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すごく良い人だったけど付き合えなかった人の話

私は結婚相談所に入って一番最初に出会った今の旦那さんと結婚したが、実は相談所に入る前まで数ヶ月に一度くらいの頻度で会っていた男性がいた。

とにかく丁寧で優しい人だったから、その人のことを「優男さん」と書いてみる。

優男さんとのそもそもの出会いは少し、いやだいぶ変わっていた。



きっかけは、数年前に突然大学の同級生から連絡が来て、久々に二人で会うことになったところから始まる。
珍しい連絡だなと思っていたけど、留学も一緒だった子だし、数年振りに会えることを嬉しく思った。

そうして数年振りに同級生と会い、ご飯を食べながら昔話をしていると、急にその同級生から「これから友達がやっているイベントに行くんだけど一緒に行かない?」と言われた。
突然?と思いつつも、とりあえずで連れられていったイベントにて、ポジティブに夢を語る若者達が集まるやや異様な雰囲気を見て、妙に勘の良い私は “あ、これマルチだ!” と気がついてしまった。

最初でこそ同級生に裏切られたことに関して悲しさや怒りの気持ちはあった。けど、中々マルチの集団と接する機会なんてないなと思ったことと、マルチにハマる人の心理を知りたいと思った私は(当時周りからやめとけと言われたが好奇心が勝って)しばらく騙されたフリをして潜入してみた

そんなこんなでマルチの会に誘われるようになってから3回目くらいの時、突然その同級生が知らない男性を連れて来た。その人が「優男さん」だった。どうやら二人はカラオケのイベントか何かで出会ったらしい。

ちなみにこれは余談ではあるけど、マルチ集団の人たちはよくマッチングアプリや街コン、友達作りのサークルに参加して最初は一般人のふりをして接する。そしてその場所で少しでも仲良くなった人をマルチのイベントに誘う。
優男さんも、マルチとは知らずによくわからずとりあえず初めてイベントに連れてこられた人だった。

その時のイベントは、バーベキューだった。河川敷でバーベキューをしながら、私は(この人たちのほとんどがマルチ繋がりなのか…それぞれどういう関係性なんだろうか…)と観察をしていた。
私の同級生と彼女のマルチ仲間からは、マルチ勧誘ならではの以下のような話題をされた。

「みんりちゃんは夢ってある?」
「今の仕事のままずっと暮らしたいと思う?」
「生活に不満とかない?」

ちなみに実は、ここまでの段階でもまだ相手側は一切自分たちがマルチ集団であることを開示していない。彼らは最初でこそ自分たちがマルチだと明かさずに、数ヶ月かけてじっくりと人間関係を構築して、じわじわと仲間として認識させるように仕向けるのだ。

けど私はこのバーベキューの2週間前に、紹介したい人がいると同級生から拠点のボスに会わせてもらっていたので、そのボスの素性を調べて、マルチが環⚪︎という集団であることまで突き止めてはいた。

マルチの話ばかりになってるけど笑、そんなこんなでガチでマルチ集団に一人潜入した気分でいた私は、あまりのめり込みすぎたくもないなと思いつつ、バーベキューにて同じく知らない集団と接して若干アウェイになっている優男さんと少し話すことになった。

優男さんは私より一つ年上であることと、あとはなんと偶然にも当時の私が住んでいた場所の最寄り駅が一緒だったことを知った。

そこで最寄り駅あるある等の話をしたりして、帰りも同じ駅に帰るので一緒になった。

話せば話すほど優男さんがとても性格が良さそうな人だなと思ったからこそ、こういう純粋で疑いの目を持たない素直な人こそマルチに騙されやすいのかもしれないけど、騙されてほしくないよなぁと考えながら帰ったことを覚えている。

その後も私は何度かマルチのイベントに誘われる度に足を運んでいくうちに、ガチで勧誘されそうになった。

あくまでマルチのことを第三者目線で調べたいだけだった私は、さすがに身の危険を感じて同級生やマルチ集団の人との連絡をブロックして関係を絶った。



その数週間後、年始に突然優男さんから連絡があった。
二人でご飯に行きませんかという連絡だった。

そういえば、優男さんと前回話した時に最寄り駅の近くに美味しいレストランがあると聞いていたこと、そして連絡先を交換してから彼のことはブロックしていなかったなということにその時気がついた。

もしや私が同級生やマルチ集団をブロックしたから、優男さんを介してマルチ側が私の情報を取得しようとしている…?と最初は邪神な考えを持っていた私だった。

けど、それ以上に私はもうマルチを探るのをやめてしまったけど、せめてこの優男さんにはちゃんと彼らはマルチに所属している人間であることと、イベントには危ないから行かない方が良いことを直接話したいと思った。100%善意の心で。
念のため、その時の私は既に引越をしていて最寄りが同じ駅では無くなっていたものの、あえてその情報は伏せながら会うことを了承した。

そうして会う日になった。最初でこそ警戒心を持っていたが、やはり優男さんは優しい良い人だった。
まずレストランに入ってから「イベントに最近行っているか?」という話を私が切り出して、例の私の同級生から時折イベントの連絡来るものの、最近は仕事も忙しく行っていないという優男さんの返答があった。

そして私は意を決して私の同級生たちがマルチ集団であることがわかって連絡を絶ったこと、また、そのマルチ集団に入るとほぼ強制的に周りにマルチのメンバーしかいないシェアハウスに入らされて、残業が無い仕事に転職するよう脅されたあげく、ノルマとして月15万円を支払わないといけない等のこれまで調べてわかった情報について彼に話した。

その話を聞いて最初でこそ優男さんはびっくりしていたが、彼は「もう関わらないようにする」と返答した。やっぱり素直な人だからか、彼女たちが危ない人だとはそれまでまるで思っていなかったようだった。

その後、レストランでご飯を食べてお会計をする時、私は財布を出そうとしたら「いや、お金は僕が払うよ」と言われた。
その時は男女間のよくある会計時のやりとりかなと思ったけど、優男さんは本気で私に一銭もお金を出させなかった。

ちなみにこの日以降も優男さんと何回か会ったのだが、私に財布を出させることは一度も無かった。「僕が全部出すから」が彼の口癖だった。

私がある程度大きい企業で働いていて、給料が平均一般女性の倍以上あるということを彼が知っても、この態度が全く変わらなかったのが今考えるとすごいなと思う。



彼はそこから、数週間に一度のペースで私に連絡をくれるようになった。

私はただ彼をマルチに入る危険から救いたいなと思ったから取った行動が、思いがけず彼の別の感情を進展させたのだった。

ちなみに、その時の私はもうすぐ彼氏いない歴2年目を突入予定の女だった。
日々ワーカホリック気味で残業しまくり、社内は既婚者がほとんどだから出会いはまず無し、かつ当時気になる人もいなかった。

だから歳の近い独身の異性と話ができるのはありがたいことなのかもしれない。そう思って優男さんから誘われてタイミングが合った時にご飯に行き、3回目の食事くらいで優男さんから恋愛を思わせるような言動をされた日の帰り、「優男さんともし付き合ったら?」ということを考えてみた。

私は土日祝休みで、優男さんは不定休だ。ご飯に行こうと彼からの誘いがあっても、彼に突然仕事が入ってダメになることが数回あった。
その度に私は仕方ないと口では言いつつも、向こうから誘ってきたのに直前になって突然予定が無しになるのなら、私も別の予定を入れられたのになと思うこともあった。

あとは正直、本当に私に全く財布を出させない優男さんに対して、あまりそれは良くないことだなと思ってしまっていた。



ある時、優男さんの車で出かけようと誘われて、少しだけ遠出をしたことがある。その時に(本当かよ、わざとじゃないの?と思われるかもしれないけど…)私はガチで財布を忘れた。思いがけず別の鞄に入れっぱなしにしていた。

出かける時にかかるお金は全部自分が払うと言ってくれる人の手前とはいえ、財布を忘れましたはさすがにダメだろと焦っている私に対して、優男さんは「変わらず全部僕が払うし、全然問題ないから大丈夫だよ」と言った。

そして本当に一銭も私は払うことなく、なんなら帰りに有名なケーキ屋に寄って美味しいケーキのお土産まで渡してくれた。今思うと神である。
ケーキもとても美味しかった。



だがしかし!!

ここで問題があって、私は自分が「自立した女」であることにかなり強い誇りを持っている、所謂ちょっとめんどくさい女だったのだ。

私は23区の都心部に住み、一人で満足いく暮らしをしながら、時折友人と遊んで海外も行く生活を、誰にも頼らずに全て自分の金で行うことに対して自信とプライドを持っている女だった。

そんな女が、突然全てのお金を出してあげますよと言われたらどうなるか。

私、パパ活しているみたいだな…

となんだか罪悪感が芽生えたのだ。

別に出せない金額ではない(友人とご飯に行く時は払えているような)金額を、当たり前のように率先して全部払ってくれる一歳上の男性に対して、ありがたいと思い感謝しつつもずっとモヤモヤしていた。

確かに外食はお金がかかるし私は毎月貯金をしたいタイプなので、食費が浮くのはありがたいとは思った。けど、食費が浮くのに喜んでいる時点で優男さんのことをメシモクとして考えてしまっている部分も出て来ているのではないか?と私は自分自身を責めた。

私には彼氏もいないしせっかくの良い人だからと思って、誘われたら了承してご飯に行くことによって、彼に変な期待をさせてしまっている気もするなと自分自身に対しても少し嫌気がさしていたのだ。



そんな折、優男さんと数ヶ月振りに会ったとき、優男さんから遠回しに彼の友人に私との関係性を相談しているという話をされた。

恐らく優男さんは本気で私と関係性を進めようとしていることに気がつき、そろそろ次に会う時くらいには告白されるかもなと感じ取った後、私は改めて考えてみた。

優男さんは高身長で細身、一個上で年齢差もちょうど良いし互いの家の距離も近い、車持ち、家族仲も良さそう。
不定休な仕事と学歴があまり高くない点はネックだけど、それを上回る性格の良さがある。

と一通り考えてから、私はふと考えないようにしようとしていた真実に気がついた。

私、

優男さんの見た目がタイプじゃない。


思えばそこで最初から答えが出ていたような気がする。

例えマルチの集会という珍しい場所で出会ったからと言っても、本当に優男さんに対して好意を持てたならば私もその好意に応えていたはずだ。

好きなタイプだったら、奢ってもらえることに関してもある程度素直に喜べたはずである。

それら細かなことをいちいち理由をつけて気にしていた時点で、私は優男さんを恋愛の枠組みとしては見れなかったのだとわかった。



その後も彼からは誘いがあったものの、互いの仕事のタイミングが合わなかったりして流れた。

その頃、私は親友から婚活を始めたという話を聞いて、思い立って私も婚活をしてみようと結婚相談所に登録して、一人目の人と出会って比較的すぐに付き合うことになった。

すぐに付き合ったのは、自分の中でビビっと来たからだ。そもそも私は自分がこの人が良い!と確実に思える人じゃないと言い寄られても絶対に付き合えないタイプだった。

けど、良いと思えた人がもしいれば自分からアピールする。が、中々そんな人は現れないのでいつも独り身期間が長かった。
そんな私に2年越しの彼氏ができた。

彼氏ができてから数週間後、優男さんから「日が少し空いちゃったけど、⚪︎日ご飯行かない?」という連絡が来た。

私はその時はすっかり優男さんのことを頭から忘れかけていたから、通知が来た瞬間びっくりして、それから、ちゃんと報告の返信をしないとなと思った。

私は、優男さんに「申し訳ないけど彼氏ができました」という連絡をした。

すると、優男さんから「そうなんだね、じゃあ連絡は控えるようにするね」と連絡があった。

そこから現在まで、連絡は一切来ていない。
最初から最後まで本当に優男さんは良い人で、人間ができた人だった。



その後私は彼氏と付き合ってから一年が経った日に結婚した。

自然な出会い(マルチがきっかけだったけど笑)で会った優男さんとは、このまま会い続けていれば付き合えたのかもしれないし、優男さんは私にお金を出させずに尽くし続けてくれたのかもしれない。

けど、私は結婚相談所を通して出会った旦那さんが本当に好きなのでこの出会いで良かったし、今でも幸せな日々を過ごしている。

たまたま私と出会ったばかりに優男さんには申し訳ないことをしたとは思うが、こんな人ができた男性は少なくとも私の周りではそうそういなかったので、今後は詐欺やマルチには引っかかることなく、ぜひ素敵なパートナーが見つかれば良いなと思う。

それに、彼ならば必ず良い人が見つかるはずだ。

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𝕄𝕚𝕟𝕝𝕚 / みんり
最後まで記事を見ていただきありがとうございました!!皆様一人ひとりの素敵な出会いに感謝します☺️💐