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【読書記録】「塞王の楯」は戦国時代でありながら今の話でした。
あらすじは一行ですむ。
石垣を作る職人と、火縄銃作りの職人がぶつかる話。わかりやすい!
重厚な装丁だけど、青年漫画の原作のようなまっすぐさ。
かたや、戦の途中でも石垣を組み上げ、城を修理し、狙ったタイミングでくずして戦局を支配する達人たち。
もういっぽうは、当時造りにくくて不発も多く、戦場では使いにくい銃の可能性に魅せられ、
「武器がいきわたれば争いはなくなる」
と、銃社会の考え方で泰平の世を思い描く職人。
どちらの理想が正しいのか。戦国時代の話をしながら、今の議論をしている。
序盤は職人になるまでの経緯があって、盛り上がるまで時間がかかるが、それぞれの進む道を見つけたものが師匠の思いを継いで、ゆっくりゆっくり仲間をふやし、お互いにつくったものが向き合う。
言葉はいらない。作ったものを見れば、それが互いの人生をかけたものだとわかる。
どの門から攻める?
あいつは今何を考えてる?
次は誰がいく?
話しは石垣側と銃側、両側の視点で進んでいく。1手づつ詰め寄り、退け、次を予測し合う様子は、将棋やボードゲームのよう。
シリアスな読み方をすれば、市民を巻き込む戦争の話でもある。城内に民衆を入れて守る戦なので、現実の戦争に重なる。
敵側はどんな兵器を持っているかわからない。民は職人たちの腕を信じて、耳をふさいで伏せるしかない。
本当に城の中にこもって大丈夫なのか?外に逃げ出して降参したらだめなのか?
相手が強いことより、何を考えているのかわからないことが怖い。物理的な破壊はもちろん、恐怖から人を守らないといけないとき、どう動けばいいのか。
「黒牢城」とは同時に直木賞を受賞した関係だけど、ふたつとも時代小説ってだけじゃなくて、場所も近いし両方とも「籠城」の場面が出てくる。
似ていながら全然違う作品をふたつ同時に受賞させたのは、審査員になにか意図があったのかな。
ぼくは2作読むことで、固いジャンルと思われがちな歴史モノの自由さを感じた。
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