「ライオンの隠れ家」第1話 尖っていない柳楽優弥にギルバート・グレイプをみた
この秋考察して見たいドラマ、「ライオンの隠れ家」が始まった。考察できる要素はまだ少ないながら、穏やかなのにヒリヒリする1話の感想を少々書きたい。
1.sideヒューマン
ついにきた、巻き込まれ系柳楽優弥。普通の公務員柳楽優弥。どこも尖っていない柳楽優弥。
「ライオンの隠れ家」で、柳楽優弥が演じる主人公の小森洸人は、己の感情をグッと押し込めて、いいお兄ちゃんであろうとする一見常識人。行く先々で頼みごとをされてしまい、目的地になかなか辿りつけなそうなところは、笑いなしの春田創一(おっさんずラブ)が透けて見える。
坂東龍汰が演じる弟の小森美路人は、アーティストであり自閉スペクトラム症。アーティストのGAKUさんや石村嘉成さんを彷彿させる設定。
坂東さんが、違和感なく演じている。
みっくんの絵は太田宏介さん
ルーチンを大切にする「美路人」に合わせた凪の生活は、穏やかでありながら変化がない。
けれど、この穏やかさはとても脆いのだと、みている方は何となく感じ取る。だって、洸人のなかで、何かがパンパンに張り詰めていて、ちょっと突いただけで破裂してしまいそうだから。
それを、感じさせる抑えに抑えた柳楽優弥の演技がいい。
少年洸人と成人洸人との間に、感情のギャップを感じないのもなかなかにすごい。少年洸人役の子役さん、お見事。
兄弟が住んでいる家は、高台にある。
家と家の間の細い階段を登り切った先の棲家は、まるでデッドエンドの閉塞感。高台なのだから、眼前に広がる海が見渡せるはずなのに…。
のどかで美しい景色とは裏腹に、息苦しい。
逆に、
秘密を守り大切なものを保護するのにはうってつけのデッドエンドだったりもする。
これは、演出の妙。
兄弟がどんな性格で、今どう生活を営んでいるのか、これまでどう生きてきたのかが、1話で過不足なく説明。モノローグに頼らず、必要なエピソードだけで彼らを説明する。なかなかストイックな脚本。
そんな二人の前に謎の少年、ライオンが現れることで、一気にヒューマンからサスペンスに行くわけなのだが…。
ここまで、おふざけいっさいなし。大丈夫か、徳尾浩司!
2.sideミステリー
1話では、まずはミステリーの種がそこここに散りばめられた感じで、何がどう事件化していくのかはこれから。
少年ライオンがなんらかの事件の重要な鍵を握っている、というところで、おそらく洸人と美路人が事件に巻き込まれていく展開。
それが、どんな事件かはまだわからないのだけれど、記者である工藤楓(桜井ユキ)も、何かを探っているわけだから、それなりに大きなヤマなのだろう。
ライオンと洸人たちの異母姉 愛生(尾野真千子)は、橘祥吾(向井理)によって捜索願いが出される。この橘が、橘都市建設の次男という設定になっているから、山梨県内の開発をめぐる何ちゃらかんちゃら…とか、そういう方向に行くのか?
登場人物が何者かは、秘められることなく公式相関図に掲載されている。
X(岡山天音)だけが、謎。さて、敵か味方か?
考察できる材料は少ないから、雑感をつらつらと。
・愛生はみっくんが「ライオン」が好きなことを知った上で、少年にあえてライオンと名乗らせているのか?(本名ではないはず)
・ライオンを車で小森家まで連れてきたのは、X?ラインを送っているのもX
スマホを立ち上げた途端、メッセージを送ってくるのが怖すぎる…
・ライオンのメモに、愛生からの指示が書かれていそう
・みっくんの特別な能力 塗装の塗料の識別番号を全て覚えていて、塗装の色番号を当てることーは、後に事件解決の鍵になりそう
・橋の上の靴は、自殺の偽装
・洸人は、ライオンの荷物を調べたりしないし、母親のこと聞いたりもしない。この辺、洸人の他者との距離の取り方がよくわかる。
・みっくん、パニックになった時に、フラッシュバックで「お父さんとお母さんがいません」と言っていたので、両親は同時に亡くなったのか
・森優作が、NPOのアーティスト役で出ている(嬉しい)
・桜井ユキ✖️柿澤勇人のタッグ再び ”真犯人フラグ”の何やっとんねんコンビが、お久しぶりに復活。涼子様から、通常運転に戻った桜井ユキに狂気を求めてしまう自分がいるw
・橘祥吾は、ライオンの父なのか?いい人そうに見えて実は悪い人…と思わせて、本当はいい人…という展開を求む
・祥吾は次男、とわざわざ相関図に書くあたり…、のちに性格の悪そうな一族の長男や両親が出てきそうではある
・愛生は、橘家の長男の嫁という可能性もあるか?
・自分の作ったあんかけ焼きそばに、マヨネーズ大量投入して食べる少年を、優しく受け入れる寅じいの懐の深さよ
・ライオン(佐藤大空)の演技達者ぶりに驚く。「すぺしゃるうんこ〜」からの成長著しい吾郎(私にとってはちずの息子吾郎である)
お兄ちゃんは、ライオンの話はお腹いっぱいです。
洸人は、みっくんにさえ、距離を置いているのだろう…と思わされる。みっくんは動物のことが大好きなのに、洸人はうみねこのことを知らない。
さて、ライオンと事件との関わりの中で、洸人がどう変わって行くのかが、このストーリーの見どころなのかもしれないと思った、第1話。
”ギルバート・グレイプ”を思い浮かべたのは、私だけだろうか。
マイベストムービーなんだよ、”ギルバート・グレイプ”
(主演はこれまた全く尖っていないジョニー・デップ、弟役はブレイク前夜のレオナルド・ディカプリオ)
最終話、洸人とともに、開放感とカタルシスを味わえるような展開になっていることを楽しみにしている。
期待の秋ドラマ
「ギルバート・グレイプ」名作なのでライオン好きの方はぜひ見てほしい!
レオ様が天使!ジョニデの抑えた演技が素晴らしい!