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週末歌仙*葉ノ玖

歌を詠むということ

短歌とは、感動したこと、悔しいこと、悲しいことや嬉しいこと、すべてを言葉にのせて表現するものです。
歌を詠むこと、それは、長い人生において心の薬となるでしょう。
私も人生の山坂を短歌に支えられ、 81歳 まで 生きてこられました。
だからまず難しいことはおいといて、あなたの心が感じたままに、歌をつくってみてください。
きっと作歌の楽しさが、だんだんわかってきますよ。(楓美生)

歌人・楓(かつら)美生(みお)
昭和17年10月28日 杉並区荻窪生まれ

玉川上水の桜橋を散歩中、その後歌の師と仰ぐことになる人物と
偶然出会ったことがきっかけで、短歌を始める。
多摩歌話会(歌人集団)に15年ほど所属。
NHK、地方の短歌大会入賞。
現在は近所の歌好きを集めて、短歌の指導をしている。

<好きな歌人>
栗木京子、寺山修司、尾崎左永子
<好きな歌>
ここに咲きここに散りゆく秋萩のごとき一生(ひとよ)を悔いざれよゆめ

第一首

(想像してみてください…)

お盆の宵。
精霊棚へ花を飾り、揚げたてのてんぷらと、夫の好きだった缶ビールをお供えして。
棚の左右に置いた回転行灯を灯す。
年に一度しか活躍しない盆提灯だけど、ほの暗い部屋の中でくるくる回る光の像が見ていて楽しい。
キンキンに冷やした缶ビールのプルタブを開け、遺影の夫と乾杯!

ここで一首ーー
(みなさんなら、どんな歌を詠みますか? わたしの歌は……)

提灯に
明かりを灯す 盆の夜は 
亡き夫(つま)偲びしんと深けゆく

<2020年 夏に詠む>

はがき絵・ともこ作

<解説>
お盆と聞いて、みなさんはなにを思い浮かべますか?
お墓参り、きゅうりの馬とナスの牛、てんぷらやくだものなどのお供え物。
いろいろあると思いますが、日常の風景が「お盆」独特の雰囲気へ一気に変貌するのは、盆提灯に灯りを入れた瞬間ではないでしょうか。
お盆に灯す提灯は、あの世から戻ってくる御霊たちが道に迷わず家へ辿り着くための目印だと言われています。提灯に火が入ったら受け入れの準備ができたというわけですね。ちなみに、同じ先祖供養の行事であるお彼岸は、あの世とこの世の距離が縮まるだけで、御霊たちが越境してくることはないそうです。だからお化けのシーズンは夏(お盆時期)なんですね!
さてこの提灯、現在は電球式のものがほとんどですが、もともとは中のろうそくやたんころに火を灯すことで灯りとしていました。なので、雨風とはあまり相性がよくありません。今回の歌も、冒頭に「提灯」を配したことで、雨空はあまり想像しなかったのではないかと思います。また、現代社会において提灯は普段使用するものではないので、どことなく非日常的な雰囲気もかもし出せたのではないでしょうか。
ではこれが「提灯」ではなく「ろうそく」だったらどうでしょう? あるいはお線香だったら? 歌のイメージは結構変わると思います。
「お盆」らしさを表現するのに、自分ならどのアイテムを使うのがしっくりくるか? ぜひいろいろと試してみてください。

歌を詠んでみましょう!

テーマは……
提灯

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第二首

(想像してみてください…)

お盆休みに帰った実家。
居間と仏間を仕切るふすまを開け放ち、大きなテーブルと何枚もの座布団が並べられる。
親戚や近所のひとも集まって、近況報告から子供時代の想い出まで、話は尽きない。
子供の頃、悪戯をして一緒に父に叱られてくれた幼なじみも、ずいぶん年を取ったなぁ。まあ、わたしもひとのことは言えないけどね。

ここで一首ーー
(みなさんなら、どんな歌を詠みますか? わたしの歌は……)

老いし顔
昔話しに 花咲かす 
仏も聞くや故郷の盆
 
<2000年、夏に詠む>

<解説>
今回はお盆の歌をもう1首。こちらは故人を偲ぶというよりは、大勢でわいわいと過ごす様子を描いたものです。
ポイントとなるのは「昔話し」という言葉。これを入れることで、その場にいるひとびとが古くからの知り合いであることが判ります。また冒頭の「老い」と相まって、ノスタルジックな印象を与えられたのではないでしょうか。その流れで「仏」とくれば、すでに亡くなった親や祖父母などを想起できるかな、と。あの悪童が大きくなったものだ、とご先祖さまが笑って見ているといった、ほっこりした読後感を目指して詠みました。
ただ懸念するのは、仏壇のある家でお盆を過ごした経験のない読者だと、もしかしたらピンとこないかもしれませんね。このあたりは今後の課題というところでしょうか。
昔はお盆休みには必ず田舎へ帰り、きょうだいや親戚と一緒に過ごしたものですが、みんな年を取って、ひとり欠け、ふたり欠け……今では帰ることもなくなりました。寂しいものですね。

歌を詠んでみましょう!

テーマは……
お盆休み

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あなたの短歌をご寄稿ください!ー『作歌のこころみ』

『週末歌仙』では、老若男女問わず気軽に作歌を楽しみたい方を募集中です。
「うまくつくれない」
「それ、おもしろいの?」(おもしろいです!)
そんな皆さんは、まず肩の力を抜いて、自分の心と向き合いましょう。
なにかを美しいと感じたり、楽しいと思ったり……。心を動かされたら歌の詠み時です(笑)

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ちょっとやってみようかな、と思ったかた、ぜひご応募お待ちしています!


短歌:楓 美生
はがき絵:ともこ
編集:妹尾みのり

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