初代「営業部長」
コーヒーで絵を描いている自分が
絵を描いていくなかで
いろいろ体験したことを書いています
うちの初代「営業部長」のことを
紹介したいと思います
のちに、いろいろな「お仕事」を
もってきてくれた絵のことです
↑前の記事でも書いた
湘南での個展が終わってから
当時わたしが
「全く使えないバイト」をしていた
西麻布のバーの店長が
「お前、個展より前にウチだろ?!」と
バーの壁にかける絵を
描かせてもらうことになりました
ここのバーは
本当に友達ができる場所というか
今につながる
大事な友人達は沢山ここで出会いました
もともとは渋谷の美容施設に
いたころの仲の良い友人が
ハロウィンパーティーに
ネイルブースを出すと言うので行ったのですが
その後、ヘアメイクのアシスタントを
クビになってから
六本木ヒルズのテレビ朝日で
イベントのバイトをしたことがあって
そこから近かったので
なんとなく帰りに寄るようになったのが
通いはじめたきっかけでした
1人で行っても
店員さんもお客さんも
皆んなが仲良くて楽しく
当時の店員さんには
芸能界を目指している人も多くて
みんなそれぞれにキャラクターがあって
「いらっしゃいませ」
「ありがとうございました」
だけじゃない
客を客とも思っていないような(褒め言葉)
心温まる
むちゃくちゃな接客で
カウンターの中は
まるで
舞台を見ているように楽しく
いつもそれを見ては笑い転げていました
だから
ヘアメイクのアシスタントをやっていて
終電後で翌朝が始発前のような
現場のときに
このお店によって
お酒も飲まずに過ごしては
そのまま
仕事に行くような日もあって
数時間だけでも大笑いできる時間に
本当に救われていたこともありました
お店と仲良くなるうちに
気がついたら遊び半分で
テーブルのキャンドルを綺麗にしたり
灰皿をきれいにしたり
猫の手の暇つぶしのような
手伝いを
なんとなく、みんなが
するようになっていたのだけど
1人でカウンターに座って
常連さん2、3人と話していたとき
急に店長が電話を取って
お客さんから離れた窓際に行くと
「え??!あした?!いや!困るよ!!
そんな急に・・いや、おい・・」
と言っているのが聞こえました
どうやら、バイトの女の子が
急に休むと言っているようでした
その子もキャラクターのある面白い子なので
なんとはなしに電話の会話をきいていると
「いや、困るって!おい!あーーーーー!!!」
と言って店長が固まっていました
あ、、これは
向こうから
勝手に電話きられたな
と、思っていると
そのまま店長が窓際で
くるっと振り返り
「お前、あした7時いりな」
といって
まっすぐ、わたしを指さしたのです
えーーーーーーーー!!!!
・・わたし、客なんだけど。。
そんなこんなで
翌日の夜7時に
本当に店に行ってから
なんとなくそのまま流れで働くことに
なってしまいました
はじめは
次のバイトがみつかるまで
次のバイトがみつかるまで
という話だったので
いつまでも
お手伝い気分がぬけないまま
あまり仕事もできなかったように思います
それなのに気がついたら
ビールをついでワインをついで
そのうちマドラーを持ってステアをし
気がついたらシェーカーまで振っていました
わたしの作るマティーニが
美味しいわけがなかろう・・と思いながら
でも、そうやって
はじめて入る
カウンターの内側は
表で座って飲んでいるときとは
まるで別世界で
まるで世界が裏返ったような気持ちがしました
ヘアメイクになろうと思って
はじめて人にメイクをしたときも
自分にメイクするのとこんなに違うのかと
世界が裏返ったような気持ちになったけれど
特にバーのカウンターというのは
本当に「舞台」なんだと
いままで、あたりまえのように
一緒に軽口をたたき、冗談を言い合い
同じ時間を過ごしてきたと思った皆んなが
いかに「舞台裏」を見せずに
気を配って
私たちを楽しませてくれた
プロの「役者」さんたちだったかを知りました
それが、もう
わたしには全然できなかった
それなのに、諦めずに
仕事を教えてくれて
はじめての個展には
そのバーで出会った人たちが
たくさん見に来てくれました
そんなバーに絵を描くというので
カウンターで1人の時も
一緒に飲んでいる気分になれそうな
強くてカッコいい
セクシーなお姉さんを描こうときめました
女性のセクシーさを
絵で描こうと思ったことが
はじめてなので
そのあたりは
ものすごく苦労したのを覚えています
絵が出来上がって
薄暗い店内に飾ると
自分でもビックリするくらい
その場所にしっくりおさまりました
壁にかけたときは
色のついていない側面が
白くうきあがって
目立ってしまっていたので
あわててその場でコーヒーで
塗りつぶしたのですが
今ではそれも
いい思い出です
その絵はそれ以来
本当に自分が描いたのか?
と思うくらい
その場所になじんで
たまにいくと
「あ、来たの?」というくらい
我もの顔でカウンターの前に鎮座しています
まるで我が娘が
ひとり立ちして
手を離れて
勝手に成長しているような
絵は見てくれる人と
置かれた場所が育ててくれると
こころから感じられるようになる
出来事でした
この絵は今でも
そこのBarで見ることができます
じつは耳のところに赤い石がついていて
スポットライトが当たると
キラッと光るようになっています
そしてこの娘は
その後、本当にたくさんの人に
出会わせてくれました
お店では
「あの絵描いてるんだ」というだけで
まるで名刺をくばったように
話しがはずみ
わたしを「絵を描く人」だと
ひろく広めてくれた絵だと思っています
まさに初代「営業部長」
頼れる娘です