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脳と腸の深~い関係

脳と腸は、もとはと言えば、同じところからできてきます。
つまり、脳と腸は発生学的(発生生物学的)にも
深いつながりがあります。

これは、脳と腸が、胎児発生の過程で
共通の起源を持つことに由来しています。

発生生物学とは、受精卵から一つの成体になるまでの
胚(はい)発生、成長、変態の過程を扱う学問です。

脳と腸の深い関係について、ちょっと深入りしてみます。


1. 胎児発生における共通の起源

脳と腸の神経系は、胎児の発生初期において、
神経堤(neural crest)と呼ばれる胚の一部から発達します。

図:神経堤の発生。受精卵から神経板ができて、
神経堤を形成し、脊髄のもとになる神経管となります。
出展『脳科学辞典

神経堤は、脳と脊髄の基となる神経管を形成する細胞集団で、
ここから、脳の神経細胞だけでなく、
腸に存在する神経細胞(腸内神経系)も生まれます。

2. 腸内神経系の発達

腸内神経系は、消化管の壁に存在し、
消化器の機能を自律的に制御する神経系です。

図:腸管神経と腸の層構造。
出展『プロメテウス解剖学アトラス 頭頸部/神経解剖第2版』医学書院

この神経系は、脳とは独立して活動できるほど高度に発達しており、
「第二の脳」とも呼ばれる理由の一つです。

3. 迷走神経によるつながり

脳と腸は、主に迷走神経(Vagus nerve 放浪の神経)を介して
相互にコミュニケーションをとっています。

図:迷走神経がつながる腸管の粘膜ひだ組織。
出展『日本人体解剖図 改訂19版 上巻』南山堂

この神経は、胎児の発生過程で脳から腸に向かって伸び、
脳幹と腸内神経系を直接結びつける役割を果たします。

迷走神経は、消化、心拍、呼吸などの自律神経系の調整に関与し、
脳と腸の相互作用を支えています。

4. 進化的視点からのつながり

進化の過程でも、脳と腸のつながりが重要であるとされています。

腸内での栄養吸収や免疫機能が、生存に直接関わるため、
腸の健康が脳や全身の健康に影響を与える仕組みが
進化的に発達してきたと考えられます。

まとめ

脳と腸は、発生学的に共通の起源を持ち、
迷走神経などを通じて深いつながりを維持しています。

この発生的なつながりが、脳腸相関の基盤となり、
現代の研究においても、脳と腸の相互作用が重要視される理由
の一つとなっています

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