mineuchi_maru

曲を作ったり絵を描いたり小説を書いたりします。

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最近の記事

小説『モールスオーパーツ』第5話「見掛け倒しのプロパティ」※イラスト付き

空中に突然現れた、黒い空洞。 そしてその中から出てきたのは、まるで『悪魔』とでも言わんばかりの装いに身を包んだ、人間に近い何かだった。 俺は「ひっ」という声を漏らすことすらも出来ず、ただ困惑の色を隠しきれなかった。 「え、、、あ、え......」 しかし、まごつく俺をよそ目に、宅野は右手に持った銀色の光線銃のようなものをしっかりと持って、その先の方...グルグルとした模様が集まった先端の部分を例の者に向けた。 「おい、悪魔。突然だが、この銃が見えるな」 突如話しかけ

    • 小説『モールスオーパーツ』第4話「天使集会」※イラスト付き

      連れていかれるがままに、電車に乗り、人混みをかき分け、そして彼女の後ろ姿だけを追った。 辿り着いたのは変わらず人がごった返す都心の地、渋谷だ。 しかし、彼女の目的は渋谷でCDショップに行くことでも、古いハード製品を並べた楽器専門店に行くことでもなかった。 「景文さん」 彼女の名前を呼ぶと、彼女は「え?」とキョトンとした顔を見せた後、髪を耳にかける仕草をしてから俺の目を見た。 「どうしたの?」 余りに素直な質問で、かつ何の濁りもない瞳で、長い青みがかった紺の髪がはらりと

      • 小説『モールスオーパーツ』第3話「放課後のディスティニー」

        梶野秋の一日のルーティンは単純だ。 学校に来る日は大抵、休み時間を机に突っ伏して過ごす。事務連絡を、たまに他の生徒が寄越してくるから、それには応える。 昼休みは、周囲の人間との会話を時たま楽しむ。適当に相槌を打ちながら、「どうせ、引きこもりだと思われてるんだろう」と自分自身にレッテル張りをしてやり切る。 授業中は窓の外の空を見たり、はたまた黒板の板書をしたり、先生のメガネに映る自分が肉眼で見えないか試してみたり。 それでいつの間にか、放課後を迎えているのだ。 それなのに

        • 小説『モールスオーパーツ』第2話「私に着いてきて」※イラスト付き

          高校三年生の梶野秋は、突如として怪しい少女ー景文彩に話しかけられた。 しかし、秋は戸惑うままに彩から逃げてしまった。 何とか遠回りして実家に帰宅すると、流石に母親には怪しまれたが。 「普段と違うルートを散歩していたら帰りが大分遠回りになった」と説明すると、22時過ぎだったこともあって勘当は免れた。 一息ついたのも束の間、自室のベッドに入ると、非現実な出来事が目の前で起きたことに何となく心がザワザワしていて。 でも、明日を迎えることは間違いから、とにかく、目を閉じるしかなかっ

        小説『モールスオーパーツ』第5話「見掛け倒しのプロパティ」※イラスト付き

          小説『モールスオーパーツ』第1話「光が見える」※イラスト付き

          現在、高校生の俺......梶野秋(かじのあき)は、今日も学校に行かなかった。 引きこもりがちな俺は、留年しない程度に学校には行っているものの、一方でそのギリギリのラインの日数しか登校できていない。 だが、そんな状況を憂うこともなく、ただ目下にある傘の石突きを、右脚のつま先で蹴った。 「君。今日は雨降らなかったから、荷物になってしまったよ」 夜だし、傘に話しかけても不審者扱いされない。 いや、そんなことは無いが......ともかく、話し相手すら見つからない状況を無理に打破

          小説『モールスオーパーツ』第1話「光が見える」※イラスト付き