【見習い日記⑱】 「9割病」と戦う男の話
ボクは「9割病」である。
不治の病だ。もちろん意味が分からないと思うので順を追って説明したい。皆さんも忙しいと思うが少し話を聞いて欲しい。
世の中の大多数の人は 仕事でも家事でも終わりに近づくと「あともうちょいだからとっとと終わらせよう!」という考えに至る。当たり前である。
しかしボクの場合は進捗率が「9割」になった途端にヤル気を失うのだ。これは何事に対しても同じような症状が現れる。非常にやっかいな病だ。難病指定にしてほしいくらいである。
普段の仕事は8時間という勤務時間があるので仕方なく終わらせている。作業ノルマやレイバースケジュール等の縛りもあるからだ。しかし、残すは最終チェックや後片付けだけになると病魔がボクを襲い、「ノリさん!ちょっと一服しませんか?」などと部下や同僚を連れて缶コーヒーを嗜んでしまうのだ。順調に進めていれば7時間で終わった可能性は大いにあるがそれが出来ない。毎月のシフト提出や報告書や計画書も最終確認が進まず期限ギリギリ。これが不治の病「9割病」の恐ろしいところである。
「さっさと終わらせて、それからゆっくりすればいいじゃん!」「作業効率悪すぎぃ!」とか言うヤツとはお友達になれない。そんな簡単に克服できるような病気ではないのである。
思い返せば、これはボクが子供の頃からそうであった。「先天性9割病」と言っても過言はない。
夏休みの宿題などは前半は好調に進むものの、最後の難関の読書感想文に取りかかると急に手が止まり、そのまま8月31日を迎えてしまう。そして読んだこともない本のテキトーなページを開き、そこを印象に残ったシーンとして書き上げるのだ。それを読んだ先生は「え!?そこ!?」と思われていたに違いない。人とは違った目線でこの本を読みました的な、異彩を放つイメージ戦略だったとでも言っておこう。言わずもがなではあるが、漢字ドリルや算数問題も進捗率9割で止まっている。
ゲームであってもそうだ。残りはラスボス倒して世界に平和をもたらせるだけ になると、とりあえずストーリーはガン無視してやり込み要素を完遂する。装備品を集めたり レベルを上げて強くしたり お金を稼ぎまくったり…。様々なダンジョンの奥深くまで潜り、様々なサイドストーリーを経験し、圧倒的な力を手にした主人公は、色々な町の人々と仲良くなり世界に影響力を持つまでになってしまう。そしてその世界の誰よりも強くなってしまっている。これはもうラスボスよりも厄介な存在とも言える。
そうして主人公は満を持して ついにラスボスに………挑まないのである。次のゲームを買うまでor欲しいゲームが見つかるまではそのまま手付かずの状態が続く。「9割病」とは本当に恐ろしい病である。
アニメでも漫画でも最終回が近づくと見る気が失せる。「進撃の巨人」を見終わったのはつい先日のことであった。何年にもわたってミカサの決意を蔑ろにしていた。ごめんよミカサ。
このnoteだってそうだ。1つ書き上げるだけなら大した時間はかからないが、最後に校正したり挿絵を入れたりするとなると中々進まない。何度も無意味に編集ページを開けたり閉じたりしてしまう。
この病気を調べてみた。これはどうやら「ADHD (注意力欠如・多動性障害)」の一種なのだそうだ。
説明には「ADHDとは、年齢あるいは発達に比べて注意力が足りない、衝動的で落ち着きがないといった特性があるために日常生活に支障をきたしている状態のことです。医学的には“注意欠如・多動症”とも呼ばれ…(以下略)。」とある。
キチンと最後まで読んでないのでよく分からないが、要するに頭の中は「おこちゃま」ということなのだろう。言わば逆コナンだよね。うん。……大丈夫だ。そういう認識はある。
話は少しそれるが、「名探偵コナン」の映画を観たことがあるだろうか?ボクはほとんど観ている。観ているのだが全ての作品で結末を思い出せない。
蘭がキッド(?)にキスされそうになったときにケツを触られた とか 爆弾の赤と青の線のどっちを切った とか 赤ワインの中に潜った とか、なんとなくは覚えているが、金曜ロードショーで流れるたびに新鮮な気持ちで毎回ドキドキしちゃうのである。
これも9割病に起因するのであろう。後半はもう画面は見ているが内容は観ていないのだ。単に集中力がないと言われればそうなのかもしれない。しかし、最初から最後まで集中力を保ち続けるということは誰しも難しい。ボクの場合は「進捗率9割」の段階で集中力が完全に切れるということだろう。
おっといけない。喋りすぎである。仕事に戻らなければならない。
オチもないまま話を終わらせるという「9割病」特有の症状が出てしまったが、今日はこの辺でやめておこう。ではまた。