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蛇にピアス 金原ひとみ

初読は2004年。
私は中学生だった。
知らぬ世界やアングラ感に興味を惹かれたなぁ。

YoshiのDeep Loveがとても流行った後くらいだったと思う。
若さとか憤りとか弱さとかそんな物が毎日苦しかったあの時。

ルイに、物語全体に、受けた衝撃を私は忘れない。
19歳になってもこんなに苦しんでるのは謎だったけど
(当時はすごく大人じゃんって思ってたから)

ただ物語の痛みよりもアングラな雰囲気に恐怖しつつも憧れた。
舌ピは裏原系のおねーさんしかしてなかった時代だ。
ギャルが舌ピなんてしてない。まだギャルはヤンキーの延長にあったから。

原宿でピアス屋に行って定員さんに舌ピを見せてもらって『すげ〜〜!!』ってなったのを覚えている。

渋谷も横浜も横須賀もまだまだ通るのが怖い場所がめちゃくちゃあった(新宿なんて論外)

タトゥーなんて怖い人しかいなかったし、
スプリットタンなんて見ることは無かった。

悔しくて、苦しくてルイと同じ憤りを抱え初めいた私は同じ頃にピアスを開けた。初めてのピアス。

安ピンをライターで炙って、学校の中廊下で消しゴムを当てて刺した。

大人になった気がしたし、イライラが薄くなる気がした。

まったくルイと同じである。


思い出話はこんな所にして、約20年の月日が経ち
今読み返して、共感をするのは完全にシバさんになっていた。

多分シバさんは30歳前後なんだろうな。

クソみたいな時代にクソみたいな人間を相手に
クソみたいな場所でクソみたいに生きたのだろう。

それでも落ち着いてきてある程度の事は受け入れられるし、自分の把握が出来るそんな歳になっていたのだろう。

俺はタトゥーだらけだし、左耳は16mmの穴が空いてるし、舌ピは2つ。そしてスプリットタンである。

でももうルイでもアマでもない。
こんなに瑞々しい生傷に苦しむ事はもうない。

生き方を変えようとしたり、自分の性癖になんとなくつまんなさを覚えたり、

不安定な若い女をなんとなく囲ってしまうくらいには
優しさも持てる。

苦しいのは俺にはどうしようもない。
ただ俺はお前の不安定さに寄り添うことはできる。
そんな印象だ。

ネットの普及もあり、映画のヒットもあり、
スプリットタンの知名度が爆発的に上がったのは
確実にこの作品の影響と言えるだろう。

私もきっとしてなかったと思う。

やりたいなーと思うほど目にする機会がなかったと思うから。
フィクションの話から抜けてこなかったと思う。


きっと20歳前後は今の子達だって苦しいだろうけど

もう舌ピの拡張くらいじゃ無敵な特別感を味わえないのではないか。


昔はサイコだと思っていたシバさんは

まともな優しいおっさんだった。


本の感想はその時で変わる。それがいいよね。


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