窓ぎわのトットちゃんから始まった学校づくり
ベストセラーでもある黒柳徹子さんの「窓ぎわのトットちゃん」が刊行されて40周年だそうです。それを受けて、共同通信社が「トットちゃんに影響を受けて、トモエ学園のような学校を創った人がいないか」探したところ、影響を受けた人はたくさんいるけれども、実際に学校まで創った人はなかなか見つからなかったと言って、私のところに連絡があり、その影響を受けて学校を創った人として、私が取材を受けることになりました。
今回は、私がなぜ「窓ぎわのトットちゃん」に憧れたのか、何を考えて学校を立ち上げたのかをお伝えできればと思います。(動画はこちら)
https://www.youtube.com/watch?v=tD-ETdPFgZk
「窓ぎわのトットちゃん」に出会ったのは、小学校3年生のときでした。高校生のいとこに遊んでもらいたくて、いとこの家に遊びに行ったけど、いとこが不在で、「本でも読んで待っていよう…」と思って、たまたま選んだのが「窓ぎわのトットちゃん」でした。
どうして、その本を選んだのかというと、挿絵がいわさきちひろさんだったので、子どもでも読めるんじゃないかと思ったからでした。当時は、いわさきちひろさんという名前は知りませんでしたが、絵本でなじみのある絵で、「この絵が描かれた本なら、子どもでも読めるかも?」と思ったのです。
結局、いとこは帰ってこず、私が家に帰ろうとしたとき、伯母が「その本、そこまで読んだんやから持って帰ったら。あげるわ」と言って、本をくれたのです。
家に帰り、読み進めるうちに、私は、黒柳さんが通うことになった「変わった学校:トモエ学園」にドンドン魅了されていきました。子どもであるトットちゃんを対等な人として認めてくれる校長先生がいて、電車の教室で、自分の好きな科目から勉強してもいいなんて!お弁当の時間も変わっていて、「海のものと山のもの」をお弁当に入れてくることになっていて、もしも入ってなければ、校長先生の奥さんが足らないおかずを足してくれる!なんて不思議で、なんて変わってて、なんておもしろそうなんだろう~!
感激した私は、「トモエ学園みたいな学校に行きたい!」と両親に懇願しましたが、40年ぐらい前の田舎で、そんな学校が見つかるはずもなく、その思いが叶うことはなく、当時の私にできたことは、「窓ぎわのトットちゃん」を暗記するぐらい何回も読むことぐらいでした。
なぜ、そんなにいいと思ったのか考えてみると、一つは、当時の授業が退屈だったことがあげられます。本好きだったこともあり、とくに国語の授業は、私にはまったく合っていなかったので、自分で自分の学びを決められることが、とても魅力的に思えました。
もう一つは、祖母と母の影響から、「子どもであっても、対等な一人の人間として見て、接してほしい」という思いと、「自分のことは、人から決められるのではなく、自分で考えて自分で決めたい」という思いが、人一倍強い子どもだったので、それがトモエ学園で大切にされ保障されていることに、大きな感動と衝撃を受けたのだと思います。
大学を卒業して公立学校の教員として働いていたとき、学校の制度や体制に対して、いろんな違和感をもつようになりました。そんなとき、思い浮かんできたのが「窓ぎわのトットちゃんみたいな学校」でした。「自分は通うことはできなかったけど、創ることはできるんじゃないか…」次第にそんなことを考えるようになり、公立学校を退職。紆余曲折を経て、約20年前に、今の仲間たちに出会い、一緒に学校を立ち上げることにしました。
その学校で大切にしたことは、「子どもであっても、対等な一人の人間として見て、接する」ということと、「子どもが、人から決められるのではなく、自分自身で考えて学ぶ」ということでした。それは、子どもだった私が「窓ぎわのトットちゃん」と出会い、確信するようになった私自身の強い願望だったのです。
「子どもであっても、対等な一人の人間として見て、接してほしい」ということと、「子どもであっても、人から決められるのではなく、自分のことは自分で決めたい」というのは、子どもだった私の強い願望でしたが、よく考えれば、それは私個人の願望ではなく、子どもがもつ、もっと言えば、人がもつ権利だと思います。
人は、どんな人であっても、どんな状態であっても、対等です。そして、どんな人であっても、どんな状態であっても、たとえ自分のことを自分で決められない状態であったとしても、その権利をもっていて、そのことが尊重されなければなりません。
それゆえ、子どもたちに接するときや、子どもたちと話し合って何かを決めて行くときに、子どもであっても、対等な一人の人間として見て、接することと、大人が勝手に決められるのではなく、まわりのアドバイスを受けながらも、子ども自分自身が考えて、行動することを大切にしていくことが大切だと思います。
【2校目設立のお願い】
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私が「窓ぎわのトットちゃんみたいな学校」を夢見て創った、箕面こどもの森学園。ここ数年、定員いっぱいの状況が続き、約70名の方が欠員待ちをされています。
そのため、一人でもおおくの人に、豊かな子ども時代をすごしてもらうために、2校目の設立を目指すことになりました。
「民主的に生きる人を育むこと」を理念とする市民が創る小さなオルタナティブスクールが、大きな資本を使うのではなく、みなさん一人ひとりの想いを寄せていただくことで、学校法人になることができれば、日本の教育を変えていくことにつながると思います。
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