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ダニエルキムの成功循環モデルが示す真実 - 関係の質を超えた組織変革の本質

MIT発の理論と最新論文から紐解く、効果的な組織開発の新視点

小島美佳:組織開発に携わる企業の人事担当者や組織開発コンサルタントの多くは 職場の人間関係を改善するために多くの努力をされていますが、今回の対談ではご存じの方も多い、ダニエル・キム氏のシステム思考、組織の成功循環モデルを元に、職場の人間関係に重点を置くことに どのような意味があるのかについて改めて問うことを目的としています。

小島と、ビジネス分野で事業開発やイノベーションに取り組んでいらっしゃるFelixさん、このサイトでご一緒してるサイエンスが専門のs子さんの3人で対話しながら考えていきたいと思います。よろしくお願いします。


システム思考から見る組織変革の新たな視座


小島美佳:人間関係について考える前に、組織開発において「関係性」は重要なキーワードとなっているのでまず初めに整理したいと思います。

心理学的な定義では、関係性とは「人と人が結びついてる関係のあり様」を指します。この関係性には、支配的なものや依存関係に基づくもの、逆にドライなものなど様々な形があります。しかし、この関係性のあり方は職場の雰囲気や個人の生活、健康にまで影響を及ぼす要素です。

ビジネスの成功に必要なシステム思考とは?

 「ビジネスにおいて」という前提で考える上で、できるだけ遡ってみます。「関係性」という概念をシステム思考の文脈で初めて知った方も多いかと思います。

こちらを改めて整理させていただくと、1995年、ピーター・M・センゲ氏が出版したThe Fifthe Discipline(邦題 『最強組織の法則』)という本で、システム思考の概念が広まりました。
この時期は、システム思考をベースとしたビジネス研究が大きく進展しました。


そしてその流れで、MIT組織学習センターの責任者も務めたダニエル・キム氏は、本や論文を通じて画期的なモデル成功循環モデルを提示しました。

組織開発セミナーなどでも多くの方々がこの成功循環モデルを引用して説明しているので、ご存知の方も多いのではないかと思いますが、ここで「関係の質」というキーワードが出てきました。

ダニエル・キム氏の唯一の邦訳本
Source : Amazon


システム思考とは、広義では世の中をシステムとして捉え「システム」「情報」「制御」を柱として課題解決を図るための思考法全体を指し、狭義ではシステムダイナミクスの定性分析手法としての「システム思考」を指す。

Source : Wikipedia



ダニエル・キム氏が提唱する 成功循環モデルとは


成功を強化するエンジンとなりうる成功循環モデルの模式図,
SYSTEMS THINKER」より引用改変



このモデルの革新的な点は、組織のパフォーマンスを向上させるために必要な要素を、4つの「質」の相互作用として捉えたことです。結果の質、行動の質、思考の質、そして関係の質が循環的に影響し合うという考え方です。
具体的には、結果の質を左右するものとして行動の質があり、行動の質に影響するものとして思考の質、思考の質に影響するものとして関係の質があり、さらに結果の質も関係の質に影響を及ぼすというモデルです。ダニエル・キム氏がシステム思考に基づき最初に提唱したものです。

ここで前述したシステム思考の定義について、改めて分かりやすく噛み砕いて説明すると、
「気づいているかどうかに関わらず、私たちは様々なシステムの中で存在し、相互に作用しています。私たちはある意味一つの歯車のような存在であり、システムが作用し合ってる中で、常に動的に生きていますよ」ということです。

実は、今回の対談を行うにあたり、ダニエル・キム氏の元の論文や寄稿を探したのですが、見つけるのに結構苦労しました。結果的にはこちらのSYSTEMS THINKER」というサイトにありました。
英語のサイトですが、非常に役立つ無料のコンテンツが多くあるので、システム思考について学びたい方、興味のある方はぜひご覧ください。


課題解決のコツは観察力

なかなか解決できない難しい問題に取り組む際に、システム思考について再度理解を深めることは適切なアプローチの選択にもつながり、重要となってきます。

キム氏は、このシステムというものが具体的に何がどのように機能・作用し物事が起こっているのか、というところを深く見ていく重要性を主張しています。観察し続けることが何よりも重要であり、観察することによって、なぜ今こういう状態が起こっているのかを理解し、問題点が明らかになった場合には、そこに作用している全体のメカニズムをできる限り明らかにする必要性も説いています。
そういった観点から、先ほどの成功循環モデルがその一例として提示されたと考えられます。したがって、私たちはシステムに支配されるのではなく、システムに対して私たち自身が作用するためにはどうすればいいのか?という問題提起をされているんだと思います。

ダニエルキム氏の論文から学ぶ - 成功循環モデルの本質と実践的応用のポイント

ここで、改めてキム氏の考え方に基づいて成功循環モデルを見てみると、単純な因果関係ではなく、それぞれの要素のつながり、システムとしての相互作用を重視している点に注目します。したがって、この循環モデルを方程式のように扱うべきではないということを前提に考えることが重要です。

つまり「結果の質が悪いから、関係の質を改善すれば良い」という単純な解釈は、危険かもしれません。実際、会社内で結果の質に問題がある場合、その状態が引き起こされている要因は果たして何なんだろうか?と深く吟味することが重要だと述べています。

それは行動の質そのものかもしれませんし、他の様々なダイナミクスが複雑に絡み合い影響し合って、結果の質に作用をしている可能性もあります。したがって、人間関係の改善だけに過度にフォーカスを当てるだけではなく、様々な努力を行うことによって、具体的に何がどのように変化するのかを理解し、検討しながら施策を決定していく必要があります。

そうでないと、なかなか本来望んでいた結果も得られず、「いろんなことやってみたけれど、結局は何だったんだっけ?なにか意味があったんだっけ?」といったように、かえって組織を迷走させるリスクがあるのです。

以上、私の方からは人間関係の改善だけに過度にフォーカスを当てすぎると、迷走する可能性が非常に高くなりますよ、というところをダニエルキム氏の主張を再確認しつつ、説明させていただきました。
はいそれでは、次にs子さんの方からお願いできればと思います。



関係の質を科学する:職場の人間関係に関する実証研究


s子:ダニエルキム氏の論文では「理論をより深く理解する必要性」が指摘されています。そこで、私の方からは職場における人間関係の影響についての実証研究の知見を2つご紹介したいと思います。

それら論文を元に、そもそも職場で友人を作ることは良いことなのか?それとも、ビジネスとプライベートは分けた方がいいのか?それぞれのメリットとデメリットについて最後に考察します。


1, ビジネス現場での友情のメリットとデメリット

まずはじめに、友情とビジネスの関係を両立する際に起こりやすい問題について調べられた2007年のマーケティング分野の論文「友情 対 ビジネス」を紹介します。

この論文では、685のエージェントを対象とし、役割理論を用いて大規模調査を行い、その結果、興味深い発見が2点ありました。

  • 友情と利害関係の対立(自分にとっての有益さ・お金や地位の間で対立や葛藤)がビジネス上での成果を損なう恐れがある

  • 友人関係からビジネス関係に発展したケースの方が、より深刻な問題を引き起こしやすい

この論文では、友情とビジネスの関係における対立や葛藤の原因は、相容れない関係上の期待だと指摘しています。
つまり、本当の友人はお金や地位が関係性を作る上での動機付けにならないことが多いのに対し、ビジネスパートナーは自分に有益かどうかということが部分的に関係構築の動機としてあることです。このような期待の違いが、友情とビジネスの間で衝突を引き起こす可能性があるというわけです。

論文の結論としては、友情はビジネスにとって必ずしも良い影響を与えるわけではなく、場合によってはプラスにもマイナスにもなりうると述べられていました。

(参考文献:Grayson Kent. (2007). Friendship versus business in marketing relationships. Journal of Marketing


2, 組織における関係の質の効果:最新の実証研究から

次に、職場での良好な関係性がもたらすメリットに関する研究を紹介します。

2020年に中国で発表された論文「職場の友情が従業員の対人関係を円滑にする理由」では、職場の人間関係の影響の理論モデルを検証するため、150のワークグループ、1047人の従業員について調査し、その結果、職場での関係の質が「対人市民性」と正の相関を示しました。

対人市民性(Interpersonal Citizenship)とは、従業員が業務上の義務を超えて同僚を支援する行動や、他者と適切な相互作用やコミュニケーションを取る能力を指します。
研究ではこの対人市民性が高まると、従業員同士の相互支援や協力的な行動が増え、チームワークや仕事の生産性が改善されると述べていました。また、社会的伝染効果も影響する可能性にも言及しています。これは、職場での従業員同士の感情やエネルギーを相互に伝え合うことで、ポジティブな雰囲気がチーム全体に広がり、仕事の生産性が高まるということです。

この研究では、職場での人間関係が良好であれば、仕事の効率や成果、組織全体のパフォーマンスに好影響を与えることが示されていました。

(参考文献:Jincen Xiao et al, (2020) Relationally Charged: How and When Workplace Friendship Facilitates Employee Interpersonal Citizenship. Frontiers in Psychology)


職場で親密すぎる人間関係がもたらすリスクと対処法

職場で友人を作ること、人間関係が親密になることのデメリットとして、以下の4つが挙げられます。

  • 仕事とプライベートの境界線が消失し、プライベートな問題や感情がビジネスの現場に持ち込まれ、仕事に対する集中力が低下しパフォーマンスが下がる可能性。

  • 互恵関係の構築により、相手に何かをしてあげたくなるという心理が働き、本来優先すべき業務よりも人間関係のために時間や労力を使ってしまう。

  • グループ内で個人的な対立や派閥など関係性の不和が生じ、業務に悪影響が及ぶ。

  • 親密な関係にある人たちだけが役職や給与、転勤や部署の移動などでメリットを享受し、組織内での公正さや平等性に不満が生じる。

Source : マインドフルネス研究所


組織開発における関係の質のマネジメント

それでは、実務において、これらのデメリットやリスクを回避するためにどのようにバランスを取るべきなのでしょうか?
具体的には、ビジネス現場や職場では適切な関係性を維持しながらもプロフェッショナルを保つことが必要です。そのための重要なポイントが、今回ご紹介した2つの研究結果から、3つ浮かび上がってきました。

  • 明確な境界設定
    個人的な関係と仕事上の関係の間に明確な境界を設定する。例えば、仕事中は仕事に集中し、プライベートな話題は休憩時間や退勤後にするなど。

  • 効果的なプロフェッショナル・コミュニケーションの確立
    同僚や上司・部下とも定期的に効果的なコミュニケーションをとる。プロとしての態度を維持し、利益相反やえこひいき、客観性の欠如などを避けるとともに、共通のビジョンやゴールを共有する。

  • 組織全体での対人スキル開発の重要性
    倫理観や対人スキルのトレーニングなどの能力開発を行う。自分自身や他者の感情や価値観を理解し、適切に対応する能力を高める。

ここまでで追加の研究論文の紹介は以上です。

小島美佳:まさにダニエルキムの本や論文で指摘されている、システム思考的なアプローチですね。個々の要素を単独で見るのではなく、組織全体のダイナミクスとして捉える必要があります。Felixさん、ご感想をお聞かせいただけますか。

Felix:私も以前、先ほどのダニエルキム氏の成功循環モデルの図を使って人前で話したことがあるんですが、以前は表面的な理解しかありませんでしたが、今改めて深い示唆を感じています。

私がアドバイザリー的役割をやりつつ日々感じるのは、組織開発において重要なのは、単に要素間の順序関係だけではなく、各要素の本質を深く吟味し理解することです。組織内で何か問題があった際に、「これだ」という風にすぐに飛びついてしまう、といったことが、組織の中でも多く見受けられるのかなと思います。


Source : マインドフルネス研究所


成功循環モデルの実践的解釈


Felix:ですから、例えばこの図の中で言う「アクションが良くないんだよ」「そもそもプランニングが良くないんだよ」といった「行動の質が低い」という話が出た場合でも、言うだけでなく掘り下げなければいけない。それを掘り下げていった結果、「やっぱり人、メンバーだよね」という結論になれば、そこの課題をどうするか?その背景にある構造的な要因まで掘り下げる必要があります。

小島美佳:そうですね。私もすごく同感で、問題があるとすぐに解決策に飛びつきたくなる傾向はあるのかなと感じますます。
しかし吟味していくことの大切さというか、立ち止まってじっくり今の状況を観察するということをやらないと、なかなか発想の転換もできないのかな、ということがありますよね。


関係の質を再定義する:マッキンゼーの7Sとの接点

Felix:私もダニエル・キム氏の論文を読みましたが、結論としては、現場のマネジャーたちが今の自分たちなりの勝ちパターンを知り、結果の質を上げるメカニズムを理解し作ろう、というような書き方だったように私は理解しています。

そこで改めて興味深いのは、ダニエルキムの論文で示される「関係の質」が、マッキンゼー・アンド・カンパニー社7Sモデル(組織変革に必要となってくる7つのS)における "ソフトのS" と呼ばれる4つの領域 - 価値観 (Shared Value), スキル (Skill), 人材 (Staff), スタイル (Style) が、と重なる部分が多いことです。

ただし、これらは必ずしも「仲の良さ」を意味するわけではなく、個人的には別に仲がいい必要はないと思います。

もし仮に、職場内でチームメンバー達がいがみ合ってぶん殴り合うような感じだとまずいでしょうけど、別に会話もしない、飲みにも行かない、けれどもお互いの役割を果たす、といった関係であったとしても成功を循環させるための人間関係の質としては問題ないと考えます。
逆に、「関係の質」と「仲の良さ」を安易に結びつけてしまう方が、より問題を複雑にして深みにはまってしまう可能性があるのかなと。

小島美佳:そうですね、求めている関係性の質が具体的にどういうものなのか?それは結果に左右するのか?というところの議論や検証が行われていないところに、一番問題があるのかな?と思いました。



変革時代における成功循環モデルの限界と可能性


Felix:この成功循環サイクル自体は悪くないと思いますが、変革を目指す時には逆に足かせになる恐れがあると感じました。
このモデルは既存ビジネスの改善には有効ですが、イノベーションを目指す際には新たな視点や少し異質なものが入ってくる必要があるかもしれません。実際、既存の循環を意図的に破壊し、新しいダイナミクスの創造を必要とするケースもあります。あくまで個人的な意見ですが。

小島美佳:まさにシステム思考の本質ですね。変革には、現在の循環を理解した上で、新たな循環を設計する視点が求められます。全く別の発想とか異質なものの組み合わせによって、どんな新しいダイナミクスを作っていきたいのか?という議論ができるといいですね。さらに、もう一点付け加えたいことがあります。


ゴール設定から始める組織開発の新アプローチ


組織開発では、最初にゴールを設定することがコミュニケーションよりも大事だ、という説
があります。
一方で、どういうゴールを達成したいか、どういうプロセスが必要か、どういう役割を担うか、そしてどういうコミュニケーションスタイルや人間関係が望ましいか、という順番で考える方が結果が出やすいという考え方もあります。

私自身が様々な会社や現場を見てきた経験からは、個人的には前者のゴールを先に設定するアプローチの方が結果的にも理にかなっているのと感じます。
関係の質やコミュニケーションの改善は、このゴールに紐づいて初めて意味を持ちます。


コミュニケーションから入ると、それが万能のソリューションのように見えてしまいます。一見それっぽく見えるのも分かりますし大事でもありますが、そこだけを一生懸命改善しても、ダイナミクスを変えるためのレバレッジ・ポイント(システムや組織内で大きな影響や変革を及ぼす可能性がある特定の場所や要素)にはなりにくいと思います。
絶対的に何かが足りていないとか、例えば上下間のコミュニケーションが希薄などコミュニケーション自体に問題な場合は、それを改善するだけで劇的に変わるケースなどはありますが。

Felix:それはすごく同意で、僕もいろいろクライアントさんと対話している際も、やっぱり結果の質というか、常に「いつまでに何を目指すのか?」という点から始めています。
確かに人間関係の話はあるし、コミュニケーションの話とかもたまに出てきますけど、おっしゃる通り、レバレッジ・ポイントはゴールとアクションで、コミュニケーションの改善は、あくまでもそのゴールを達成するための手段の一つに過ぎません。



職場における理想的な関係性の再考


小島美佳:先ほどご紹介していただいた研究論文1の知見で、特に印象的だったのは、友情関係からビジネス関係への移行の方が、その逆よりも問題が生じやすいという点でした。
『友情関係=仲が良い』という前提で考えると、特にベンチャー企業を経験した方には示唆が多いのではないでしょうか。

関係性に焦点を当てると、どういう関係性がビジネス上健全なのか、システム思考的に考える必要があるかもしれません。この職場の友情関係のデメリット、がそのヒントになるかもしれませんね。

境界線の重要性:プロフェッショナルな関係構築

Felix:私の経験からも、最も重要なのは役割を明確にすることです。
逆に仲が良すぎると、言わなくていいことまで踏み込んでしまうこともありますよね。良好な関係性は重要ですが、それ以上に各自の責任を取る領域は明確にしつつ、それ以上は踏み込まないとか、そこは相手に任せます、という境界を尊重することが不可欠です。

小島美佳:s子さんはこの「私的感情を持ち込まず」に関心があるようですが、論文を読んで何か感想などはありますか?

s子:私もダニエル・キム氏の論文を読みましたが、それを引用して考察している人たちの多くは「関係の質が最も大事であり、その結果、成果が出れば自然とモチベーションも関係の質も上がる」と言っていました。
しかし、ある方は小島さんやFelixさんがおっしゃっていたように、大前提として共通・共有したビジョンがなければ、どんなに仲が良くてもその先へは進めないと書いていました。


職場での境界線があいまいになると何が起こるか?


また以前、アカデミアの領域、企業と比べて大規模な研究室でも数十人から100人程度、という環境で働いていた際は「仲の良さ」が重視され、仕事とプライベートの境界があいまいでした。その結果、「仲が良いから」という理由で、本来の役割を超えた要求を断れない状況が生まれていました。
今回のお二人のお話を伺っていて、本当にそれはすごくデメリットだと感じました。

小島美佳:私的感情が持ち込まれているわけですね。

s子:そうですね、例えば誰かがお子さんのお熱で急に休んだ時などに、「君は女性だから今後こういったケースもあるだろうし、それを見越して今回の穴埋めをしておきなよ」みたいなことを何度も言われ、、、女性の穴埋めを女性がするのが当然というのはおかしくないかな?と感じつつも断れず「ハイ、やります」みたいな(苦笑)。

小島美佳:なるほど。
改めて、組織内で信頼関係を築き、互いをプロフェッショナルとしてリスペクトできる状態を作る、また境界線の引き方などが本当に大事なポイントなんだなと思いました。


組織内で親密さを築くメリットとは?


小島美佳:職場の友情関係のメリットの面にもついても掘り下げてみたいです。ご紹介いただいた2番目の論文の中で言及されていた「職場での友情関係の質」というものは具体的にどのように測定されたのでしょうか?

s子:この論文では関係性の質を調べる上で、様々な過去の心理学の文献を元に
職場の友情(職場における個人間の対人関係の質)
関係相互依存の自己解釈
関係エネルギー
対人市民権
の4つの因子について問う設問を複数設定し、それらについて5段階評価で答えるアンケートテストを行い、統計学的処理によってそれぞれの因子の関連性を調べていました。ここは詳しく説明すると長くなりそうなので、後日また機会があればマインドフルネス研究所で取り上げたいと思います。



小島美佳:なるほど。
この対人市民性や、互いに協力し合うといったことは、より大きなゴールを達成するためには大事だと思いますが、システム思考的にはこの友情関係の質についてより深く吟味することができたら、組織開発でどう活かすか?といった視点も得られて議論も深まるのではないかなと感じました。



理論と実践の融合:新しい組織開発の方向性


Felix:今回の議論を通じて、昔のフレームワークや原点を追求することは大事なんだなと気づきました。
研修を受けて聞く内容はあくまでダイジェストだし、数学に例えるなら公式だけ暗記して「何故そうなっているか?」といった理屈や理論がわかっていないような、そういう状態なのかなと感じました。
ですから実務家として、表面的な理解だけではなく、原点回帰、その背景にある理論的な深みを理解することの重要性を感じています。



s子:ダニエル・キム氏の論文の結論、ディスカッションに書かれていて私が共感したのは以下の部分です。
「理論とかはアカデミックの人がやるものだから、ビジネスマンはやらなくてもいい、餅は餅屋で理論はアカデミアの方に任せて、私たちビジネスマンはどんどんパフォーマンスを上げて成果を出すんだ!」といったことを多くのビジネスマンが言ってるけれども、やはり組織を構築したり発展させる上ではモデルとか理論も重要で、組織内に理論もビジネスも両方を理解している専門職も必要なんじゃないか、といったことが書いてあって、なるほどな、と思いました。

私自身の経験からも、アカデミアと企業や医療現場のギャップを感じたことが多く、理論と現場を繋ぐコーディネーターの役割の人が必要だと個人的に感じています。 

小島美佳:ありがとうございます。そういう意味では今回の対談の結論は「ビジネスマンももうちょっと勉強しましょう」ってことですかね(苦笑)。 頑張ります。ありがとうございました。

<インテグラル理論における客観視と他者視点獲得のための瞑想>

Source : 瞑想チャンネル for Leaders


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