【詩】 東京雨景
消えたいとつぶやくとき、街には雨が降る。雲から孵ったさかなの群れが、感覚神経を、かなしみのために泳いでいる、だれかの袖に、飛び込んでいく、これは、夜がきみの代わりに泣くよって、そういう音楽なんだよ。流れ星になりたい、きみが、水溜まりを踏むとき、ほんのいっしゅん、重力が恋しくなる。そういう音楽なんだよ。
夜明け、ビルが空から、まっすぐ降りているのが見えます、あれが、東京、眩しい多角形の美術展。きみの手をとって、行くよ、切り取られた街の、装飾になろう。笑っていいよ。ぼくらは、地上で星になることを、きっと許されたんだ。