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養魚秘録『海を拓く安戸池』(25)~GHQ~

野網 和三郎 著

〈注意事項〉
・文章、写真の説明文(キャプション)などは明らかな誤字脱字を除き、原文の通りとしております。ただし、著者略歴については、西暦を加筆、死去された年に関する記述を追加しました。
・敬称は原文に即して省略させていただきました。
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・本書原本の貸与や販売は在庫がないため行っておりません。ご了承ください。

(25)~GHQ~

 九月二日「悪夢は去った」と東京湾、ミズリー号上で全世界に宣言した、マッカーサー総司令の歴史的終戦の言葉を最後として、日本は連合国の軍政下におかれ、そして廃人のようになった国民と廃墟と化した国土の再建が始まったのである。

  敗戦の混乱は灰燼となった都市はもちろん、日本全土に渦を巻き、その日を生きる買出しは、上下、貧富を問わず、あの町この村に氾濫し、うすよごれ瘠せこけた国民服の肩にはドンゴロスの袋が、縞目も分かたぬモンペの背中、両手にはズシッと重い風呂敷包みが取締りの眼をくぐって闇米が運ばれる。列車の窓ガラスは砕け、座席のシートも剝ぎとられ、闇屋が半数以上の座席を占める。無法の戦後はかなりながくつづいた。その間、戦後の革命は東条英機をはじめとする戦犯容疑者の逮捕に始まり、軍国主義者の公職追放と矢次ぎばやに総司令部の措置がとられ、これら以外の過去に持ち来たった日本の政治の姿はほとんど姿、形をかえてしまった。

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