ただいま。
今日はしずかな日だ。
ものの通りが少ない。久々に「道」を休められる。「お客さん」たちも笑っている。
最近はこんな日も少なかったな。やたらに忙しくて、まいっていたところなんだ。しばしの休息だ。ひとねむりでもするかな。
不穏な空気が流れ始めた。
道の向こうから、液体が押し寄せてきたのだ。
それだけならよくあることだ。けれど、今日のその液体は、焼けるように熱かった。
痛い! 痛い!
不快な蒸気を放ちながら、道を歩いている「お客さん」を洗い流していく。流れたあとは赤く焼け、ただれる。
続けて、「栄養」が流れ込んでくる。異常な量だった。普段の倍以上の量が、倍以上のペースでぶちまけられる。これを全部、道の表面から回収しなくちゃいけない。さっきの静けさが、むしろ恨めしい。
続けて、またあの痛い液体。もうやめてくれ。叫んでも、とどかない。
結局、吸いきれなかった。
許せない。
電気を送った。脳にだ。
脳の命令には逆らえない。なぜなら脳はぼくよりはるかに賢い。ぼくの外側にあるすべてのものを統率する力を持っている。ぼくはその中の一部にすぎない。
だから腸であるぼくができるのは、神経を通じて、この身勝手なエゴイストの脳に、痛みを送ってやることしかない。
「道」の中身を、無理やり押し出す。最近知ったが、これは脳が最も嫌うことらしい。いい気味だ。自業自得。
衝撃がした。ぼくの「外側」が倒れたのかもしれない。
いつの間にか、「道」を思うように動かせなくなっていた。さっきの液体のせいだ。あれが浸透すると、いろんな動きがにぶくなる。
また少し、外側が動いた気がした。しばらくすると、また液体が流れてきた。今度はきれいなやつだ。安心したのもつかの間、それに紛れて、粒が入ってきた。いつものことだが、いつもの量じゃない。こんなに吸い込んだら……死ぬ。
それでもいいさ。こんなにぼくを苦しめたんだから、苦しんで死ねばいいさ。
でも、脳が死んだら、ぼくも死ぬんだよね。
でもまあ、それでもいいか。
もう何も考えられない。痛みのせいか? あの液体のせいか? もうすぐ死ぬからか。
結局、ぼくらは運命共同体だったんだね。
ただいま。
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