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あの日の怒りと羞恥を供養したい。
これは1年も前の出来事なんだけど、ちょっと煮え切らないから聞いてほしい。
わたくし、カギを失くしました。
家のカギ2本と実家のカギ2本と職場のカギ1本をもろとも全てね。束で。失くしたんすよ、
その日わたしは営業後にカットの練習をしていて、さいご店のカギをしめて帰ってきて、自宅に着いたのが24:00前くらい。夜も夜よねぇ。
玄関の前でポッケに手つっこんだらカギがなかった。……うーーん。 やったわ。
たぶんポッケに入れた気がするし、一応カバンの中も見たけどない。戻って探す時間もなかった。
もしかしたらの可能性にかけて、とりあえず職場のグループLINEに連絡した。
カギまわしたあと抜き忘れるのよくやるんだよね〜〜 ( ⸝⸝⸝ '-' ⸝⸝⸝ )照
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こんな時間にもう寝る直前だっただろうボスがなんとわざわざ見に行ってくれたけど無かったようだ。
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優しいタケさん。夜分にご迷惑おかけしてすみません。
ご迷惑ついでにひとつ懺悔してもいいですか?
ほんとはLINEする前から『絶対落としたな』って確信してたんです。
なぜなら
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ポッケに穴が開いてたから。
それはもうフレミングの定理飛び出しちゃうくらい開いてた。これは落ちるに決まってる。
これいま初出し情報だから読んでるタケさん怒ってると思う。
しかも数日前から、「穴開いてんな〜」って思ってたのに知らんぷりしてた。その結果がこのザマである。本当にすいませんでした。
ここでおおっぴらに言うことでもないけど
そもそもわたしは物を失くしやすいタイプの人間だと思う。
携帯、財布、定期入れ、キーケース、何回失くしたかわかんない。店やトイレに置き去りにすることもよくある。
家でも職場でも、物の置く場所を決めないであっちこっちに置くのでよく紛失する。
携帯どこ置いたっけ、、、時計どこで外したっけ、、、で探してる人生ロスタイムえぐい。ピアスなんて2つ揃ってるやついっこもない。ぜんぶ片っぽどっかやった。
のにもかかわらず一向に治らないのである。学習能力のない大人…………
てなかんじでよく貴重品失くすマンのわたしだけど、日本はマジ平和なのでだいたい届いてるパターンがほとんど。すごいよね。ほんとうに、見つからなかったことが一度もないかもしれない。「わたしの普段の行いが〜」とか言うけどマジでただ日本人いいヤツすぎるだけだと思う。ありがとうね。
でも日本人いいヤツすぎた結果、貴重品落としても焦らない学習能力ゼロの大人完成してるからどうなんだろうね。
話もどすけど、ようするにカギ落としたこの日も、どうせ見つかると思ってあんま焦んなかったってことだよ。
.
翌朝まず駅に行ったけど届いてないと言われたので、交番に行くことにした。
べつに悪いことしたわけじゃないけど、交番入るのってドキドキするよね。
「すみません、カギを落としたかもしれなくて、届いているか確認したいのですが……」
ソロソロと入った交番の中には3人のお巡りさんがいた。まあまあイカつめの衆である。
たぶんその中でいちばん先輩っぽいジャガイモみたいなおまわりが、「ここに記入してね」 と紛失届のような書類を用意してくれた。いつ?どのへんで失くしたの?と懇切丁寧に聞かれる。ジャガイモはいちばん強そうだけど優しい。
さいごに、「カギだけ?」 と聞かれたので、「カギ5本と、キーホルダーが5個ついてます。むき出しです。」 と答えて、その旨を紙に記入した。
そしたらわたしの向かいに座ってたおそらくわたしより年下のおまわりがパソコンを広げてパチパチし始めた。たぶん落し物の写真データがあって、その中から該当しそうな物を探してくれているのだろう。
どうかありますように……
しばらくすると年下のおまわりが 「ついてるキーホルダーはどんなキーホルダーですか?」 と不審そうな顔で聞いてきた。
きっと貴重品の紛失物は重要プライバシーだからめちゃくちゃ厳重なんだね。なんかすごい疑ってかかってくる。ルールなのはわかるけどそんな顔しないでほしい。嘘なんかついてない。
「どんな……? ア、アニメの……アニメのキャラとかのキーホルダーです……」
「アニメ?なんのアニメ?」
「なっ…なんのとは……?」
こっ ここでおまえに推しキャラを説明しろってんでい!!??驚きすぎて江戸っ子になっちまったなあ!!!!
なんと「初対面の知らねえ男に推しキャラを説明する」というまったく想定外の試練が立ちはだかったのである。
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茶色い猫はヒグチユウコさんのグッズ。
真ん中の赤いのは我らがモンマスティーのキーホルダー。
あとの3つは 人生狂わされるくらいハマった「ロシャオヘイセンキ」という大好きなアニメのキャラなんだけど、わたしはなんと劇場に7回も観に行った挙句に 気がおかしくなったのかDVDを2枚買ってしまって本当に本当にいい作品だから全人類みてほs(文字数)
閑話休題。
もちろん大好きなアニメのキャラクターです。だけどこんなとこで初対面の年下に推しキャラを説明しろって? サブウェイにも行けないわたしが?
ぜったいにイヤだ恥ずかしいやりたくない……
大丈夫、キーホルダーは5本ある。
左の3本はまだ説明しやすい。
「茶色い猫が仁王立ちしてるやつと」
「うん」
「まっくろくろすけみたいなちいこい丸いヤツ」
「はい」
「あと、なんかドリンクのミニチュアみたいなやつついてます」
「あ〜はいはい」
年下はパソコンを見ながら、これね〜と頷いた。
どうやら該当する写真を見つけたようだ。
わァよかった〜〜\(^o^)/!届いてた\(^o^)/!ほらね〜!ありがとうにっぽん人!
「で、あとは?」
…… あとは?? だと??
いや絶対それ。それだって。アンタがいま見てるパソコンに映ってるそのカギだよ!!!
ここまで合っててどう考えても絶対それじゃん。おんなじキーホルダーついてるカギ届いてんのか?んなわけないよなぁ兄ちゃん。これ以上聞く必要は?ないね〜〜〜!!??
頭の中でめいいっぱい文句をぶつけるも、すぐに答えることができない。マジで嫌すぎる。
どうしよう逃げようかなもう
「……あとは、アニメのキャラのキーホルダーです……」
「どんなキャラ?」
クッソ、、、この質問に戻ってきてしまった、、しつこい、、もう恥を捨てて言うしかない、、、、
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「あの…白いふわふわの髪で耳が生えてて…お魚をくわえてて、 かわいい。」
「あ〜はいはい あるね(笑) あとは?」
… オイいま笑ったな????
おまえが言えって言ったんだろ!!!
笑われた。マスクの下が明らかに笑っている。年下に笑われた……だから言いたくなかったんだ……
しかもここまで言ったのにまだ足りないんだ?もうひとこえ!みたいなその話し方やめろ。
強欲だな年下。なめんなよ?おまえのことはあんまり好きじゃないわ。
怒りと羞恥で目を合わせることができなかったがわたしは意を決して言った。
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「青くて長い髪の、お肉を持った男のひとです……うゥ」
「ああ絶対これですね(笑)(笑)(笑)」
… こいつマジぶっ飛ばそうかな
だから〜 それじゃん!!!どう考えても!!
質問3つ前からそれじゃんよ(;_;)!!!
融通きかね〜〜〜なぁ 年下ァ!!!!
イカついおまわり3人に囲まれながら推しキャラの特徴を説明する という羞恥にまみれたあの時間は果たして何プレイだったのか。思い出しても結構恥ずかしいし、あの年下ッッ ゆるさないッッ
だけどわたしは年上なので取り乱さずに我慢して待っていたら、無事確認がとれて警察署に届いていると言うので、そのまま警察署に引き取りに行くことにした。
「警察署の場所わかる?」「駅から歩いて5分くらいだからね」 とジャガイモが地図を広げて教えてくれた。ジャガイモは優しいから好きだ。こんどロシャオヘイセンキのDVDをプレゼントしようと思った。
でも警察署まで歩いてみたら15分くらいあった。意地悪されたかもしれない。DVDをプレゼントするのはやめた。
.
警察署の紛失物の窓口で待っていたら、先にいたヤンキーめの兄ちゃんもカギを失くしていたみたいで、スヌーピーのぬいぐるみがついたカギを返してもらってた。
あのトッポい兄ちゃんも 交番で 「スヌーピーのぬいぐるみです」と説明したのだろうか。
うける。かわいいね。
でもスヌーピー、おまえは「スヌーピーです」と言えば通じるのか。なんて説明しやすいキャラクターなんだ。
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ロシャオヘイセンキを好きになったことを初めて後悔した日だった。
つぎわたしがカギ落としても
「シャオヘイとムゲンさま」って言えば世界中通じるようにちゃんと全員観といてよ。アマプラでみれます。