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【星々文芸博 / 4階69】おしながき(2024/7/14/sun)




<波間文庫:4階69>です

湊乃はと・星結莉緒います(鳩は14:30ごろまで)
スペース:4階69(入って左の方!)
開催日時:2024 / 7 / 14 / sun. 11:30〜16:30


【お品書き】
夢日記短編集、100年くらい前が舞台の小説、散財したあとに買う本の3種です。


新刊

短編十編を収録。
初刷 2024/7/14 / 文庫判(A6) / 本文60ページ / ¥700

「……と、いう夢を見たのサ。」で終わる、
オムニバス夢日記短編集。

一、幾度も来た、いつも歩くあの道
二、秘境食レポハンターの味噌汁ルポ「やまやま」
三、虫封じと厄除けの神事
四、当てどない街歩きと、舟の仏事
五、行きっぱなしの路面電車
六、絵描きは絵描きを辞めるのか
七、観覧車にぬいぐるみを乗せる仕事、父との散歩
八、前世に龍であった女と、飢饉の話
九、夢の中で夢を思い切る
十、役割と束縛と安定、恋と自由と不安定
文学フリマ等で無料配布として既出の小説(再録)五編・
新規書き下ろし五編。

【収録作品】
夢現つ* / 味噌汁旅行記 / こども流鏑馬 / おふな祭り* / 途中下車* / 生活の記憶 / 遊園地* / 龍の女 / 逝く春 / 待ち人*
*書き下ろし


収録作品(既出)



既刊

盗蜜

好評につき第二刷!
初刷 2024/5/19 / 文庫判(A6) / 本文128ページ / ¥800

あらすじ
傍から掠め取る蜜は甘い。
銀座のカフェーで生きる女給の物語。

ある男との心中から生還した廣谷松は、神田榮と名を変えて、カフェーの女給となった。
いつしか榮は、その接客を受けるだけで客が繁栄する〝幸運の女〟として人気となる。
榮は、女一人自活するために必死であったけれど、たったそれだけのことがこんなにも難しい。
松を求めまつわりつく男。
己のために榮を欲する客たち。
そんなら榮は、その猥雑を己のために利用する。
大正初期の東京・銀座。
喧騒のカフェーを舞台に、心中から生まれた榮の人生が動き出す。


冒頭
   吾妻橋心中
 人目を忍んで吾妻橋まで駆けて行った。喉も通らぬ夜御飯をなんとか済ませ、日付を越すのも待ち遠しく、それからまた数時間辛抱強く待って、ようやく家を抜け出す。生温い夜道は季節を違えたようで、走るうちに身体が汗ばんでいく。待った甲斐もあり寝静まった町には、あれだけ煩い春の猫一匹見ることもなく、吾妻橋に辿り着いた時に見つけた人影を、その男と決して疑わないほどであった。
「お松ちゃん」
 その頃、私は松であった。男が私を呼ぶ声を今はもう思い出すこともない。呼ばれる声をそのままに駆け寄ると、男はその当時よく見た、眉を下げた情けない顔をしていた。
「本当に来たんだね」
 何を当たり前のことを、と思ったものだ。来いと言ったから来たのである。来ると約束したから来たのである。私はただ殊勝らしく「うん」と頷いて……、いや、心からただ男に尽くすために頷いた。あの時の松はそうだった。「でもいいの」と一言も尋ねなかったのは、それでも女の意地である。
 男には妻子があり、松は二号とも五号ともいえない女であった。男は女々しいもので、何かあるとすぐに松に(他の女にも)泣きつきに行き、甘言を吐くのが常であり、松はそんな男の頭を胸に抱くことが好きであった。男はそんな中でついに言ったのである、「もういっそ死のう」と。男の声はそれに裏をつけているのを松は分かっていた。だから敢えて言ってやったのだ。「それでは松もいっしょに死にます」と。その言葉に男はさめざめと泣いた。今思えばそれは酒のなせる業だったかしれないけれど、ともかく涙々の中で決めた約束がそれだった。今生ではどうにもならないだろう二人の満足を得るには死ぬしかないと、しかし松は本気で思っていたのだ。しゃくりあげる中でも冷静に頭を回して、仔細を決める。それがその、春の中頃の生温い夜であった。




これが見えたら波間文庫

きてね〜。

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