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【歌舞伎鳩】福叶神恋噺ほか(歌舞伎町大歌舞伎 / THEATER MILANO-Za)【感想】

中村屋さんだ!ということで意気揚々とお切符をとっていたら、なんとその後もう一枚いただくという謎の事態が発生しましたため、2回見ました。どちらも1階G-H列5番あたり。花道(仮)が近く、役者さんがみなさん大変近くを通って行かれました……。



正札附根元草摺しょうふだつきこんげんくさずり

ざっくりとしたあらすじ:
父親を討った仇である工藤祐経の屋敷に向かおうとする曽我五郎(中村虎之助)。それを引き止めようとする小林朝比奈の妹・舞鶴(中村鶴松)。
ただ引き止めるだけでは五郎は止められないと悟った舞鶴は、男女の色模様を舞って見せる。それでも引き止められないため、五郎の持つ草摺を引き合ううちに幕となる。
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いつも三等席の民のため、一等席前方の音の圧にびっくりしました。踊りの足拍子?がとても迫力があるし、衣摺れの音まで聞こえる。音の振動まで分かるんですね、役者さんがそこで踊っているという実感がいつもより感じられて良かった。音楽もよく聞こえる。やっぱりいつもはなんとも思っていなかったけれど、三等席は遠いんだなあ。

お話としては、舞鶴がこんなにあの手この手で引き留めているんだから、五郎も引き留められてあげて~~~など、なりましたが、それを潔く振り切る五郎の格好良さ。二回目に見た時が大変素晴らしく、力漲る様子の踊りで、素晴らしかったです。

そして花道が近かったため、近くまでいらっしゃると役者さんの汗が見える……。白粉をしていると、汗もあまり見えていなかったんだなあと発見がありました。あと舞鶴のお衣装ね……すごい刺繍でもう……壮麗でした。重そう……。


流星

ざっくりとしたあらすじ
年に一度、七夕の日にだけ会える牽牛(中村勘太郎)と織女(中村長三郎)。その待ちに待った七夕の日、逢瀬を楽しむ二人のもとへ流星(中村勘九郎)がやってきて、雷夫婦の夫婦喧嘩の様子を語って聞かせる。
雷一族の四人を、流星を演じる一人の役者が演じ分けて踊る。
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やはりそうだと思うのですが、勘九郎さんってたぶん同じ姿形の人が五人くらいいて、見えない速さで切り替わっていると思う(?) あの方は一体どうなっているんですか……? 見ているだけではもう何をやられているのか分からないのですが、振る舞いのひとつで、男、女、婆、子供に切り替わっており、なんとまあ芸達者な……。いつも見るたびに人が違うのでは……?となってはいたものの、こう同じ舞台上ではけもせず役柄が変わっていくとなかなか混乱する。すごい。

また、褌に羽織という出立ちで踊っていましたが、踊る身体の美しさよ。動きが洗練されていて、連続で身体を動かすための最適解を毎秒出している感じがありました。体幹が良いというかもう一切動きにぶれがなく、なんでそんなポーズで止まれるんですか?みたいなところで動きを止めて見せる。あと表情がとても豊かですね。身体や表情を意のままに表現に使えるということは素晴らしいことです。もうこうなってくると女形をやっているところも見たいのですがやりませんか。また亀姫をやって……。

というところでお話についてなのですが、いや流星、ものすごい邪魔じゃない……!? 年に一回しか会えない牽牛織女の邪魔でしかなくない!?!?!? せっかく会えたところに、謎の雷夫婦の夫婦喧嘩を聞かされる2人よ……笑

そのほか細かいこと

  • 勘九郎さんのお子様お二人は毎日舞台上で父の踊りを間近に見ているわけですが、この父の背を追うことは楽しくもあり、贅沢でもあり、厳しくもあるのだろうなあと思った。勘三郎さんのことを知らないのですが、きっと勘九郎さん七之助さんもそうで、そのようにして歌舞伎は受け継がれてきたのだろうなあ。

  • 見るたびに勘太郎さんが大きくなっている気がする。成長めざましい。

  • 織女のふりふりのお着物が可愛らしかった。

  • 牽牛織女が勘太郎さん長三郎さん(勘九郎さんのお子様お二人)なので、寄り添ったり甘えたりそういった恋の駆け引きのようなことをしても、うふふふふといったような、客席から漏れ出る微笑ましい視線があり、もちろん鳩もそう思うところもあるのですが、演じられているご本人たちは嫌かもなあとちょっと思った。微笑ましいのだけど。子どもの頃考えていたことを思うと、そうして大人が作り上げてきた舞台に己も役名をもらって上がっているという点で、子ども扱いしないでほしいと、思うだろうなあ。


福叶神恋噺ふくかなうかみのこいばな

ざっくりとしたあらすじ:
江戸の長屋に住む辰五郎(中村虎之助)は腕のいい大工だが、怠けてばかりで働きもしない。同居していた(中村鶴松)も愛想を尽かして出て行ったのち、昼寝を始めた辰五郎の元に一人の女が現れる。
女は己を貧乏神・おびん(中村七之助)だと名乗り、辰五郎には取り憑きようがないから働いてくれと頼みに来たのであった。それを受けて初めは真面目に働いた辰五郎。けれどすぐに元の怠け者に戻った辰五郎を見て、おびんは自ら辰五郎のために同居し、手内職を始めるのであった……。
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のっけからとても早口!しかし聞き取りやすい。テンポの良い運び方でとても楽しかった。元にしている落語を知らないので聞いてみたいですね。
辰五郎はどうしようもない男ですが調子だけは良いため、愛されるのはわかる。おびんちゃんはそういう人にハマっちゃうタイプだったのね……やめとき……騙されちゃだめ……。とは思うものの、好きになっちゃったら仕方がないのでしょう。
好きって自覚しちゃったどうしよう、という風に俯く顔があまりに美しい女性すぎて驚きました。七之助さんは、富姫のようなすっと美しい女性の役で見ることが多かったので、こういう世話女房のような役を見たの初めてでした。これはこれで良い。虎之助さんと並ぶと、七之助さんの方が背が高い?のがまた、だめ男な辰五郎と世話焼きの姉さん女房おびんちゃんのような感じでハマっていました。

そのほか細かいこと

  • おびんちゃんが道成寺をやりつつお掃除しているのがかわいい。一月に見ていたため、元ネタを知っている状態で見られて良かったです。

  • おびんちゃんが戻ってきた時?のお着物に「貧乏神」と「福叶」と書いてあり、元々福の神の素質があったのかもね~~~となった。舞台場でも美しいけど、近くで見ても美しかった。

  • おきゃぴ……おきゃぴ……??? 会場がミラノ座(歌舞伎町)にあったため、ホストネタをぶち込んできており、さすがだなあと思うなど。味噌汁タワーでコールしてるのは……何……??? こういう現在の風俗を取り込んでくるところが歌舞伎の持つパワーのひとつでもあるなと思いました。今となっては古い風俗の演目をやっているけど、実際は現代劇だったはずですしね。こういうこともするよね。時代が変わって魔改造感が出てくるのがまたおかしいですが。

  • おきゃぴが辰五郎に絡みに行っていて、辰五郎はまあまあ本気で嫌がっているのに笑ってしまった。おきゃぴに気に入られたのは自分のやり方のせいだぞ(しかし虎之助さんは演じていて始終楽しそうで良かった)。

  • おあしたらずひめ(まあわかる)、すかんぴんのみこと(わかるけど語感が面白すぎる)

  • ほんの少ししか出ないすかんぴんのみこと(勘九郎さん)、出てくると場を持っていくからすごい。最初、上手の客席あたり?から出てきたの、普通に気づいていなくてびっくりした。おびんちゃんを持っている団扇ではたと叩いた時に、何か粉が舞った?と思っていたら、花道で袖を払った時にめちゃくちゃにほこり(粉)が舞って笑った。花道通路側のお客さんがみんなギャアと言って身体を引く。わかる。鳩もそこにいたら、ほこりではないと分かっていつつも引くと思う。こういう細かい演出もできるんだな〜。




公演概要

歌舞伎町大歌舞伎
2024年5月3日(金・祝)~26日(日)

正札附根元草摺・流星・福叶神恋噺
THEATER MILANO-Za

H列5番あたり
傾斜が少ないので、前に背の高い人が来ると……


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