで、症状の軽減が図れていると感じる。
また、衝動性に関しては、ネット通販で大量購入が抑えられず困った事があった。対策として、現在は金銭管理を妻に全て任せている。これにより、現金をあまり持ち歩かず、また買い物の際は妻に相談することで衝動的な購入を避け、困り感の解消に繋げている。
幼いころから自身の違和感(話を聞くのが苦手であること、忘れ物が多いなど)を感じており、次第に「注意機能が弱い」ということを自覚するようになった。自覚した後は自分で対策を講じるようになり、同時に、家族をはじめ周囲の人たちに理解を得ることで、感じていた生きづらさは多少軽減したように思う。
加えて、現場でよく見るのは、
・不注意優位型(話を聞いていない為に、伸び方が遅く、また修正を加えても忘れてしまう)
・多動性衝動性優位型(集団活動中に大声をあげたり、多動多弁により、周囲に大きく影響を与えてしまう)
・混合型(上記2つが混在する)
といった困り感である。
どれらも知的な遅れが加わると、一気に困り感の解消は難しくなる。(困り感や特性の理解というところが難しくなる為)
簡潔にまとめると、彼等(私含め)の困り感の具体的な解消法として
・特性(不注意/多動性/衝動性)への理解を深める。
・特性への対策を行う。(服薬も対策の1つの方法)
などが挙げられる。
各児童の能力に合わせた環境設定や課題設定が必要があり、また、本人自身にどういった課題が苦手なのかを自覚してもらう必要がある。
また、事前に多動性や衝動性の解消を行なってから集団活動を行う、であったり、事前に話を聞くことを約束する、などが一般的な対策である。
ADHDに関しては、知的発達の遅れが加わるか、加わらないかで大きく困り感の解消に繋げる難易度が変わってくる為、対応は臨機応変さが求められ、難しい。
失敗経験が多く、自尊心も低い為、「どうせ俺なんて…」と思っている傾向も強い。
根気強く傾聴の姿勢と、能力に合った課題の提供、特性の理解と対策を講じていくことが重要である。
次回はLD(学習障害)の特徴と分析、対応策について書いていこうと思う。
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