【交流分析で考えるモヤモヤシーンのコミュニケーション①】~多すぎるおすそ分け~
この記事は当院のクライアントの体験談をもとにしたコミュニケーションの練習問題です。トピックの提供は当院でエゴクラム分析と気功メニュー「愛05」「固着した悪意の解体」を受けていただいた方に限らせていただいてます。
当記事のトピック提供者は主婦のA山さんです。
(個人が特定されないよう、設定などは変えてあります。そのうえで、提供してくれた方の許可を得て掲載しています。)
近所に料理のおすそ分けにハマっている奥さんがいます。だんだんエスカレートして、頻度も増え量も1日や2日では食べきれないほどになってきて、うちで作った食事を何日も冷蔵庫にしまっておくことに。その行為について、「あそこの奥さん、あれがストレス発散なのかもな…」と言っている家族もいます。また今日も留守のうちにお赤飯が届いていて、お礼の電話をするのですが…
問い
近所の奥さんの気持ちを考え、電話をするときに伝える言葉を次の4つの中から選択してください。その際に「5つの自我状態」(※1)のうちどれを使うのがふさわしいか考慮すること。
①「ありがとね。おいしかったわぁ」
②「ありがとね。でもちょっと量が多すぎて食べきれなかったわ」
③「ありがとね。奥さん、がんばられたのね。うちは4人家族だから、1日や2日では食べきれなくて。あんなには無理だから、他のお家にもあげてね。」
④「ありがとね、おいしかったわ。あんなにたくさん、いつ作ったの?小豆は畑でとれたの?」
(※1)「5つの自我状態」は交流分析の理論です。簡単に説明した表を以下に載せます。
詳しくは下のマガジン記事をご覧ください。
≪解説≫
①はFCの反応です。「おいしかった」と聞いて相手の奥さんは喜ぶでしょうが、A山さんとしては「多すぎて食べきれない」という点は伝えていません。
②はAからの反応です。「多すぎて食べきれなかった」のは事実ですので、それを客観的に伝えることはできています。しかし「おすそ分けがストレス発散なのかもしれない」という情報もあるため、エスカレートに歯止めをかけることにはならないかもしれません。
③は「がんばられたのね」「他のお家にもあげてね」の部分がNPからの反応、「うちは4人家族だから、1日や2日では食べきれなくて。あんなには無理だから」の部分がAからの反応です。「多すぎて食べきれない」という事実を伝えるAの言葉を、NPの言葉で挟んでいます。
奥さんの行為がCの自我状態から相手のPの自我状態に向けられているのであれば、この反応でA山さんの言いたいことも伝わり、奥さんの気持ちも傷つかないかもしれません。(その場合、このやりとりは相補的交流になります)
しかし奥さんが「おすそ分けをエスカレートさせる心理」は(ここまでの情報では)まだよくわかりません。何が理由でそうなってきたのか分からないので、もしかしたらA山さんの言いたいことを受け止めず、また大量におすそ分けをくれるかもしれません。
そうなった場合、A山さんとしては「食べきれないって言ったのに…」とがっかりする気持ちになってしまうかもしれませんね。
④はAの反応が中心です。「4W1H」を使った反応は冷静さ・客観性を持つAの言葉です(※2)。「相手に興味を持って質問する」ことはプラスのストロークでもあります(※3)。
「4W1H」とは、「5W1H」から”Why(なぜ?)”を除いた疑問詞です。
「4W1H」のストローク
When(いつでしょうか) Where(どこでしょうか)
Who(誰でしょうか) What(何でしょうか)
How(どれくらい、どんなふうでしょうか)
問題文の時点では「なぜ奥さんが大量のおすそ分けをくれるのか」が分かっていません。しかし「なぜこんなにおすそ分けをくれるの?」と尋ねたとしても、はっきりとした答えはが返ってこない可能性があります。奥さん自身も自分の行動の理由を分かっていないかもしれません。そうした場合、「なぜ?」と聞くことは「プラスのストローク」にはなり得ません。
そこで「いつ(作ったの)?」「どのように(材料を準備したの)?」というほかの疑問詞を使って情報収集をすると良いです。
もし奥さんが生活のほとんどの時間をおすそ分けを作ることに費やしていたり、材料をわざわざ大量に購入したりしていたら、何か心理的な悩みや欲求不満が隠れている可能性があります。A山さんの家族が言うように、大量におすそ分けをすることが「ストレス発散」になっているのかもしれません。そうであれば、さらに「いつからそんなにおすそ分けを作るようになったの?」「そのころ何か変わったことはあった?」と質問するのも良いかもしれません。するとだんだん奥さんの行動の理由が分かってくるのではないでしょうか。そうなれば「そんなにたくさんおすそ分けはいらないよ」という点をどのように伝えたら相手が受け止めてくれるか、考えることができます。
(※2)4W1Hについては以下のマガジン記事をご覧ください。
(※3)ストロークについては以下のマガジン記事をご覧ください。
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