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AIを“副操縦士”に「エクスペリエンス主導の成長」へ:Adobe Summit 2023基調講演リポート

2023年3月21日〜23日に米ラスベガスで開催したAdobe Summit 2023。4年ぶりにリアル会場での開催となった大規模イベントには、世界中から1万人以上が来場し、オンラインでも多くの人が視聴しました。

「みんなのデジタルエンゲージ」では、大盛況で幕を閉じた当イベントのリポートを2回にわたってお届けします。1回目は、アドビのシャンタヌ ナラヤンCEOが登壇した基調講演の様子です。

テーマは「エクスペリエンス主導の成長」

多くのマーケターは、顧客の購入行動の分析に頭を悩ませたことがあるのではないかと思います。成熟市場で顧客が購入するのは、単なる商品ではありません。満足感や利便性、自分らしい時間などの総合的な体験、「エクスペリエンス」です。

アドビの年次カンファレンス「Adobe Summit 2023」の基調講演のテーマは「エクスペリエンス主導の成長」。

ナラヤンCEOは、人間がジェネレーティブAIを“副操縦士”に迎え、マーケティングを効率化していくストーリーを語りました。

エクスペリエンス主導の成長の鍵はAI

左からアニール・チャクラヴァーシー(デジタルエクスペリエンス事業部門代表)、デイビッド・ワドワーニ(デジタルメディア事業部門担当)、シャンタヌ・ナラヤン(会長兼CEO・最高経営責任者)

「アドビの使命は、デジタル体験を通じて世界を変えること」(ナラヤンCEO)

マーケティングの変革に焦点を当てて考えると、現代の消費者が求めているのは、商品そのものではなく「エクスペリエンス」です。ブランド目線では、認知から関心、検討、購入、利用にいたるまで、あらゆる顧客接点における企業と顧客のやり取りを総称して「エクスペリエンス」と呼びます。

マーケティングにおいては、カスタマージャーニーを確実に把握し、顧客ごとにパーソナライズしたコンテンツを提供していくことで、エクスペリエンスを改善でき、ビジネスを成長させられます。これが「エクスペリエンス主導の成長」であり「アドビはこの分野に大規模に投資する」と、ナラヤンCEOが宣言しました。

カギはAIです。アドビのマーケティングツール群「Adobe Experience Cloud」では、これまで「Adobe Senei」という独自のAIを組み込んできました。今後は更なるアプローチを展開し高みに挑みます。

ジェネレーティブAIが頼れる副操縦士に

最近はAIが流行語になっていますが、その中でも注目したいのが指令をテキストで入力するだけで、画像を自動で生成したり文章やプログラムを書いたりするジェネレーティブAI(生成AI)の活用です。

人間がメインパイロットだとするなら、ジェネレーティブAIは、人間がマーケティング用の画像コンテンツなどを作成するための強力な“副操縦士(コパイロット)”になり得ます。ただ従来のジェネレーティブAIは、権利の問題が取り沙汰されてきました。

そうした問題をクリアしたのが、アドビが今回発表した「Adobe Firefly」です。Adobe Stockの何億ものストックコンテンツなどで学習させて独自に構築したジェネレーティブAIで、マーケティング活動にも安心して利用できます。

さらにAdobe Fireflyのサービスである「Adobe Sensei GenAI」では、マーケティングコピーやキャプションの生成などが可能です。パーソナライズ化したマーケティングのニーズが日に日に高まる中で、画像やコピー、レイアウトなどのバリエーションを瞬時に作成できるジェネレーティブAIは、頼れる“副操縦士”になるでしょう。

Adobe FireflyとAdobe Sensei GenAIは、Adobe Experience Cloudに統合されているので、マーケティングの各フェーズでシームレスに利用できます。

皆さんが毎日使用するアプリで使えるので、これまでアドビのツール群を使ってきたマーケターの皆さんは、商用版の提供が始まり次第、すぐに利用できるようになるのです(※)。

ジェネレーティブAIにおいては、強力なパートナーを得ています。リーディング企業の一つであるOpenAIやNVIDIAといった企業とともに、最新の技術を基にサービスを改善していきます。

※「Adobe Firefly」はベータ版を提供中(2023年4月現在)

Cookieなしでもユーザー行動を確実に計測

これまでWebマーケターは、サードパーティのCookieを使用してWebサイト来訪者のペルソナなどを把握し、コンテンツのパーソナライズなどを実施してきました。しかし現在、「Cookieを利用する場合は、必ずユーザーの許可を取らなければならない」など規制されており、多くのWebマーケターはサードパーティのCookieの廃止という困難に立ち向かっています。

そこでアドビは2021年より、この問題を解決する顧客データプラットフォーム「Adobe Real-Time CDP」を提供してきました。オンライン/オフラインチャネルを統合し、リアルタイムにデータを分析できるツールであり、450のパートナー企業と協業しています。

またSNSなどのユーザー限定サイトといったクローズドなプラットフォームが広がりつつあり、チャネルごとに計測方法やデータがバラバラで統合できていない、という問題も起きています。

そこでこの日、アドビはさまざまなチャネルのデータを統合し、投資を最適化できる新製品「Adobe Mix Modeler」を発表しました。複数のデータを統合しプロファイルを⽣成。必要なデータを読み込み、Adobe Senseiで分析することであらゆるチャネルにおけるマーケティングミックスを最適化できます。

アドビのツールを、新時代のマーケティングの武器に

「これからのビジネスは、顧客体験を良くしていくことが成長の鍵になる」とアドビは考えます。顧客に対して迅速に価値を示すことが、収益性の向上に不可欠なのです。そのためアドビは、企業の収益増加とコスト効率向上を支援します。

日常生活を振り返ると、デジタルが私たちの働き方や学び方、楽しみ方を変え続けていることは明らかです。これはヘルスケアから小売、金融、教育に至るまで、あらゆる業界で言えます。

消費者行動に世代交代が起き、企業がデジタルファーストであることを期待されている昨今。企業が消費者や顧客にとって直感的なデジタル体験を提供しながら成長し続けることは、決して容易ではありません。

しかしアドビの新しいツールやサービスを使えば、マーケターは顧客の総合的なエクスペリエンスを向上させることができます。話題のジェネレーティブAIもAdobe Experience Cloudに完全に統合されているため、新たな登録作業や難しい操作なしに生産性をアップさせられるのです。

新しくなったAdobe Experience Cloudは、企業のブランドを確実に成長させることでしょう。


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