キングズデーってなに?!
コーヒーで絵を描いている自分が
絵を描いていくなかで
いろいろ体験したことを書いています
「キングズデーってなに??なんなの?
どうやって参加したらいいの??」
何もわからないまま
きいてみると
2人は
「僕たちも引っ越してきたばかりで
くわしくは分からないんだ。
ただ、誰でもお店を出していいんだって」
誰でもといったって、、
わたしは日本でフリマに出展したときのことを
思い出していた
確かあの時は
会場も決まっていて
事前の申請と
参加費を払って
場所も割り当てられていた
そんな、誰でもとか
どこでも、なんてことがあるわけがない
考えていてもわからない
ここは情報収集だ
でもどこで?!
わたしは、ここでふと
2人の住んでいるアパートの
一階が
あやしげな中東の雑貨屋になっていたのを
思い出した
入るのに、非常に
勇気がいるタイプの店だ、、
でも
心を決めて
次の日
私は一階の店に飛び込んだ
薄暗い店内に
鮮やかなピンクの布がかけられ
天井から
色とりどりの
中東風のランプが下がっていて
異国っぽいお香の匂いで満ちていた
「いらっしゃい」
店の奥に
目の大きな
白髪混じりの髪をウェーブにした
ちょっと、がちっとした
おばさまが現れた
、、迫力がある
いや、どちらかというと
迫力しかないというか、、、
「あの、、ちょっと変なこときくんだけど」
わたしは
ちょっと緊張しながら
キングズデーに
お店を出したいということ
誰でもいいと言っていたけど
どうすればよいのか
旅行者だからよく分からないということを
おずおずと尋ねた
「ああ、その日はね
本当に誰でも、どこでもお店を出していいの
この店先でも出したりするわよ
でもそうね
もしアートを売るなら
この先に大きな公園があるから
そこで売るといいとおもうわ」
そのおばさま、、
いや、お姉さまは丁寧に教えてくれた
まだよく分からないけど
とりあえず当日公園に行けばいいらしい
ほんとかよ
「ああ、でも
あまり遅くまでいないように
あそこの公園には
夜になると悪いのがいるから」
親切にお姉さまはアドバイスをしてくれた
よし!とりあえずよく分からないけど
とにかく絵を描くしかない
その日から私は
画材屋で
とにかく買えるだけのキャンバスを買い集めた
20枚くらいあっただろうか
バンバン、カードを切って買った
、、これ、売れなかったらどうすんだ、、。。
内心、冷や汗をかきながら
とにかく描いて描いて
描きまくった
そして
1週間たち
10日たち
2週間たったころに
とうとうその
謎の
キングズデーがおとずれた
「じゃあいってくるね!」
朝早くから荷物をまとめると
わたしは中東風の雑貨屋さんの
お姉さまが言うところの
「大きな公園」というやつに
向かって歩き出した
スーツケースのなかには
いっぱいの絵が入っている
だいたいこの
広い公園の
いったいどこに陣取ったらいいのか
公園の広場には
早朝にもかかわらず
ポツポツと家族連れがお店をだしていた
わたしも適当な場所をみつけて
とりあえず芝生の上に腰を下ろす
スーツケースを開いて
絵を並べてみるものの
・・なんとも心もとない、、。
ひとりぼっちの開店は
なんだか胸がスースーした
「だいたいがフリーマーケットみたいなものだから、そんなに高いものは売れないかもしれないよ」
と言われたので
とりあえずキャンバスに
「1枚 20€」という張り紙をして出してみる
そのほかに
似顔絵も描きますよと言う形にした
目の前にいてもらうのも悪いので
写真を撮って
それを描いて
1時間後にわたすというシステムにした
こちらは10€だったっけな
そして始まったお店
午前中いっぱいが終わる頃になっても
・・・まったく人がこなかった(汗)
興味を持ってのぞいて行く人はいるものの
みな値札をチラッとみては
去って行く
、、、まずい
非常にまずい
このままでは大量のキャンバスと
キャンバス代の支払いだけがのこってしまう、、
考えたわたしは
なんか、もう
どうでもよくなって
「20€」の値札を取ってしまった
もしわたしが
フリマに来たお客さんだったらどうだろう
「1枚 20€」と描いてある絵を見ても
ああそうなんだ、としか思わないだろう
要するに、、楽しくない
それなら、、、
わたしは覚悟を決めた
値札を外すと
不思議なことに
ポツポツとお客さんがあつまりだした
値札がある時よりも
なぜか
じっくりと絵を見ているような気がする
そのうち、その中の1人が
「ねえ、これいくら?」ときいてきた
そこでわたしは
「いくらだとおもう?」
ときいた
「12€くらいかな」
「じゃ、それでいいよ!」
そう、わたしは
この日1日
この
「いくらだとおもう?」
ときいて
「⚪︎⚪︎くらいかな」
といわれたら
「じゃ、それでいいよ!」
というセリフを言う
ゲームをする日にしようと決めた
お客さんはビックリして
そして,とても喜んだ
値段が不確定になって
わたしのお店は俄然
活気づいた
「いくらだとおもう?」
「うーん10€?」
「じゃ、それでいいよ!」
不思議と変に買い叩いたり
からかっておかしな値段を言ったりする人は
いなかった
みんな思い思いの値段で買って行くし
その一人一人が
まるで昔からの友達のように
楽しく話せた
この時間が
あれだ、、ほら、、
「プライスレス」っていうやつだ
それにともなって
似顔絵屋のほうも
大変、大盛況になった
キングズデーのオレンジのスカーフを
身にまとった奥様や
(キングズデーは街がオレンジになる)
美人の彼女をつれたカップル
ベロベロに酔っ払ったお母さんをひっぱってきた
小学校中学年くらいの少年
(このお母さんは本当にベロベロだったので
後日絵は届けることにした)
そして
「わたしたちは、ちゃんとした作品としてほしいからキャンバスに描いてあとで届けてくれる?」
といってくれたカップル
あとから、あとからひっきりなしに
お客さんがくる
お客さんがいることで
それを見てお客さんがまた来る
おかげさまで
20枚のキャンバスも
気がつけば
全部売れてしまった
その中ですごく思い出深かった瞬間があった
「いくら?」
「いくらだとおもう?」
を繰り返していくなかで
1人
6歳くらいの女の子が
恥ずかしそうにやってきた
おずおずと手を出して
「あの、、わたし、、
5€しかないの、、でも
この絵が欲しくて、、」
その絵は1番のお気に入りだった
正直、5€で手放すのは惜しい、、
でも、、
私は自分が
小学校1年生のときに
学校のフリーマーケットに行った時のことを
鮮明に思い出した
あの時、私も
ものすごく欲しい絵があって
それを500円を握りしめて買おうかどうしようか
めちゃくちゃ悩んだんだ
小学校1年生にとっての
500円は大金だ
わたしは、その500円硬貨の
手のひらの中の重さまで
リアルに思い出してしまった
この子にとって
この5€がどんなに大切か
表情をみたらわかる
心がすごく暖かくなった
「いいよ、それで」
ちょっとだけお腹に力をいれて
笑顔でその絵を手放した
女の子は
パッと嬉しそうに
「ありがとう!大事にする!大事にするね!!」
と言って
花が咲いたように
受け取って家族のもとに
走って行った
心がふわぁーっと
あったかくなった
うわぁ、、いい5€だったなぁ、、
わたしが
温泉に浸かったような
余韻に浸っていると
「ねえ、ちょっとちょっと」
と呼び戻された
「わたしも、5€しかないんだけど」
そう言って
ちょっと身なりの埃っぽい感じの
おばさんが
しわくちゃの5€をさしだしてきた
「これ、もってっていいの?」
むむ、、、、
わたしはなんとも言えない気分になった
でも,ここはルールだ
しかたない
「それでいいよ」
5€を受け取ると
そのおばさんは
サッと絵をとって帰って行った
さっきの子と偉い違いだ
わたしは世界でいちばん綺麗な5€と
いちばん汚い5€を見たな,と思った
(いや、あとの人も買っていただいたわけだから
ありがたいんだけどさ
6歳くらいの子の「5€しかない」と
あなたの「5€しかない」は
なんかニュアンスちがうじゃんー!)
このときの少女の5€は
いまでも私の心を暖かくしてくれるから
本当に高く売れた5€だったとおもっている
そんなこんなで
大盛況のうちに
そろそろ店じまいの時間になった
わたしは最後のお客さんの
オーダーの絵を描いていた
あたりはまだ昼間みたいに明るかったのだけれど
気がつくと時間は夜の8時になっていた
周りのお店は次第に片付いていって
気づけば私は1人になっていた
でもまだ、オーダーのお客さんがとりにこない
明るいから気が付かなかったのだけど
寒さで手がうまく動かなくて
なかなか絵も描き上がらなかった
そのうち近くでスケートボードの音がしはじめた
近所の中高生が遊んでいるのだろう
5,6人の男の子たちが
ダンスをしたり
スケボーでベンチに上がったりしていた
「ねえ、なにやってんの??」
そのうち、なかの1人がはなしかけてきた
「キングズデーで絵を描いていてね
いま最後のお客さん待ってるところだよ」
男の子たちはワラワラあつまってきて
珍しそうに絵を見たりしていた
ドレッドの子、ブレードの子
顔中にピアスの穴があいてる子
タトゥーがガッチリ入ってる子
みんなダンサーかな??とおもうような
ストリート系の格好をしていた
中学校くらいかと思ったけれど
18とか19とか?もう少し年上そうだ
そのうち,その中の1人の黒人の男の子が
「ねえ、俺さ
顔がアジア人みたいだから
みんなからチャイナって呼ばれてるんだ
アジア人から見て
俺ってアジア人みたい???」
と聞いてきたので
「あなたが???ぜんぜん!!
誰がそんなこと言うの?
アジア人には全然まったく見えないよ!」
というと
なんか、満足そうな
安心したような顔をしていた
ダイジョウブ
アナタは
どっからどう見ても黒人です
なんかヤンチャな中学生って感じで
可愛らしかった
しばらくいろんな話をしたあと
「ヤパン(日本人という意味らしい。なんかわたしのあだ名みたいになってた)
俺らこれからメシいくけど一緒くる?」
と言われた
「ごめんね、最後のお客さん
まだ待ってるから行けないよ」
と,断ると
そのチャイナ君はとても残念そうに
離れて行くあいだも
「ヤパーーン!!またなーーーー!!」と
手を振ってくれていた
わたしも手を振り返して見送って
しばらくして最後のお客さんが来たので
絵をわたして
すっかり寒くなった公園を
スーツケースをしめて店じまいした
「そうだ、、遅くならないうちに
早く帰らないと
この公演は遅くなると悪いのが出るって
あのお姉様がいってた、、、、」
そこまで考えて
なぜかピンときた
あ、、たぶん
あの人が言ってた「悪いの」って、、
・・あの子たちのことだ笑
そういえば、イカつい見た目をしていた
いまごろ気がついて
ちょっと笑ってしまった
そういえばツンとしたマリファナの匂いも
してたような気がする。不良少年たちめ
(オランダは合法ですので)
大丈夫,みんな可愛かったですよ
そういうわけで
にわかなキングズデーの
絵描き屋さんは終了した
ルールだときめて
全員に言われた金額を
そのまま
「いいよ」といっていたので
もちろん
全部売れたと言っても
大した売り上げにはならなかった
以前にイギリス人の彼に
立て替えてもらったぶんを
現金で
精算したら終わりだ
でも、あの時間が
なによりも代え難い経験だった
わけがわからないし
どうなるかも分からなくて
不安で怖かったけど
やってよかったな
キングズデー
家に帰ってからも
街中から
ゴリゴリのEDMが
朝まで
聴こえてきていた
そこら中に野外ステージがくまれて
爆音でクラブミュージックがかかっている
日本じゃありえないし
気が狂ってるとしか思えない
この国(笑)
わたしはオランダが
大好きになった
次の日からオーダーの作品を
お家に配達するようになるんだけど
これがまたビックリの展開になるので
それはまた次にお伝えします
なんだかんだで
オランダ編も長くなってきちゃったな
まだまだ書きたい思い出が
たくさんあります