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パニックの原因をつきとめて、モヤモヤとしたおそれがスッキリした。~自閉症F太さんの気功体験談~

ある特定の場面で現れる感情や感覚の癖をなくしたい場合、癖ができるきっかけとなったトラウマをケアするとうまくいくことがあります。

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一義流気功 伊深気療院セラピストです。現在見習い中のため、営業はまだしておりません。この記事は私の勉強のために無償で気功を受けていただいた方の体験談です。一義流気功の効果について知りたい方にも参考にしていただけるとうれしいです。
(個人が特定されないよう、設定などは変えてあります。そのうえで、体験された方の許可を得て掲載しています。)

職場でパニックになる原因とは…?

20代後半のF太さんには、自閉症の診断があります。現在は企業に就職して働いていますが、子どものころからパニックになることがよくありました。職場では周囲の人にパニックのことを理解してもらえず困っていたそうです。

(セラピスト)「F太さんがパニックになるときは、職場の方はどんな反応をするんですか?」

(F太さん)「僕がパニックになるときは、一生懸命なだめようとしたり、『こうすればいい』とか『こう考えればいいのに』とアドバイスのようなことをして、パニックになること自体をなんとか変えようとします。入社するときに会社には自閉症のことをちゃんと説明してあるんですよ。パニックを起こすのはある程度しかたのないことだと。パニックになったときはむしろ放っておいてもらったほうがいいんです。そうすれば、自分で落ち着いて戻って来れるから。でも同じ持ち場の人には、そうやって説明しても分かってもらえないみたいで。説明したにもかかわらず、僕がパニックになると驚いて、なんとかしようとしてさらに刺激を与えちゃう、みたいな感じですね。」

(セラピスト)「そうなんですね。F太さんがちゃんと説明しても、『いざ』となると驚いてしまうんでしょうね。」

(F太さん)「パニックになる原因の一つは、自分ではなんとなく分かっています。僕は何か良くないことがあると『自分のせいだ』って思ってしまって、自分を責めるような気持ちになってしまうことが多いです。その気持ちが強くなりすぎるとパニックになる気がします。これは子どものころからずっとです」

(セラピスト)「子どものころからなんですね。それは『思い癖』のようなものですか?」

(F太さん)「そうだと思います。何かあったらすぐに『自分のせいだ』と思ってしまったり、『僕が悪い』って認めればその場が丸く収まるような気がして、何度もそういうことを繰り返していますね」

(セラピスト)「その癖はいつぐらいからありますか?」

(F太さん)「小学校6年生くらいからです。そのきっかけになったできごとは、はっきりと覚えてます」

(セラピスト)「そのできごとを具体的に教えてもらえますか?」

(以下はF太さんの小学校6年生頃の体験です)

運動会の練習のとき、物がなくなったことがありました。ダンスで使うおそろいの小さなフラッグです。そのフラッグは一人一本ずつ持っているもので、自分のフラッグを無くしてしまった子がいました。
「F太くんが僕のフラッグを持って行った」
とその子は言いました。すると他の子も
「きっとそうに違いない」
とF太さんを疑ったそうです。でも実際には、F太さんが持って行ったわけではありません。
F太さんは
「僕じゃない」
と言いましたが、聞き入れてもらえませんでした。
一人ではなくみんなから疑いをかけられたことで、F太さんは
「説明しても、わかってもらうことは無理なんだ」
と思いました。だから
「自分がフラッグを見つけるしかない」
と考えたそうです。先生もみんな一緒になって無くなったフラッグを探しました。F太さんが最初にそのフラッグを見つけ、無くした子のところに持って行ってあげました。するとその子は
「やっぱりお前だったんだ」
と言いました。
実はそのフラッグは先生が間違えて持って行ってしまい、その場所に置き去りにしてしまったのだということが判明しました。先生の中にはF太さんの自閉症のことをよく理解してくれる人も何人かいて、その先生たちが誤解を解いてくれたそうです。
でも、この出来事の後F太さんには「わかってもらえなかったショック」が鮮明なトラウマとして残ったそうです。

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(F太さん)「子どもの頃のことはあまり覚えてないほうなんですけど、このできごとははっきりと覚えてます。何か良くないことがあると『自分のせいだ』って思ってしまう癖は、明らかにこの出来事の後にできたものです。今では『子どものころのことだしな…』と思う一方で、『またあんなことになったらどうしよう』という恐れみたいな気持ちが常にモヤモヤと心の中にあるような感じがしています」

F太さんは以前に一義流気功メニュー「異常反応の解体」を受けています。28%の異常反応があり、気功を受けたあとは心身の多くの面で良い変化があったと教えていただきました。F太さんの「異常反応の解体」の体験談は下の記事でご覧になれます。

F太さんの異常反応は2度目の気功で0%になっています。その後も「異常反応予測テスト」を使って変化を見てきましたが、点数が下がらない項目がいくつかありました。とくに「レジリエンス」項目のうち「問題が起きると自分を責めたり、強い罪悪感をおぼえたりする」の点数がなかなか下がりませんでした。

F太さんは気功メニューの「愛05」も受けてくれています。それなのにこの項目が変化しないのはなぜなのか、私も少し気になっていました。愛05の主な効果は自己肯定感と共感力が高まることです。トラブルが起きたとき、「自分も相手も責めずに解決に対して前向きになれる」という人もいます。しかしF太さんにはそのような効果が表れていません。その原因が、今回お聞きしたトラウマである可能性が高いということが分かってきました。

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(セラピスト)「何かあったときに『自分が悪い』と考えてしまう癖は、たぶん今お聞きしたトラウマが関連しているのだと思います。でもここまではっきりと特定できていると、このあとの気功はかなりうまく行くと思いますよ。このあと60分ほど『心の毒を直視して消す』の気功メニューを受けていただけますか。そして気功を受ける前と後で感じ方が違っているかどうか教えてください。」

(F太さん)「わかりました」

理性の面と感情の面の反応のちがい

(セラピスト)「ではまず、気功前はできごとについてどう感じているか教えてください。現在の大人としてのF太さん(理性の部分)は、そのことについてどう考えていますか」

(F太さん)「冷静になれば、自分で何とかする以外の方法が見つかったと思います。今考えてみると、真っ先に先生に頼れば良かったんじゃないかなと思います」

(セラピスト)「では、その考えについて幼いころのF太さん(感情の部分)はどう反応しますか?」

(F太さん)「疑われたら、絶対わかってもらえないしどうしようもできないから、たとえ違っていても『自分のせいなんだ』と思わなくちゃいけない、というような感じです」

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(セラピスト)「ありがとうございます。今から60分の気功をするので、終わった後に感じ方に変化があれば教えてくださいね」

受けていただいた気功メニュー…「心の毒を直視して消す」60分
≪ターゲットにしたトラウマ≫
前半30分…小学校の頃の運動会の練習でのできごと自体
後半30分…それ以降の似たような出来事のシリーズ

~60分後~

(セラピスト)「いかがですか?」

(F太さん)「表現が難しいですけど……何か、自信がついたような。何か良くないことがあっても、『自分のせいだ』って思わなくていいかも、そういう状況になっても、『うまくやっていけそうだ』という気がしています。具体的に何かそういう出来事が起きてみないとよく分からないですが、前は『またそういうことがあったら嫌だな』っていう恐れがモヤモヤとあった気がするけど、今はそれがなくなってスッキリしているように感じます」

(セラピスト)「ということは、気功の前に理性の面と感情の面と両面あったものが、今は理性の面だけになった、みたいな感じでしょうか?」

(F太さん)「…そうみたいですね。次に来る時までに、観察してみます。似たようなできごとに出会ったときや、普段のちょっとした時も何か違うかもしれないし。また次に来た時にお話しますね」


~2か月後~

今回の気功から2か月後に、F太さんにヒアリングをしてみました。

(F太さん)「最近は落ち着いています。とくに何かすごくいいことがあるわけではないですが、退屈でも平穏な毎日だなと思っています。今のところパニックになるようなことは起きていないです」


F太さんは自閉症で苦労しながらも、自分の心の中のことを観察してよく知っている人のようです。それは誰にでもできることではないかもしれません。この記事を見られた方が、セラピーの過程を安易に真似ることはやめてください。F太さんが過去の鮮明なトラウマを思い出して語ってくれた時点でパニックにならなかったのは、先に異常反応の解体を受けていることにも関係があると思います。それに加え、F太さんの精神の器の強さというものもあると思います。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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