【舞台鳩】マシュー・ボーンの『ロミオ+ジュリエット』(東急シアターオーブ)
昨年図らずも「ロミオとジュリエット」の話の内容を割ときちんと知ったため、今なら見れると思い立ち、駆け込んできました。
こういうダンスの公演を見るのは初めて、内容分かるだろうか……などとちょっと不安に思いながら行きましたが、結果としては全然問題なかったです。
マシュー・ボーンについても名前と振付師?という程度しか知識を持ち合わせておらず、以下引用します。
今回は『ロミオ+ジュリエット』ということで、シェイクスピアの「ロミオとジュリエット」の翻案作品。舞台は現代、若者を矯正する施設で出会う二人の物語、という設定でした。詳しいあらすじは以下。
日常的な身体の動作をそれと分かるように踊りに落とし込むことができるのだなあというのが発見でした。前述の通りこういった公演を見たことがなかったため、そもそも内容が分かるか不安があったのですが、だいたい何を言いたいのか、何をしていて、どういうシーンなのか、というのが、ダンスという身体の動きや表情で分かるようになっている。
そしてたくさんの人が出てくる群舞の中で、ロミオとジュリエットがどこにいてどう動いているのか、というのも分かるように振り付けされていて、これもすごかったです。全員が矯正施設の収容者で、同じ白い制服を着ていますから分からなくなりそうなものなのに、出て来た時からあれがロミオ、こちらがジュリエット、というのがなんとなく分かる。ピンライトが主人公を追っているわけでもないのに、動き方のみで分かるというのは面白いですね。どうやって作り上げていくのか想像がつかない。
(注:この先ネタバレあります)
まあ元は「ロミオとジュリエット」なので、ネタバレというのもなんですが……。少しずつ違いがありますので念のため。
ティボルトを殺したジュリエットが罪の意識に耐えきれず、そのトラウマに負けてしまうのがかなり現実的だなあと思いました。ジュリエットが、ロミオの身体を知ったことで、その身体に、己に性的な(?)虐待をしていたティボルトの影を見つけてしまうのが悲しい運命ですね。
幻のティボルトをしかし結局もう一度殺してしまって、己の手で恋人を殺したことに絶望し、己も同じように命を断つ。これが全て衝動的に起こったことであるために、寄り添うように死ぬことができないのが印象的でした。そこを添わせるのは施設の友人たち。意に沿わない息子を施設に収容したロミオの両親よりも、入所者を虐待する看守よりも、それを見てみぬふりをふる周りの大人よりも、よっぽど収容された若者のほうが心が豊かなように見える。
パンフレットを読んでいて、鳩はやはり元の「ロミオとジュリエット」の印象に結構囚われており、あまり鮮やかに目の前の表現を受け取れているわけではなかったような気もしました。演者の人たちの言葉を読むと、実際に見た印象よりもよっぽど感情的で情熱的な物語のように思える。これは鳩がこういった表現を見慣れておらず、感じ方のコツを掴めていないためかもなあと思いました。
今年一月に歌舞伎座で「京鹿子娘道成寺」を見てとても感動したのですが、あれを歌舞伎を見始めた最初の最初で見ていたら、もしかしたら感じ方がもっとあっさりしていたのかもしれない。一年ほど歌舞伎を見ていてちょっとだけ分かる状態になっているからこその感動だったのかもしれないですね。
だからこういったダンスの公演も、もっと色々な表現を見て、自分なりの見方・感じ方のようなものを得ていきたいなと思いました。
4月21日まで上演中です。まだチケット買えるのかな?
気になる方はぜひ渋谷へ。
公演概要
マシュー・ボーンの『ロミオ+ジュリエット』
2024年4月10日(水)~21日(日)
東急シアターオーブ