マーケティングはAIで“超”効率化——アドビが提案する、イノベーションの未来:Adobe Summit 2023 Sneaksリポート
簡単な操作でクリエイティブを無数に作れる生成AIの技術は、マーケティングを“超”効率化する可能性を秘めていると言えるでしょう。
今回は「みんなのデジタルエンゲージ」がお送りする「Adobe Summit 2023」リポートの2回目です。開発中の技術を開発者が紹介する人気コーナー「Sneaks」をピックアップします。
当日はマーケティングの未来を見すえたさまざまなAI技術が登場し、会場は大盛況。ここでは、その中から2つの技術をご紹介します。
マーケティング効果を予想し、改善策を提案:Path Wise
マーケティング担当者は、顧客のニーズやタイミングに合わせて適切なプロモーションを企画するのが重要な仕事です。「Path Wise」は、その作業を効率化し効果の確実性を高めてくれる、“未来を予想できるツール”といえます。
Path Wiseは、オンラインとオフラインをまたいでマーケティングプランを設計したり、プランの結果を分析したりする「Adobe Journey Optimizer」に将来、追加されるかもしれない機能です。マーケティングプランを入力すると、実行した場合をシミュレーションし成果を詳細に予想。さらに、改善案まで提案してくれます。
例えば、フィットネスジムの会員に対してLTV(Life Time Value:顧客生涯価値)向上を目的に、プロモーションを立案するとしましょう。「ジムにあまり来ない人」には特別なキャンペーンを、「よく来ている人」には継続を促す内容をそれぞれ、アプリとメールでプッシュ通知しようと思います。
Adobe Journey Optimizerにこのマーケティング計画を入力すると、Path Wiseが過去のマーケティングデータを分析した上で、来客数やLTV上昇率などを具体的に表示します。つまりマーケティングを実戦投入する前にマーケティング効果を予想できるのです。
またLTVをさらに上げるための施策も、Path Wiseが提案してくれます。このケースの場合は「21~25歳の会員には新しいマシン」「18~35歳の会員には人気のダンスクラス」をそれぞれ案内することで、開封率が数ポイント改善すると予想しました。
Path Wiseが実現すれば、勘と経験だけではなくデータを活用した予測に基づくマーケティングコミュニケーションの設計が可能になるでしょう。
パーソナライズコンテンツを自動生成:Limitless Option
パーソナライズを重視するマーケティングにおいて、顧客一人ひとりの興味や関心に応じたコンテンツを作成し、管理するのは、マーケターの大きな負担になっています。しかし画像やテキストのテイストを、ターゲットごとに自由自在に差し替えられる「Limitless Option」なら、そんな手間を大きく削減できるでしょう。
例えば、ファーストフード店のマーケティングで考えてみましょう。Webサイトには、白いエプロンと帽子を身につけた店長の写真が載っていますが、この写真は全てのユーザーの購買意欲をそそるものとは限りません。しかしLimitless Optionを使えば、エプロンや帽子の色を一瞬でカラフルに変更できます。
それだけなら、既存のツールでもできたかもしれません。
Limitless Optionには今回のAdobe Summitで発表した「Adobe Sensei GenAI」を搭載しており、生成AIでパーソナライズしたコンテンツを自動生成してくれます。これによりマーケターは、パーソナライズしたキャンペーンやコンテンツをすばやく作成したり、修正したり、展開したりすることが可能になるのです。
このツールは「Adobe Journey Optimizer」と組み合わせた時に真価を発揮します。メールマーケティングを通じて、ファーストフード店のWebサイトへのアクセスを拡大するケースで説明しましょう。
Limitless Optionに、ランディングページURLと顧客セグメント、キャンペーン対象製品を入力すると、その顧客に合ったメールタイトルや本文、画像が自動で提案されます。
例えば、屋外アクティビティが好きな顧客にポテトを販促する場合。店長が海辺でポテトを持っている写真を生成し、「パーフェクトビーチサイドキャンペーン」というタイトルのメールを作成します。
メールのテキストも、Webサイトの内容から顧客にあわせて自動で生成。あとは、それぞれのターゲット顧客ごとにメールを送信するだけ。
本来なら10パターンのターゲットに対して10個の商品パーソナライズメッセージを送る場合、単純計算で100個のクリエイティブが必要になるでしょう。しかしLimitless Optionなら、これを制作会社やデザイナーに依頼して手間や工数をかけることなく、「ターゲットごとのコンテンツを用意する」というプロセスを一瞬で完了できるのです。
AIイノベーションが変える未来のマーケティング
今回のSneaksでは7つのアイデアを紹介しました。全てマーケターや消費者が日々直面している重要な課題を、これまでにないやり方で解決するものです。これらの技術はまだアイデア段階ですが、実現するのは、遠い未来ではないでしょう。
こうしたAIイノベーションを活用すれば、マーケティング担当者の仕事は楽になり、施策の効果はさらに高まるでしょう。これからも、アドビが提案する新たな技術にご注目ください。