車いすで巡る筑波山地域ジオパークと自然災害　筑波山1-4　筑波山に登ってみた

2023年2月18日 00:08

　皆様、お久しぶりです。今回から、私の担当では「車いすで巡る筑波山地域ジオパークと自然災害」と題して、車いすの乗って、筑波山周辺の地質・地形や自然災害そしてバリアフリー情報をレポートしていきたいと思います。よろしくお願いいたします。少しだけ自己紹介しますと、私は、脊髄損傷のため、下半身に麻痺があり、手動式車いすを使っています。
　第１回目は、筑波山(女体山)について、４回に分けてご報告いたします。

筑波山の概要

　筑波山は、関東地方東部、茨城県つくば市北端にある標高877mの山です。日本百名山のひとつで、男体山(標高871m)と女体山(877m)の２つの峰からなる双耳山としても知られています。昔から「西の富士、東の筑波」と愛称され、古くから信仰の山として栄えてきました。
　まずは、筑波山に登ってみましょう。

筑波山へのアクセス方法

　筑波山へ公共交通機関でアクセスする場合、つくばエクスプレスの「つくば駅」から発車する筑波山シャトルバスを終点の「つつじヶ丘」で下車し、「つつじヶ丘駅」からロープウェイで筑波山頂(女体山頂)へ向かうルートが便利です。ケーブルカーで登るルートもありますが、ケーブルカーはバリアフリー化されておらず、移動が非常に困難であり、ケーブルカーへの車いすでの乗車は、鉄道会社との事前の調整が必要です。一方、ロープウェイの施設はバリアフリー化されており、予約なしで車いすでの乗車が可能です。今回は、ロープウェイで筑波山頂(女体山駅)を目指しました。

筑波山シャトルバス

　筑波山シャトルバスは「つくばセンター・TXつくば駅」のバスターミナルの１番のりばから発車します。
　筑波山シャトルバスは全てノンステップバスまたはワンステップバスで車いすに対応しています。乗り降りの際には、写真のように、運転手さんがスロープ板を用意してくれます。
　「つくばセンター・TXつくば駅」から「つつじヶ丘」までの運賃は、現金900円・ICカード880円(いずれも、おとな)です。障がい者手帳の提示で半額になります。

つつじヶ丘駐車場

　つつじヶ丘駐車場は筑波山の中腹、標高約530mのところにあります。つくばセンター・TXつくば駅から発車する筑波山シャトルバスの終点になります。普通車の駐車料金は、１回につき500円／日です。

地点①つつじヶ丘バス停

　筑波山シャトルバスに「つくばセンター・TXつくば駅」から乗車すると、ここ「つつじヶ丘」が終点となります。

　秋の紅葉シーズンなどの繁忙期には、筑波山シャトルバスはフル稼働です。これだけバスが並ぶ光景は圧巻です。

　もちろん、ここでも運転手さんがスロープ板を用意してくれます。

地点②・地点③身障者用駐車場

　身障者用駐車場です。５台分のスペースがあります。
　障害者手帳をお持ちの方は駐車料金が半額となります。自動精算機では、障がい者割引を受けることはできません。地点③にある料金事務所の係員に手帳を提示することで、割引を受けることができます。係員不在の際には、090(1113)0236にお電話してください。

地点④ロープウェイ入口バリアフリートイレ

　山の上らしく、「一回流しでお願いします」と書かれています。
　ただし、このバリアフリートイレは狭く、老朽化しており、問題が多いです。

まず、ベビーシートがありますが、ベビーシートはネジが外れてガタついています。

　バリアフリートイレの扉にも問題があります。扉にゴミが引っかかて、扉を全開にすることができないのです。約76cmしか開きません。
　また、手洗器の石鹸水入れもグラグラしています。
　このバリアフリートイレは古さが目立ちます。早く、改修されると良いのですが。

地点⑤つつじヶ丘駐車場北バリアフリートイレ

　このバリアフリートイレはつつじヶ丘駐車場の北の端にあります。この公衆トイレは夕方の18時頃(人がいなくなったら)閉まるので、注意してください。また、冬季は凍結防止のため閉鎖されます。
　このバリアフリートイレの水を流すセンサーには点字が表記されています。
　こちらのトイレも、流す水は「１回」です。

地点⑥筑波ニュー三井谷

　つくば市バリアフリーマップによると、地点⑥の筑波ニュー三井谷の店内にはバリアフリートイレと授乳室がありますが、現在、臨時休業中です。

地点⑦ロープウェイ「つつじヶ丘駅」へ向かう急な坂

　ロープウェイに乗るためには、この急な坂を上らなければなりません。この坂の傾斜は約12°です。車いすを自走する場合、上ることのできる傾斜は、本人の身体能力により変わりますが、多くの方は約5°が限界です。急な上り坂では後ろに転倒する危険もあります。そして、この坂を下っても、自走では十分にブレーキがかけられず、また、車輪がスリップすることがあり、危険です。特に、雨の日の下り坂は、手が滑ってブレーキがかけられず非常に危険です。

注意！

　これから先は、ロープウェイについての記事になりますが、ロープウェイは、冬季に、検査・設備更新のため運休することがあります。
　２０２３年は、２０２３年１月１０日（火）～３月１０日（金）までの６０日間、運転を休止します。詳しくはこちら。

地点⑧ロープウェイ「つつじヶ丘駅」へ向かうスロープ

　スロープには点字ブロックが敷かれていますが、よく見ると点字ブロックの突起の方向が変です。通常は、下の写真のように突起の方向が進行方向となりますが、この点字ブロックの突起の方向は横を向いており、進行方向と直交しています。

地点⑨ロープウェイ「つつじヶ丘駅」

　ロープウェイは駐車場の脇のつつじヶ丘駅と女体山頂近くの女体山駅を結んでいます。高低差は298m、所要時間約6分で女体山駅へ運んでくれます。基本運賃は往復で1300円。障がい者手帳の提示で半額になります。

　また、ロープウェイに、ペット同伴で乗車する際には、片道200円(往復の場合は400円)の料金が必要となり、乗車中は、専用のキャリーゲージに入れなければなりません。キャリーゲージを持っていない場合は、無料でレンタルできます。

　目や耳や手足に障がいのある方の生活をお手伝いする補助犬(盲導犬・聴導犬・介助犬)については、身体障害者補助犬法により、公共施設や交通機関、飲食店など不特定多数の人が利用する施設において、体の不自由な方が補助犬を目同伴して入場することが認められています。よって、ロープウェイに乗車する際には、補助犬同伴が可能ですし、追加料金もかかりません。もちろん、キャリーゲージに入れる必要もありません。

　このマークは身体障がい者補助犬同伴の啓発のために、施設や店などの入口に貼るマークです。ロープウェイ「つつじヶ丘駅」にも、掲示されています。ほじょ犬マークが掲げられていない施設でも、身体障害者補助犬法により補助犬同伴は認められています。

　「つつじヶ丘駅」には、レンタル車いすが用意されています。

　「つつじヶ丘駅」でロープウェイに乗り降りする際には、駅員さんがスロープを用意してくれます。　

ロープウェイからの眺め

ロープウェイの南西側の車窓

ロープウェイの北東側の車窓

　ロープウェイの南西側の車窓には関東平野が広がり、天気が良ければ、東京スカイツリーや富士山などを眺めることができます。
　ロープウェイの北東側の車窓には水戸・日立方面の景色と太平洋が広がり、常陸那珂火力発電所やG1TOWERなどを眺めることができます。
　G1TOWERとは、ひたちなか市にある日立製作所の世界で一番高いエレベーター研究塔で、その高さは、なんと地上高213mです。

女体山駅

　さて、ロープウェイに乗って、女体山頂のそばにある「女体山駅」に着きました。「女体山駅」の標高は約840mです。

　「女体山駅」のホームとロープウェイの床との段差はほとんどないため、「女体山駅」では、スロープ板は使いません。

「女体山駅」のバリアについて

　「女体山駅」から出るためには、階段を上ったり下ったりしなければならないので、車いすでは「女体山駅」の外には出られません。よって、女体山頂や「女体山駅」に併設されているトイレ、メインの展望台、パーラー(軽食堂)へは、車いすでは行けません。

　車いすで行くことができるのは、この身障者優先展望台だけです。特に、トイレに行けないのは問題です。バリアフリートイレの新設が望まれます。
　身障者優先展望台からは、関東平野を一望することができます。

「女体山駅」の気温

　「女体山駅」に降り立つと、空気がひんやりしているはずです。地表付近(地上から高さ10～16kmまで：対流圏)では、高度が高いほど気温は下がります。
　太陽の熱は直接空気を暖めるのではなく、まず地面を暖めます。そして、地表からの放射熱で空気があたためられます。地面が熱源となり、上空に行くにしたがって地面からの放射熱が届かなくなるので気温が下がります。空気が上昇するとともに気温が低くなる割合を専門用語では「気温減率」といっています。気温減率は雲粒が発生する場合とそうでない場合では違いますが、平均すると0.65℃/100mとなります。よって、100m上ると、気温は0.65℃低くなります。

　つくばの5月の平均気温はおよそ17℃(17.4℃)です。そこで、筑波山の麓の沼田の気温が17.0℃の場合、標高877mの女体山頂の気温は5.5℃低い11.5℃となります。この気温は北海道・函館の5月の平均気温(12.3℃)より少し寒いくらいです。服装には注意してください。
　ただし、山麓の標高数百mより低いところでは、山地斜面の傾斜・形状などによって程度は異なりますが、この気温低下は成り立ちません。

　最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
　次回は、身障者優先展望台からの眺めた関東平野とその形成過程、そして、地盤と地震災害についてお話します。