『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』は、ファンの気持を受け止めて、愛として送り返す最高のプレゼント
わたしにとって初めてのスパイダーマンは、トビー・マグワイアでした。
2002年から始まる、サム・ライミ監督の3部作からスタートしています。
サム・ライミ版『スパイダーマン』
スパイダーマン/ピーター・パーカ(トビー・マグワイア)
MJ(キルスティン・ダンスト)
ハリー・オズボーン(ジェームス・フランコ)
『スパイダーマン』(2002)
『スパイダーマン2』(2004)
『スパイダーマン3』(2007)
この三部作が好きでした。
まず、キルスティン・ダンストが好きなので、彼女がヒロインを演じるということで観たいという気持ちが湧いてきます。
サム・ライミ版でイイなと思ったポイントは、ピーター、MJ、ハリーの微妙な三角関係を描いているところです。
三人の関係性が好きでしたし、ジェームズ・フランコが演じているハリーの悲劇性にも惹かれました。
この三部作では、ヴィランもかなり魅力的なのです。
とくに、『スパイダーマン』のノーマン・オズボーン/グリーン・ゴブリン役のウィレム・デフォーは、「なんだこのうまい役者は!」と驚いたものです。
アメコミ映画でオスカー級の名演をみせられた衝撃は忘れられません。
『スパイダーマン2』のドクター・オクトパス役のアルフレッド・モリーナも、かなりの存在感で、ともすれば下に見られがちなアメコミ原作の映画に、俳優の本気の演技を持ち込んでいるので、ぐんぐん映画に引き込まれていきます。
このサム・ライミ版に思い入れがあるからなのか、リブートされたアンドリュー・ガーフィールド版の『アメイジング・スパイダーマン』(2012)には、見る前から拒否反応を起こしました。
ファンの心理というのは不思議ですよね。
じぶんにとってのスパイダーマンは、トビー・マグワイアなので、「ほかのスパイダーマンは観たくない」という心理が働きます。
なので、公開当時には劇場に見に行きませんでした。
アンドリュー・ガーフィールドは、現在では大好きな俳優ですが、当時はトビーのほうがスパイダーマンにふさわしいという妙な対抗意識のようなものも持っていました。
でも、わたしは、エマ・ストーンという女優がほんとうに好きでして。
彼女がヒロインのグウェン・ステイシー役だということで、観てみたいなという思いが強くなりました。
でも、やはり観てしまうと、トビー・マグワイアを裏切ってしまうような気持ちになるので、見るのを極力我慢しました。
「自分にとってのスパイダーマンは、トビー・マグワイアだ!」という思いは、エマ・ストーンを観たいという気持ちに勝ったわけです。
気にはなるので、情報だけは入ってきます。エマとアンドリューが付き合ってるとか。
この、トビー版からアンドリュー版に変更されてしまったという、勝手に裏切りのように感じてしまった衝撃を引きずっていたからなのか、『アイアンマン』から始まるマーベルのシリーズは、『アイアンマン2』で見るのをやめてしまいました。
ロバート・ダウニーJr.が、アイアンマンから降ろされたりすることが発生したら嫌だなと思ったからです。
そういう危険性を持っている俳優でしたから……当時の彼は。
だから、トム・ホランド版の『スパイダーマン:ホームカミング』が公開されたとき、これも劇場に見に行こうとはしませんでした。
実際のところ、「トム・ホランドは、スパイダーマンにピッタリだな」と思ったのですが、やはりトビー・マグワイアを裏切るわけにはいきません。
でも、これもまたMJ役が、大好きな女優ゼンデイヤなのです。
どうしてこう、スパイダーマン映画には、ヒロイン役に大好きすぎる女優が選ばれるのでしょうか。
マーベルは、みるのをやめておこう
と、『アイアンマン2』以来、ずっと思っていた気持ちが揺らいできました。
ディズニープラスのドラマ『ワンダヴィジョン』を観たことも大きい転換点でした。マーベルの世界を知らなくても楽しめたし、かなり面白いなと感じました。
そして、決定打は、『ホークアイ』に、現在最もお気に入りの女優ヘイリー・スタインフェルドが出演すると知ったことです。
「ヘンな意地をはらずにマーベルをみる」ことにしました。
今こそが、すべてのスパイダーマンを見るチャンス!
と思って、アンドリュー版もトム・ホランド版も、そして何度目かのトビー・マグワイア版の『スパイダーマン』をすべて鑑賞しました。
その上で鑑賞した『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』
感動しすぎて、ヘコむことってあるんですね。
スパイダーマンというアメコミの世界の物語を使って、映画を鑑賞する人たちを心底楽しませるという制作者と俳優たちの才能のキラメキに、心が震えました。
圧倒的な能力に、打ちのめされる、とはこのことです。
クリエイションの才能を見せつけられて、自分のちっぽけさを痛感しました。
だから少しヘコんだんです。
わたしも、だれかを楽しませるクリエイションを作ってみたい
という欲が湧いてきました。
しかし、そんなことよりも一番の収穫は、『スパイダーマン』に関して、勝手に「裏切られた」と感じてきた思いが、完全に昇華されたことです。
「トビー・マグワイアこそがスパイダーマンだ」
というイチファンの勝手なスパイダーマン愛が、こんなふうに受け止められて、さらなる大きな愛となって自分の心に戻ってくるとは思いもしませんでした。
これ以上、詳しくは語れません。ネタバレ無しで鑑賞してほしいから。
『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』は、エンターテインメントの最高傑作です。
不意にネタバレを目にしてしまう前に、一日でも早く、劇場で見ていただきたいです。
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