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たかが教科書の題材の1つ。でも国語の先生は葛藤していた。

あぁ。素敵な企画。
私も参加したい。
参加させていただきます。

私は国語が苦手な科目だった。
一番勉強したと思うけど、センター試験の模擬試験では、200点満点中100点取れなかった。
選択肢の問題に、一番解答から外れている答えを
選んでしまう。
いつもここで間違えるからと裏をよんだつもりが
また間違えるという悪循環をしてしまう。
「登場人物の気持ちなんて、登場人物に聞かないと本当の答えなんてわかるわけない!」
と大真面目に答えてた人間だ。

読解力はないが記憶力はいいようで、
教科書の作品はいくつか覚えていたりする。
おおきなかぶ、スイマー、馬頭琴が出てくる物語、
あらしのよるに、ごんぎつね、舞姫などなど
古文なら源氏物語や、在原業平のモテモテ伝説とか
(伊勢物語でしたっけ?)
源氏物語は好きなので、現代語訳版を買って、
源氏物語の資料を片手に読むみたいな荒業をしてみたり……

でも一番印象に残っているのはそのどれでもない。
それでいて、物語の内容自体はあまり覚えていない作品である。
それは、夏目漱石のこころである。

確か、教科書に載っていたのは、
先生と呼ばれた男性の遺書の内容の部分。
先生は自殺を図るのだが、その背景にはやはり自殺したKという友人の存在があった。
とかだったかな。

この教材を学ぶ少し前に私の父が亡くなった。
父のことは他で書いているので割愛する。
なぜかそういうタイミングで授業の時に、
“人は亡くなるとお葬式前にこういうことをする”
という内容があったりする。

ずーんと暗くなってしまった私に
国語の先生は授業後様子を見に来てくれた。
高校1年生。まだまだ子どもの私は、
「何で来るんよ!いちいち来ないでよ!」
という言葉を浴びせ、保健室へ逃げ込んだ。
私は我慢していたものが爆発したのか号泣。
国語の先生は私が号泣した本当の理由を
保健の先生から聞かされることとなる。

何日かして、国語の先生に呼び出された。
国語の先生は神妙な面持ちで言った。
「次の授業は、夏目漱石のこころという作品です。
テーマは自殺、ということで、
あなたにとってはきついものかもしれません。」
少し胸騒ぎがした。

国語の先生は続けて言った。
「でもこれは絶対にするべき内容なので、今するか、少し後にするかのどちらかを選んでほしい。

これを聞いた時、なぜそこまでする必要があるのだろうか?と漠然と思っていた。
私は理系のクラスにいた。
文系・理系で勉強をする内容の違いとかありそう。
たまたま自分の学年の理系は1クラスしかないのだから、理系はしない、じゃダメなのだろうか?
と自分勝手な考えも思い浮かんだ。

「正直、なんて答えたらいいかわからない」
が直後の私の答えだった。
母は当時うつ病になってしまい、相談する状況じゃない。妹に相談も違う気がする。事情を知っている人もいるけど、相談したら困るんじゃないか。
教材のする・しないや進め方を一生徒が決める立場でもない。
そういったことを伝えたと思う。

国語の先生は、
「とりあえず何日か考えて答えを出してほしい。
覚えといてほしいのは、
今目の前におるお前が大事だということ。」
といい、その場での話は終わった。

そこから私は担任の先生や保健の先生、
事情を知っている友人などに話を聞いてもらった。
実にいろんな意見が出た。
数日後、私は先生に言った。
「先生が考えていた予定通りのタイミングでお願いします。」
少し後だったとしても辛いことに変わりはない。
乗り越える試練として頑張ろう。
それが私が考えに考えた答えだった。

しんどくなったら声をかけてほしいと言われ、
予定通り授業は行われた。
実際私が授業中に退席したのは1回だけだったが、
肝心の内容はほんの少ししか覚えていない。

正直この企画でどんなお話にしようかと考えるまで、すっかり忘れていた記憶だし、
話の内容もそこまで覚えていないわけだけど、
かけがえのない記憶を引き出したな。と思う。

なぜなら、国語の先生の葛藤が
そこそこの大人になった今わかったから。
特に今目の前におるお前が大事という言葉は、
高校生の頃の私はこの人は何を言ってるのだろう?
と少し照れくさいところもあった。
しかし、それだけ先生が
「ぜひ学んでほしい、
でも生徒がすごく傷ついてしまうかもしれない」
と悩みに悩んだ末に出た言葉だったのかもしれない。
それがわかった時、少し涙が出てきた。

なぜこんな深いテーマが高校の教科書に載っているのか。
どうして国語の先生はこのテーマを強く望んだか。
なぜこのタイトルを夏目漱石は「こころ」にしたのか。
今残っている気持ちはこんなもの。
この企画を通して、最初から読んでみたいなという気持ちが少し出ている。
まだ怖い気持ちもあるけど、また開きたいと思う時の為に現代語訳版(元々現代語か、分かりやすい版)を買っておこうかな。

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