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ゲームコンテストで結構善戦した作品を制作した時に工夫したこと シナリオ編
最近アマチュアゲーム制作仲間の相互フォロワーさんから、以下ゲームデザインに関するツイートが流れてきました。
かびによるRPGのゲームデザイン的な話
— かび (@KaBi_TaKu) April 8, 2020
(CSツクール制作前提)
8057文字を添削せず書き殴ったのでとっ散らかってます
結構な批判混じりの文章です、心の弱い方回れ右してください
無名ツクラーの戯言です。反論はご自由に
けど、もし誰かの気付きや助けになれたなら嬉しいです
↓画像はリプに続く pic.twitter.com/FlUqDMCOIq
このツイートを読んで、いろいろな気付きや反省点がありました。
今も僕は趣味でゲーム制作してるのですが、今一度棚卸的な意味合いで、3年前コンテスト作品を制作したときに僕がどんな工夫をしていたのかを書き記します。
それなりに長文なので、シナリオ関連とバトル関連で記事を分けます。今回はシナリオ関連の記事です。
ゲームコンテスト概要
3年前に開催された賞金付き(最高額100万円)ゲームコンテスト。
ニンテンドー3DS用のRPG制作ツール「RPGツクールフェス」で制作したゲームのコンテストでした。
どんな作品を作った?
「バグハンター2」という、バグ退治がテーマのRPGです。
「スパゲッティコード」や「グローバル変数」などが敵として登場し、それらを「カプセル化」や「MVC」などの技を駆使して戦う内容となっております。
……はいもう何のことか分かりませんね。これらはプログラミング関係の用語でして、ある種プログラマでなければ分からないような超絶マニアックな作風なのです。
普通RPGといえば、ドラクエに代表されるような剣と魔法の中世ファンタジーで、コンテスト作品も中世ファンタジーを舞台としたものが数多く投稿されていました。
そんな中での、明らかに客層が限定されたマニアック路線。入賞どころか、そもそも手にとって遊んでくれるかも危うい、無謀だと僕自身感じつつ投稿した作品でした。
結果はどうだった?
コンテストの評価方法は、評価ランキングとダウンロード数ランキングで第1選考が決まります。ツクールフェスは作品を遊んでくれたユーザーさんが評価点を投稿できる仕組みで、評価点とダウンロード数の上位20位が選考され、更にその中から10作品が入賞候補として最終選考され、その中から審査員により入賞作品が決まる、という仕組みです。
さて、私の作品はどうだったかというと…
全898作品中
評価ランキング:56位
ダウンロード数ランキング:74位
意外や意外。
入賞こそ叶いませんでしたが、マニアックな作風でかなり善戦したと思います(※しばらくは20~40位で推移していた時期もあった)。
そして感想も沢山頂きました。これは一生の宝物です。
この結果が得られるにあたり、アマチュアながらも僕自身いろいろ勉強したり試行錯誤したので、以下に記していきます。
越えるべき数々のハードル
ゲームコンテストで上位に食い込んだり入賞候補となるには、越えなければならない数々のハードルがあります。ただ作品が面白ければ良いというワケではありません。
まず作品を完成させること自体が大変です。世界観を設定したり、シナリオを書いたり、マップを実装したり、とにかくやることが膨大で、制作時間が数百時間の作品はザラです。
折角作品を完成させてもコンテストの投稿作品数は膨大で、上述したように898作品。この膨大な中からユーザーさんに手に取ってもらわねばなりません。
また、折角ダウンロードされても、エンディングまで完走してもらうのが大変です。飽きさせない工夫が必要です。
……などなど、他にも様々なハードルあり、苦悶の道です。
工夫1:高校のゲーム制作部を舞台に設定
膨大な作品の中から手にとってもらうための工夫です。
バグハンター2はバグ退治がテーマ。「プログラミングネタのマニアック路線」という、そもそも作風自体が抱える大きな課題がありました。
「バグハンター2」のタイトルにあるように本作は2作品目。こちらが元祖バグハンターです。
元祖バグハンターはバグ退治するだけの内容。「分かる人にだけ分かればよい」的なある種ユーザーを突き放した作りで、主人公たちも喋らず、無味乾燥なものでした。「元祖と同じ作りでは遊んでもらえない」課題感がありました。
どこかのネット記事によると、プレイヤーの主要年齢層は15~19歳。この年頃の人が最初にプログラミングに出会うキッカケは、おそらくゲーム制作だろうと仮説を立てました(僕自身もそうでした)。このコンテスト自体がゲーム制作ツール「RPGツクール」によるもの、というのも相まって、とある高校のゲーム制作部を舞台にしました。
そして「バグサーチャー」と呼ばれるバグ可視化装置を使ってバグ退治していく、というシナリオにしました。
プレイヤーとプログラミング、非常に距離感のある関係同士を近づける工夫です。
工夫2:すぐバトルを楽しめるようにした
ゲームを投げさせないための工夫です。
「ゲーム開始から5分以内に面白さを伝えられないと、プレイヤーはつまらないと感じ、ゲームを投げてしまう。最初の5分が勝負。」
過去に視聴したアマチュアゲームのレビュー動画でこのような指摘がありました。
バグハンター2は制作当初、スタート地点は主人公の教室で、舞台となるゲーム制作部の部室とかなり距離が離れていました。制作段階のものをテストプレイしてもらったとき、「どこに行ったらいいのか分からない」とプレイヤーが迷っていました。
そこで思い切ってスタート地点をゲーム制作部の目の前に変更し、即入部!という迷わせない流れにしました。
入部直後の各部員紹介のやり取りも冗長と感じ、必要最低限のテキストだけに絞って他を削り、時間的にすぐバトルに突入できるようにしました。
折角書いたテキストを削るのは結構覚悟が要りましたが、「テキストが多少少なくてもプレイヤー側で想像を膨らませて脳内補完するから大丈夫だよ」と、過去に元祖バグハンターをプレイされた方から頂いた助言が、テキスト最適化の助けになりました。
工夫3:1話あたりのプレイ時間を20分程度に設定
飽きさせないための工夫です。
人間の集中力の持続時間は約15分といわれています。
ダラダラ話が長く続くと終わりが見えず、プレイヤーにとってどこで頑張ったり身構えたりすればいいのか困惑するのでは、という課題感がありました。
そこで、全8話構成、1話完結型のオムニバス形式シナリオにしました。アニメや、特に戦隊シリーズ(1話ごとに敵怪人倒して終わり)でよくあるタイプですね。
そして上述の集中力の持続時間を意識し、1話ごとの尺は、約20分ほどでクリアできるよう、シナリオテキストやバトルの分量を調整しました。
工夫4:ゴールを明確に伝えた
迷わせない工夫です。
飽きさせないためには、何をやっていいのか分からない時間を作らず、すぐ次の面白さを伝える必要があります。
そこで、都度ゴールを設け、この画像のように大きなフォントでバシッとゴールを明確に伝えるようにしました。また、よりモチベが湧くよう達成報酬も付与しました。
工夫5:各主要キャラのスポット回を設けた
「別にこの人いなくてもよくね?いなくても話が成立するし…」と印象を持たれるのは非常に残念です。
これを解決する手段として、例えば戦隊シリーズでは、ブルーが主人公の話やピンクが主人公となる話など、レッド以外の各メンバーにスポットが当たる回が恒例としてあります。これにより各メンバーの魅力や、登場人物としての必然性を高めています。
これを参考にして、全8話の内少なくとも1話ずつ、各主要キャラそれぞれにスポットが当たるシナリオ構成にしました。
そして単にバグ退治ではなく、主要キャラそれぞれが抱える苦悩(いじめ、毒親、貧困)と結びつけ、バグ退治を通じて彼らの苦悩が解消されるシナリオにまとめました。
工夫6:シナリオを全て1本に繋げた
話が散漫になったり、上記工夫5と同様に「いてもいなくてもいい」話があると、読み手が迷ったり、面白さが半減します。
#ゲームの勉強になる本 twitterで有名な手塚治虫氏の長編ストーリーの図説。これに倣って #ツクールフェス では作品テーマを絶対に外さないように心掛けた。写真2枚目は拙作「バグハンター2」にてシナリオ検討時に、手塚氏の教えに沿って流れを図式化したもの。 pic.twitter.com/KvSHyy1iz4
— ミノ駆動 (@MinoDriven) April 9, 2017
この木の枝葉の図説に倣い、作品のテーマから外れないよう、全ての話が無駄にならないように、全8話それぞれの流れが1本に辿り着くようシナリオを書きました。
(※ちなみにバグハンター2のプレイ経験のある方はご存知だと思いますが、バグとの全ての戦いが、最終話の絶望的な問題を解決するキッカケに繋がる、というエピソードとしても書き上げました)
工夫7:チャンクを意識した
コンテストの投稿作品数は膨大であり、新しい作品に触れるたびにプレイヤーは都度作品の世界観を「学習する」ことが求められます。
中世ファンタジーが舞台ならば、ドラクエなどの有名作品により「剣と魔法の世界」であることを事前知識として持っているプレイヤーが多いことでしょう。
ところがこのバグハンター2はプログラミングをネタにしており、事前知識のない概念が数多く登場します。従って、プログラミングを知らなくてもなるべく話の流れが理解できるよう、平易な言葉を選んでシナリオを書く必要がありました。
しかしそれだけでは不十分です。
人は一度に沢山のことを覚えられません。未知の概念を一度にワッと流し込まれると、プレイヤーは多くの情報を受け止めきれず、情報整理が困難になり、混乱します。そして世界観に付いて行けなくなります。
そこで意識したのが下記の「チャンク」と呼ばれる考え方です。
この話によると、人間が一度に認識可能な概念の個数は4±1個。
つまり、プレイヤーに未知の概念を学習させるには、この個数を超えないような配慮が要るということです。
プレイヤーが情報量に圧倒されないように、ステップを踏んで世界観を理解していけるように、このチャンクの個数が守れているかシナリオテキストを何度もチェックしました。
そして情報量が多そうな箇所は、小分けにしたり、まとめて説明せず分散させたり、後で説明するよう順番を変えたりしてシナリオテキストの最適化を図りました。
工夫8:参考にした書籍
僕自身シナリオテキストを書くのは初めてだったので、下記2冊を参考にしました。
「ジョジョ」シリーズの著者、荒木飛呂彦氏の作品制作アプローチです。
キャラクターの性格を作り込むための身上調査書など参考になりました。
こちらはゲームシナリオを書く上での基本ノウハウがおさえられている上、「やってはいけないのについ陥りがちなこと」、いわゆるアンチパターンも記述が豊富で、シナリオチェックの役に立ちました。
まとめ
以上、ゲームシナリオをデザインするにあたり、事前にノウハウを調査したり、学んだり、工夫する点が様々ありました。
これらの工夫が全て功を奏したかどうかは定性定量的な観点から評価したわけではないですが、少なくとも上手く働いた点はあったのではと思います。マニアック路線の作風ですから、なおさらそう感じざるを得ません。
次回はバトル関連で工夫したことについて記事を書きます。