【日記】ヘルパーとおばさんとたまごっち
仕事の関係で、あるお宅にホームヘルパーとして訪問した。
「いらっしゃい」
「本日はよろしくお願いします」
ピーッピーッ…
(……?)
マニュアル通り、シンク周りやベッド脇などを順に片付けていく。
ピーッピーッ…
どこからか、等間隔で鳴り続ける電子音。
家電かなにかだろうと、特に気にせず作業を続けていた。
(よし、次は掃除機かな)
ピーッピーッ…
「あーーーーーーッもううるさいッ!!!」
突然、家主のおばさんがキレた。
呆気にとられている私の横を、ドタドタ足音を響かせながら通り過ぎていく。
おばさんは、床に落ちている丸い形状の何かをガッと掴むと、振りかぶってベッドに投げた。
「さっきごはんあげたでしょ!!もおお……」
何やらキレ気味に文句を言い、布団をぐるぐる巻いている。
一体何が。
刺激しないように、そっと訳をきいてみることにした。
たまごっちだった。
たまごっちが世話を求めて鳴り続け(鳴き続け?)ていたとのこと。
一日、ずっとうるさくてイライラしていた、と。
…世話できないなら買わない方がよかったのでは。
いや、これは業務に関係ないから言わなくていいか。
ふたりで説明書を広げ、通知音をOFFに設定。
その間にたまごっちは死んだ。
掃除機をかけている間、おばさんもたまごっちも、この世界で必死に生きているんだなあ、とかなんとか考えていた。
「次は育つといいですね、たまごっち」
そう言い残して、私は静かにドアを閉めた。
本日もご利用ありがとうございました。