人生ではじめての散歩【エッセイ】
わたしは、いままでの人生、散歩をしたことがない、と、土曜の夜に気がついた。
んなわけあるか、てかんじだと思うけど、
もちろん、なにか出かけたついでに、ちょっとまちを散策するとか、
帰り道をちょっと寄り道して歩くとかはあるけど、
「よしっ!今日は散歩するぞ!」
と、決めて、散歩を目的に散歩をしたことがないな、ということに気付いたんです
みんなどうなんだろう。
あしたは、散歩Dayだぞ!とか決めていく人っているのかな。
健康のためのウォーキングってのも、目的が散歩じゃないから、だめよ。
もちろん、ひまだから散歩、も、だめよ。(その場合は、散歩がひまつぶしの手段になってるから)
散歩を目的とした散歩。
ほら、あなたも今、「そうゆわれると、人生で散歩を目的とした散歩ってしたことないかも!!」て思ったんじゃありませんか!?
たぶん、そうだと思うんだよね。
で、そゆうわけで、「あしたは、散歩を目的とした散歩をしてみよう」と決めて、寝た。
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次の日。日曜日。つまり今日。
めざましなく、目が覚めると、AM10時だった。
ええと、今日の予定はなんだっけ。あぁ、そうか、散歩か。
散歩か・・・
だるいな。
散歩のために、シャワーをあびて、化粧をして、服を選ぶ。
なんとめんどうくさいことなんだろう。
誰かと会うわけでも、どこか街へくりだすわけでもないのに。
でも、今日は、散歩目的の散歩だから、きちんと身なりを整えていかないといけない。
ふらっと、すっぴんパジャマで、歯もみがかず臭い息のままふらふらするのは、なんか違うと思ったんだ
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この街に住んで10年。
そういえば駅前に桜並木があるような気がする。
が、なにせ散歩をしたことないもんだから、一回ちらみしたくらい。
とりあえずあの辺行ってみるか。
と思って、行った。
ら、めっちゃ、桜。みたことねーくらいの桜並木
毎年こここんなことになってたんか
すごいね、桜って。
桜のパワーってなんなのかな。
これがツツジとか、椿とかじゃだめなんよね
とにかく、この街では、見たことないくらい、人人人。ひとの量
(どうでもいいけど人人人って、中華レストランあるよね)
少子化なんてうそやろ? てくらいの、ベビーカーの数。
こどももめちゃくちゃいる。
じーちゃんもばーちゃんも、カップルたちも。
そこに桜ドーン🌸
そして今日気温は20度。T-shirtでいい気候
こんなすてきな日曜日、この先ないだろってくらいの、絵に描いたような日曜日だった。
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桜並木の横は、公園が並走していて、
おだやかな時間が流れている
わたしは、木のベンチに腰掛ける。
こんな、公園のベンチにすわったの何年ぶりだろとか思いながら
なにもせず、桜の枝がゆれるだけを見ている
ときおり、花びらが一枚、横に流れていく
ああ、なにもない
ここにはなにもない。平和しかない
ああ、これこそが散歩を目的とした散歩だと思った
別になにがあるわけじゃないし、何か起こることを期待してないし、ただ、散歩してるだけ
ひとりの男の子が、ビニール袋を持って、地面に落ちた桜の花びらを見ている
ビニール袋の中には、何枚か、花びらが入っていた
男の子は、しゃがんで、花びらを集めているようだ
なんの気なく、男の子の行動を見ていると、
指先がおぼつかないのか、花びらをつかんでも、袋に入れる前に、手から離れてしまっている
ああーー、もっとちゃんとつかめてれば、いっぱい集められるのになぁ!と、こちらももどかしくなる
男の子が私の前にやってきた。
男の子がしゃがむ。
落ちている花びらの中で、いちばん綺麗な花びらをつかんだ。
よしっ! はやく袋にinして!
だけど、男の子は、花びらの裏側をめくり、
「これじゃない」
といって、手放す。
ん!?
男の子は、次の花びらの前に進み、しゃがむ。
指で花びらをとり、裏返し、少しでも砂が付いていたら、リリースしているようだ
なんという、コレクター魂。
この年から、そのコダワリがあれば、この子は将来大物なるわ!と思った。
ただ花びらを集めるんじゃない。
美しく、砂つぶひとつ付いていない、自分が見極めたものだけが、彼のビニール袋に入る資格を得る。
はーーなんだか、すごいこだわりを見せてもらったなぁ。という話。
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しかしいま、ふとおもう。
結局、今日は、花見が目的になってしまってたんじゃないか?
わたしは、散歩を目的とした散歩が、できたのだろうか。
散歩をするのは、思ったよりも、難しいのかもしれない。
おわり