哲学の博士課程の学生が、24時間365日頭痛と向き合う話②〜発症編〜

①はこちら

あれは忘れもしない2019年2月の頭である。私はインフルエンザにかかっていた。なので、一日中ひたすら寝ていた。発症してから2日目か3日目の夜だったと思う。だんだんよくなってきたな〜という感じがあった。ただ、それまであまりに寝過ぎていたので、その夜は逆に全然眠れなかった。寝込んだときにはよくあることだと思う。

少し意識が遠のいたとき、

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両肩の激痛で目が覚めた。人生で味わった中で一番の痛みだったと思う。しかも一瞬とかではない。ずっと痛い。ずーーーーーっと両肩に激痛が走っている。3時間くらい両肩の痛みに耐えていた。そして、こっちがその痛みに慣れてきたからか、朝方に気がついたら少しの間だけ眠りに落ちていた。

起きると両肩の痛みは消えていた。ただ、それが全部後頭部に移ったような違和感を覚えた。けれども、この時はもともとインフルエンザにかかったわけだし、寝不足だし、こういうこともあるか程度で、この体調の悪さをそれほど深刻に捉えていなかった。とりあえず、病み上がりだわ、頭は重いわ、睡眠のサイクルは狂ったわで家でまたごろごろしていた。

夜になっても頭の重さはかわらなかった。

まぁ病み上がりだし、寝不足だからやな。寝たら治るやろ。

くらいの気持ちでそのまま寝た。

翌日、頭の重さもぼーっとする感じも消えていなかった。その翌日も何も変わらなかった。熱はとうに下がっている。インフルエンザは2年に1回ペースでかかっていたが、いつもならもうピンピンしている頃である。

それでも、これまで大病などしたこともなく、健康に育ってきた私は、自分の身体の自然治癒力のようなものを信じてしまった。いや、正確に言えば、頭痛の既往症など一切なかったので、この状況にどうやって対処するべきかが分からなかっただけかもしれない。


そのまま、状況は全く変わることなく約2週間経った。


さすがにこれはおかしいと思い、そんなに遠くないところにあった神経内科で診てもらうことにした。インフルエンザの後遺症も真剣に考えており、色々不安だった。とりあえずCTを取られた。その結果待ちの間、CT代が7000円くらいと言われたので、ATMに向かったのを覚えている。もともと現金をあまり持ち歩かないタイプの人間なのだが、大学院生であればこういう出費のダメージの大きさはわかってもらえるだろう。

CTの結果、脳に異常もなかったので、ロキソニンを2週間分処方された。


思い返せば、この最初の2週間はひどかった。まず、常に浮遊感があった(今はない)。歩いてはいるのだが、常にふわふわしていた。さらに、ずっと頭が痛いというだけでなく、現実と自分の意識との間に、3枚くらい壁がある感覚が続いた。うまく言えないが、たとえば言葉が発せられているのを聞き取ることはできるが、その意味処理が全然追いつかなかったりとか、次に何をすればよいのかの判断に時間がかかったりすることがあった。ゆえに、本や論文を読んでも何も入ってこないのである。英語の文字面だけが頭の上を滑っていく感じである(この現象は今でもあるし、一番困っている(いた?)ことなので、いずれ詳述するつもりである)。

そして何が最悪だったかといえば、博士課程にいる人はわかると思うが、修論の口頭試問からの院試のタイミングと、頭痛発症のタイミングがどかぶりしたのである(神経内科に行ったタイミングとの前後関係は失念)。如何せん頭は働いていないわけだが、「すみません、頭がめちゃくちゃ痛いんです、、、」とも言い出せない(というか言ったところで何も変わらない)。口頭試問がどんな感じだったかはあまり記憶にないのだが、院試のときはこんな状態で和訳とかできるのか?という疑心暗鬼の中で、試験に臨んだと思う。幸い、院試の記述試験(英文和訳と仏文和訳)は、なんとか集中力的なものがはたらいて何とかなったのを覚えている(なお、仏語はもともとそんなにできないので、体調が良かったとしても何も変わらなかったと思う。口頭審査のとき指導教官にしこたま怒られた)。

この未知の頭痛のために、審査と試験まで色々と集中できず中途半端な心持ちにならざるをえなかったのはもちろん、先生たちとの会話中も全然頭が働いてなかった。頭痛がなければ何か変わったかというとよく分からないが、いずれにせよ、発症のタイミングが人生の頑張りどころと被ったのは不幸だった。ただ、これが修論の執筆中ではなかったのは不幸中の幸いだったと心底感じる。12月末から1月頭にかけて、あらゆる関連文献を院生室に展開させながら修論の追い込みをしていたわけだが、もしこのタイミングでこの頭痛に襲われていたら修論を完成させるのは無理だったと思う(なんせ英語を読んでも全然頭に入ってこないのだから)。


さて、回想はこれくらいにしよう。幸い神経内科で処方されたロキソニンが結構効いた。ロキソニンを飲み出して3日くらいで少なくとも浮遊感は無くなったし、現実と意識のあいだの壁も無くなった感じがした。しかし、これに早合点して安堵したのがよくなかったのである。

結構長くなってしまったので、発症編はこんなところにして、次回は接骨院&マッサージ編!


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