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どうして8週間コースで、マインドフルネスを学ぶのか

世の中には様々なマインドフルネスの学びの機会があります。一日10~30分程度のオンライン瞑想会や、2日程度のコース、数日のリトリートなどもあります。また、本やアプリで勉強するというのも、忙しい人にとってはとてもよい学びの機会になるでしょう。その中で、一つの学びの方法が、8週間(場合によってはもう少し長いものもある)をかけて行うコースです

代表的なものとしてMBSR(マインドフルネスストレス低減法)、MBCT(マインドフルネス認知療法)、MSC(マインドフルセルフコンパッション)、MBRP(アディクション・依存行動のためのマインドフルネス)、MBCL(マインドフルネスに基づくコンパッションのトレーニング)、MBPM(Breathworks:痛みのためのマインドフルネス)といったものがそれにあたります。

学びの方法は様々な中で、なぜ時間とエネルギーを割いて、8週間ものあいだマインドフルネスに取り組む必要があるのでしょうか?あくまで学びの一つの選択肢という位置付けで、8週間コースに取り組むことの意味について考えていきます。

なお、筆者はMBCT指導資格(Trained Teacher, Oxford Mindfulness Center)を得てMBCTのコースを提供し、同時にMBSR、MBCL、Breathwokrsのトレーニングを行っている者で、これらのプログラムをベースに書いています(その他のプログラムには当てはまらないところがある可能性があります)。

1.8週間コースとはどのようなものか

多くのコースの基礎になっているのは、Jon Kabat Zinn博士によって1979年にアメリカで開発されたと言われる、MBSR(マインドフルネスストレス低減法)です。MBSRをベースにした各種8週間プログラムには以下のような特長があります。

・瞑想を中心としたエクササイズを通じ、刺激に(自動反応ではなく)上手に対応する、という力を身に着けていくこと。
・1回あたり2〜2.5時間のクラスが8回(増減あり)で構成されていること。コースによっては、これに加えて終日サイレントの練習日があること。
・クラスの間は自宅で1時間程度の宿題を行うことが求められること。
・講師1〜2名に対し、受講者が数名〜30名で受講すること。
・コースは1週目から8週目にかけて、段階的にステップアップしていくようにデザインされていること。
・一定のトレーニングを受け資格をもつ講師によりコースが提供されていること。

2.8週間コースに参加することの意味

8週間コースに参加することの意義は、「自分で学んでいくための土台を作る」ということに尽きると思います。8週間目では、多くの講師が「いまが8週間コースの終わりであり、マインドフルネスの学びのスタートである」と言います。

これは自分が受講者として学んだ経験と、コースを教えた経験の双方から照らし合わせても納得できます(受講、コース提供、コースサポートをそれぞれ複数回経験しています)。

8週間で変化が起きてくる事が多いのですが、「あとから振り返ると、あれは変化の一部だったと気づいた」と多くの人が口にします。裏を返すと、この8週間で基礎を固めてていたからこそ、その後の学びが効果的になったということです。

8週間コースのプログラムの中で大事な要素がいくつかありますが、ここでは、「インクワイアリー」と「グループで学ぶこと」を挙げたいと思います。

インクワイアリーとは、瞑想体験について、講師と受講者の間で行われるやり取りです。マインドフルな対話と呼ばれることもあります。

この対話では、受講者が自ら体験したことについて、講師が問いかけをすることで、受講者が自ら、体験を深堀りしていくプロセスを経験します。例えば、受講者がある人の言動に怒りを覚えた、という場合、そのような反応が起きたメカニズムを理解し、上手に対応していくことが大事なことになります。

その具体的な方法としては、一連の怒りの過程を、その時に何が実際に起きていたのか、身体感覚、思考、感情、衝動に分けてみていくことも一つです。

例えば、受講者が怒りという感情があったことを報告すると、講師はそこに付随する思考、身体感覚、衝動などといった直接体験がどのようなものであるか問いかけをし、受講者はそれについて振り返りを行います。受講者の直接的な体験に対し、経験のある講師が補助線を提示すること、もしくは優しく好奇心を持ってスポットライトで照らしていくことで、受講者自身が自らの体験を理解していくのです。

これが繰り返されるうちに、徐々に、受講者は講師に問いかけられる前にそれらに気を配るようになり、日常生活の中でも瞬時にその反応のメカニズムを理解するようになっていきます。とは言え、これまでの心のパターンをすぐに解体することは難しいため、何度も何度も問いかけられ、徐々に力をつけていきます。

そしてより深いレベルでは、この対話を通じ、受講者は、自らの外にではなく自らの中に汲み上げることのできる資源があることを知り、自分を信頼し、自分の外にではなく内側に判断を求めることを覚えていきます。そこには、自らの感覚に対する興味や、信頼、好奇心や意図、態度と言った様々な要素があります。講師が答えを教えるのではなく、対話し、受講者が自らに問いかける態度を養うサポートをしていきます。

もう一つの特長はグループで学ぶことです。

前述の通り複数名のグループで学ぶことにより、他の受講者の発言から学んだり、一緒に学ぶ仲間の存在とお互いに練習のサポートとなったりします。練習時間がとれない、ボディスキャンで眠ってしまう、などと思いがっかりしていたら、他の受講者の同じ体験をしていることを知ります。そうして、物事にはコントロールできないこともあり、それを受け入れることで、初めて次のステップに進むことができることも学んでいきます。

そして、毎回クラスに参加することが、徐々にそれ自体に意味を感じるようになってきます。多くの場合、マインドフルネスを学ぶのは、ストレスに対処したいとか、抱えている問題に上手く対応できるようになりたい、という目的があってのことですが、グループでの学びが深まっていくと、徐々に、「ただ参加し体験を共有し、一緒にまなぶ」ということが意味のある体験と感じられるようになってくることもあります。

マインドフルネスの逆説的なところとして、「目的や期待を手放した時に、もともと目指していたものに近づく」ということがあります。その点からも、心理的安全性のあるグループで共に学ぶことは、マインドフルネスを深く理解する上で助けになります。

3.講師と受講者の役割

このようなクラスにおける講師と受講者の関係とはどのようなものでしょうか。

講師は、知識を一方的に伝える役割ではありません。そうではなく、受講者が自らを深く探索していくことのきっかけや環境を提供することが仕事になります。具体的には安心して発言をできる場であったり(ここで話したことが外にもれないとか、何を言っても否定されないといった心理的安全性)、自らの体験に好奇心を向けることの大事さ、練習や実践について失敗したと感じ心が挫けそうな時にいつでも戻ってこれるというマインドセットなどを、受講者自身が感じていく手助けをするのです。

友達

そして、例えばMBSRであればストレス低減法という名前からして、ストレスへの対処を学ぶカリキュラムではあるのですが、前述の通り、本来の目的はより深いところにあり、受講者が自分自身の内なる資源へアクセスすることを助けることである、その意味で、カリキュラムを通じて、講師と受講者が人間として切り結ぶやりとりとも言えます。

4.自分にあった学びを

冒頭に述べたとおり、マインドフルネスには様々な学びの方法があります。必要とされる学び方は人によって、また同じ人でも時々で異なるでしょう

仕事、家族、経済的事情、時間などのさまざまな要因によって、その人に適した学びがあります。例えばMBSRやMBCTでは、事前に個別面談を行い、参加にあたっては毎日45分から1時間の練習が必要であることを伝え、これが出来ない場合は別の機会に参加することをお勧めしています。人には参加するのに適したタイミングがあり、またその時に自分にあった学びがあるからです。

環境が整っていて、長くマインドフルネスを学ぶための土台を築きたい場合は、さまざまな8週間コースから自身にあうと思われるものを選んで挑戦してみるのも良いでしょうし、また、自らの練習を深めるために講師としてのトレーニングを積むという方法もあります。

逆に、今がその時期でない場合は、オンラインの短い瞑想会に出席したり、1日コースや本、アプリなどで練習をするのも良いと思います。

まずは無理をせず、自分自身と相談しながら、最初の1歩を踏み出していただければと思います

次回は、様々なコースの違いについて書きたいと思います。

各種プログラムは以下より↓

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International Mindfulness Center Japan
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