養魚秘録『海を拓く安戸池』(18)~漁船整理~
野網 和三郎 著
(18)~漁船整理~
漁船整理の必然性については、何回ともなく触れてきたが、これは安戸池着手以前より、また養魚事業遂行途上においても、適当の時期にそれぞれの機関の力をかりて、理解を深めてもらい、漁船側に対しても納得のゆく方法を見出し、解決したいと常に腐心していたのであるが、室戸台風の惨禍に拍車をかけられ、施設増強に対し、漁船の養魚場出入は、彼我双方にとっても、ますます被害の度合が高くなっており、一方潜水により発見した浮沼(ヘドロ)の問題も浮び上がり、池内区画は永久事業には不適当という結論を生み、しかし事業としては、将来の見通しも漸く立ち、国の奨励事業にまで認識を高め、皇族宮殿下の訪問視察ともなった時点で、時期としてはもう熟し切っている、と父の提案から、猛運動に踏みきったのである。