わたしの履歴書(3)好きなことなら努力も楽し
会社情報
業 種:教育施設(公立ミュージアム)
職 種:受付・案内・物品販売スタッフ
規 模:7名
在籍期間:1年間(期間限定)
経緯
システム開発の根本が理解できず、新卒で2年勤めた会社を辞めました。今度は心の底から「分かる」と実感できる仕事をみつけようと思ったので、転職先は決まっていません。実家住まいはありがたいものです。
初めての転職活動
そもそも仕事をしながら転職先を見つけるという、みなさんが当たり前にできることが、私にはできません。だから就職活動も転職活動も苦手。うまく天秤にかけて、よりよい会社に入るという器用さがなく、転職を考えたらまず辞める。辞めてからおもむろに次を探す。不器用というのか、融通がきかないというのか、こと仕事に関しては両立が苦手です。それは今も同様で、性質は変わらないものだなとつくづく感じます。
さて、どんな仕事をしよう。そんなある日、市の広報誌に公立ミュージアムのスタッフ募集の広告を見つけました。おお、これはいいかもしれない。学生の頃から展覧会に足を運び、チケットの半券を貼った横に感想をメモした「展覧会ノート」を何冊も作っていました。そうだこの仕事なら、十分な理解の上でできるはず。そして応募した時点から、私はこの仕事をするだろう、という確信めいたものがありました。
それが「呼ばれる」とか「引き寄せる」ということなのでしょうか。情報は偶然というより、必然として入ってきます。そしてその情報には、すんなり乗ったほうがいい。やれ時給や休みがどうとか、頭で考えてから判断すると、ろくなことはない。これは経験上、自信を持って言えることです。
・・・と分かっているはずなのに、考えすぎて失敗してしまうこともたびたびなので、自戒としてここに記しておきましょう。
無事に転職、しかし・・・
さあ、カッコいいユニフォームを着て、ミュージアムデビューです。キャビンアテンダントが、憧れの仕事第1位だったころのこと。ミュージアムスタッフというよりも、「案内のおねえさん」とでも言ったほうが、しっくりくるかもしれません。倍率は10倍以上だったそうなのですが、自慢の「展覧会ノート」を携えて、苦手な面接を乗り切ることができました。好きなことや興味のあることなら、ちゃんと伝えられるものですね。納得です。
仕事内容は、チケットの販売、ミュージアムショップでの物品販売、展示解説。なかでも展示解説が好きでした。お客様と一緒に展示物を見て回りながら解説をする常設展、スライド解説を行う特別展。
展示物について分からないことがあれば調べたり、分かりやすい解説文を作って練習したり。そんな努力はしましたが、興味のあることに関する努力は苦にならない。お客様とのやり取りも楽しく、やりがいがありました。特別展ごとに行われる学芸員のレクチャーも興味深く、私はこういう仕事がしたかったんだと、ようやく理解したのです。
予期せぬこともいろいろあって、おもしろく充実した毎日でした。販売中の図録全種類を購入されたお客様のおかげで、売上最高額をたたき出したこと、取材が入ってテレビに映ったこと、お忍びで来館した有名タレントにこっそり握手してもらったこと、開館前の静かなミュージアムでゆっくり鑑賞できたこと。閉館時間が決まっているため残業もなく、混み合う週末も激務ではありません。緩やかなペースは私に合う。このままずっと、この仕事を続けることができればいいのに。しかし、この仕事の唯一の難点は、1年限定ということでした。
「分かる」ことをしたいと願って選んだ仕事。でもどんな仕事でも、分からないことは出てきます。ただ好きなことなら、「分かる」ための努力は苦にならないということを、身をもって知りました。
そして姉妹ミュージアムの学芸員補助の仕事を運よく紹介してもらい、ミュージアムでまた働けることを楽しみに、着慣れたユニフォームを脱いだのです。