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【舞台鳩】マシュー・ボーンの『ロミオ+ジュリエット』(東急シアターオーブ)

昨年図らずも「ロミオとジュリエット」の話の内容を割ときちんと知ったため、今なら見れると思い立ち、駆け込んできました。
こういうダンスの公演を見るのは初めて、内容分かるだろうか……などとちょっと不安に思いながら行きましたが、結果としては全然問題なかったです。
マシュー・ボーンについても名前と振付師?という程度しか知識を持ち合わせておらず、以下引用します。

Sir Matthew Bourne OBE マシュー・ボーン
1960年、ロンドン生まれ。英国で最も人気があり、成功している振付家、演出家として名高い。代表作『白鳥の湖』はバレエの興行史上最長のロングランを記録し、ローレンス・オリヴィエ賞、トニー賞をはじめ30以上もの賞に輝いた。

マシュー・ボーンの『ロミオ+ジュリエット』プレスリリースより


今回は『ロミオジュリエット』ということで、シェイクスピアの「ロミオとジュリエット」の翻案作品。舞台は現代、若者を矯正する施設で出会う二人の物語、という設定でした。詳しいあらすじは以下。

近未来、反抗的な若者を収容する矯正施設〝ヴェローナ・インスティテュート〟。そこでは厳しい監視下で自由を奪われた若者たちが男女の接触を禁じられて暮らしていた。暴力的な看守ティボルト(アダム・ガルブレイス)のハラスメントにおびえるジュリエット(ハンナ・クレマー)、有力政治家の両親から見放されてやって来たロミオ(ロリー・マクラウド)。施設で出会った2人は瞬く間に恋に落ち、看守の目を盗んで逢瀬を重ね、仲間たちに祝福されながら愛を誓いあうのだった。しかし幸せもつかの間、突如酒に酔ったティボルトが銃を振りかざして現れ、乱闘のあげく仲間の一人マキューシオ(キャメロン・フリン)が命を落としてしまう。怒りに燃えるロミオとジュリエットたちはティボルトに立ち向かうも、さらなる悲劇が彼らを待ち受けていた…。

公演チラシより


日常的な身体の動作をそれと分かるように踊りに落とし込むことができるのだなあというのが発見でした。前述の通りこういった公演を見たことがなかったため、そもそも内容が分かるか不安があったのですが、だいたい何を言いたいのか、何をしていて、どういうシーンなのか、というのが、ダンスという身体の動きや表情で分かるようになっている。
そしてたくさんの人が出てくる群舞の中で、ロミオとジュリエットがどこにいてどう動いているのか、というのも分かるように振り付けされていて、これもすごかったです。全員が矯正施設の収容者で、同じ白い制服を着ていますから分からなくなりそうなものなのに、出て来た時からあれがロミオ、こちらがジュリエット、というのがなんとなく分かる。ピンライトが主人公を追っているわけでもないのに、動き方のみで分かるというのは面白いですね。どうやって作り上げていくのか想像がつかない。

(注:この先ネタバレあります)

まあ元は「ロミオとジュリエット」なので、ネタバレというのもなんですが……。少しずつ違いがありますので念のため。
ティボルトを殺したジュリエットが罪の意識に耐えきれず、そのトラウマに負けてしまうのがかなり現実的だなあと思いました。ジュリエットが、ロミオの身体を知ったことで、その身体に、己に性的な(?)虐待をしていたティボルトの影を見つけてしまうのが悲しい運命ですね。
幻のティボルトをしかし結局もう一度殺してしまって、己の手で恋人を殺したことに絶望し、己も同じように命を断つ。これが全て衝動的に起こったことであるために、寄り添うように死ぬことができないのが印象的でした。そこを添わせるのは施設の友人たち。意に沿わない息子を施設に収容したロミオの両親よりも、入所者を虐待する看守よりも、それを見てみぬふりをふる周りの大人よりも、よっぽど収容された若者のほうが心が豊かなように見える。


パンフレットを読んでいて、鳩はやはり元の「ロミオとジュリエット」の印象に結構囚われており、あまり鮮やかに目の前の表現を受け取れているわけではなかったような気もしました。演者の人たちの言葉を読むと、実際に見た印象よりもよっぽど感情的で情熱的な物語のように思える。これは鳩がこういった表現を見慣れておらず、感じ方のコツを掴めていないためかもなあと思いました。
今年一月に歌舞伎座で「京鹿子娘道成寺」を見てとても感動したのですが、あれを歌舞伎を見始めた最初の最初で見ていたら、もしかしたら感じ方がもっとあっさりしていたのかもしれない。一年ほど歌舞伎を見ていてちょっとだけ分かる状態になっているからこその感動だったのかもしれないですね。
だからこういったダンスの公演も、もっと色々な表現を見て、自分なりの見方・感じ方のようなものを得ていきたいなと思いました。


4月21日まで上演中です。まだチケット買えるのかな?
気になる方はぜひ渋谷へ。



公演概要

マシュー・ボーンの『ロミオ+ジュリエット』
2024年4月10日(水)~21日(日)

東急シアターオーブ


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