養魚秘録『海を拓く安戸池』(9)~えさの冷蔵庫~
野網 和三郎 著
(9)~えさの冷蔵庫~
五年二月南水門新設申請書を県庁に提出と同時に水産局に対しても冷蔵庫建設申請書を提出していたのである。この事業の扱いについては、当時は国の奨励事業となっており、補助金が交付され、しかも一平方里に一カ所しか認定されないという冷蔵庫保護の制度がとられていたので、一応他の生鮮食料品、取扱業者ならびに漁協に対しても、話し合いの場をつくって、希望者の有無を打診したのであった。もしこの建設について大方の賛同を得るならば、設備内容も更に大きく、そして充実したものにしたい考えでいたので、八方に働きかけてみたのであるが、一向に反応を示すようでもなく、むしろこんな田舎に冷蔵庫などの必要はないだろうといった考え方で全然意欲を示さなかった。そこで仕方なく安戸池養魚餌料冷蔵庫という名目で申請していたのであった。