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机の上の鳩

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小説・随想などなど、書きためてきたものたち。何とも呼び難いものが多いため小品と呼んでいたりもします。
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2024年5月の記事一覧

【書籍案内】盗蜜

書籍詳細 文学フリマ東京38新刊。 初刷 2024/5/19 第二刷 2024/7/14 文庫判(A6) / 本文128ページ / ¥800 あらすじ まずは気取ったあらすじがこちら。 旧字体が読みにくいと思われるため、新字体でも以下書き起こします。 傍から掠め取る蜜は甘い。 銀座のカフェーで生きる女給の物語。 ある男との心中から生還した廣谷松は、神田榮と名を変えて、カフェーの女給となった。 いつしか榮は、その接客を受けるだけで客が繁栄する〝幸運の女〟として人気と

こども流鏑馬

 建物の裏手から、鬱蒼とした割に管理されたような森に抜けた。獣道よりも、より平された細道をたどり、ようやく澄んだ空が見えるところまで出る。眺め回してみるとどうもそこは神社の裏手らしく、本殿の裏に社務所のような建物と、こちらの道から入ってきても構わぬように手水社が見える。とりあえず本殿の方へ足を向ければ、地面が湿ったような土から砂地に変わった。  杜を除けば広大というわけでも狭隘というわけでもない、ちょうど良い敷地は裏手にいるにも関わらず人の気配を感じさせる。大抵神社という場所