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【無料】基礎から分かる水産用語<79> 以西すり身とは

みなと新聞で毎週火・金曜日に連載している「基礎から分かる水産用語」を公開します。
みなと新聞の専門記者が、漁業、流通・加工、小売など水産で使われる一般用語から専門用語まで、分かりやすく説明する連載です。

以西すり身とは

 九州西部海域を主漁場とする「以西底引網」漁業の漁獲物で生産したすり身。以西とは東経128度から西方に位置する東シナ海や黄海などの操業許可海域を指し、以西すり身はこれら漁場で漁獲したエソやグチ、コノシロといった小型の白身魚を主原料とする。年間生産量は同漁業の規模縮小に伴い減少し、現在は国内で唯一、長崎蒲鉾水産加工業協同組合(長崎市)のみが製造・供給を手掛けている。

 同組合は公害対策で排水規制が強まる中、効率的なすり身の生産体制を築こうと長崎県内のねり製品製造業者らが1972年に設立。以西底引網船が入港する長崎港近くに位置し、すり身加工専門の工場を有する。生産した以西すり身は長崎県内の組合員を中心に、全国に供給。高級志向の板かまぼこやちくわの原料として利用される。

 以西すり身はかつて民間企業などでも盛んに生産されていたが1960年代以降、以西底引網漁船の許認可隻数の減少に合わせ、徐々に生産規模が縮小。ねりメーカー側も巻網船が漁獲するイワシ、アジなど青魚をはじめ、国内外産のスケソウダラやイトヨリに原料魚をシフトさせるなど対応を進めてきた。同組合担当者によると、設立当初年間800トンほどだった生産量は、近年300トンほどで推移しているという。

みなと新聞本紙2022年12月27日付の記事を掲載