【推したい創作大賞参加作品✨】さちさん「おはよう、私」(短編連作小説 & 音楽)
今回、私が推したい作品は、
さちさんの作品「おはよう、私」(短編連作小説 & 音楽)。
読み終えた後に一歩踏み出そうと思わせてくれる、優しさに溢れた作品です。
この物語では、三人の人物がそれぞれの悩みや葛藤を抱えながら、日々を懸命に生きる姿が描かれています。
子どもの産めない瑠璃は、「子どもがいないと自由でいいね」と子育て中の同僚に言われて心を痛め、
その言葉をぶつけてしまった葵も、子育てと仕事の両立に悩み、
知らない誰かに心ない言葉を吐かれている。
そして、中学三年生の青磁は、自分の純粋な「好き」が他の人とは違うことを突き付けられ、自分自身のあり方にとても苦しんでいます。
それぞれ異なる悩みを抱えているはずなのに、
彼らに深く共感してしまうのは、
きっと私自身も「悩み、心を痛めるという経験」を知っていて、
「悩む私」という存在がいつも隣にいるから。
「弱音を吐いてはいけない」
「もっと頑張っている人がいるんだから」
「みんな、同じなんだから」
いつの間にか、そんな誰かの言葉に囚われて、
「私は、大丈夫ですよ」、「悩むほどのことでもありませんよ」
という顔をしながら、
心では「今は耐えなきゃだめだ」と、私も自分に言い聞かせているところがあるからなのかもしれません。
この作品に触れて、私が最初に抱いたのは、
「優しさ」を信じたくなる──、
という気持ち。
悩んでいても、つらい時でも、
ふとしたきっかけで変わることができる。
人には優しさや温かさ、そして、強さがあるということを
物語と音楽を通して感じることができました。
「おはよう、私」の物語の中では、
誰かの放った言葉が自分の胸に突き刺さったり、
悪意はないけれど、言葉や態度が誰かを傷つけてたりしてしまう、
という場面があります。
(言葉や字面やタイミングって、本当に難しいですね……。)
また、傷ついた経験や体験があるからこそ、
自分を守ろうと「殻」を固くして、
「自分自身」を閉じ込めてしまっているように見える場面も。
どちらも切なくてつらい思いの伝わってくる場面ではあるけれど、
読みながら感じていたのは、不思議な安心感でした。
これは、善悪で判断することではなくて、
誰にでも経験のあることなのではないか。
「殻」に閉じ込めてしまったとしても、
ほんの小さなきっかけで、「殻」に穴をあけ、
希望の光を見つけることができるのではないか。
そんな「受容」と「優しさ」で満たされて、
前向きな気持ちに自然と導かれた気がしたのです。
(※個人の感想です。)
「優しさ」を信じたくなる──、
というのが最初の感想だけれど、もっと言えば、
「誰かのくれた『優しさ』を受け取って、
またそれを誰かにそっと渡すことが、
世の中をほんの少しだけ変えるきっかけになる」
ということを、私はこの作品に教わったように思います。
「優しさ」も縁と同じように、繋がっていくもの。
「優しさ」を偽善と言う人もいるけれど、
自分で選び、自分で決めた「優しさ」は偽善ではないよ、
と背中を押してもらえた気がしました。
ここまで、かなり主観いっぱいの感想になってしまったけれど、
(伝えたいことが多すぎてまとまらず、ごめんなさいー!🙇)
「優しさ」を信じられた時、きっと「殻」は破れて、光を見る。
そして、誰か(私)の小さな一歩が、大切な誰かの大きな一歩に繋がる。
そんな明日への希望を、私はたくさんいただくことができました。
「おはよう、私」。
彼らから生まれる爽やかなその言葉を、じゃがさんの素敵なピアノ曲と共に、ぜひ味わってみてほしい。
もしかしたら、明日の朝、
世界がほんの少しだけ違って見えるかもしれないから──。
※ヘッダーイラストは、雫とコンパスさんの作品をお借りしました。